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449話 狂気の使徒②

 妙に三日月刀(シミター)が振り下ろされる速度が遅いのである。恩恵(ギフト)思考加速(アクセラーラ)が発動していたのである。


 かなりスローに三日月刀(シミター)が振り下ろされるのが見えるが僕自身の思考が加速されているだけであって早く動けるわけではない。精々がコンマ数秒早く動き出せるくらいだ。

 瑞穂(みずほ)は完全に無防備な状態である。恐らく何らかの抵抗(レジスト)出来なかったのだろう。


 三日月刀(シミター)の位置的にもう得物(ぶき)で防御は間に合わない。回避行動も致命傷こそ避けられるが宜しくない。体内保有万能素子(インターナル・マナ)は心もとない。でもここは無詠唱(テルガン)の【瞬き移動(ブリンク)】か【防護圏(ボーン・スフィア)】だろう。

 いや、【瞬き移動(ブリンク)】で間合いを開ければすぐさま無防備な瑞穂(みずほ)が切り刻まれるだけだ。


 選択肢は【防護圏(ボーン・スフィア)】で斬撃を止めた後に組み付くしかないさそうだ。絵面がねと思わなくもないが仕方ない。


 思考加速(アクセラーラ)が終わった瞬間、ガキンと三日月刀(シミター)が【防護圏(ボーン・スフィア)】の障壁に阻まれる。虚を突かれ僅かに固まる闇司祭(ダークプリースト)に手を伸ばす。

 しかし僅かな差でかなり大げさなバックステップで間合いが開いてしまう。

「危ない危ない。その手は一度見ているんだよ」

「それは残念」

 恐らく日本(ひのもと)との戦闘をどこかで覗き見していたのだろう。仕切り直しとばかりに闇司祭(ダークプリースト)が舞い始める。


(いつき)さん。その踊りを見たら駄目です! それこそが【狂気の踊り(ルナティック・ダンス)】です」

 背後からアルマのアドバイスが届いたが近接戦で目を瞑って戦えって? それは中々にハードなことを要求してくるなぁ。


 そうは言っても瑞穂(みずほ)が棒立ちのまま動く気配がない。このままだと切り刻まれるだけなので気張るしか無さそうか。

 精神論を唱え始めたら末期な気がするな。でも最後には結局そこに行きつくんだよね。


 歩法で接敵し三段突きを行うも軽く躱される。法則性のない奇妙な踊りは動きが読みにくい。これならまだ残機アリの白き王の方がマシだったよ。

 戦いの経験が先方の方が上手なのか気が付くと瑞穂(みずほ)の側まで寄ってしまった。

 少し強引だけど瑞穂(みずほ)にはどいてもらおう。うまい具合に【刀撥(とうはつ)】で三日月刀(シミター)受流し(パリィ)闇司祭(ダークプリースト)の上体が泳いだところに手を伸ばす。僕との接触を極端に嫌うようで転がるように距離を取る。

「ゴメンね」

 僕はその隙に瑞穂(みずほ)を蹴り飛ばしておく。無防備な状態で蹴られゴロゴロと転がっていく。痛そうだけど緊急避難的な処置だ。許せ。

「誰か瑞穂(みずほ)をお願い!」

 闇の奇跡(ダーク・プレイ)の知識はあまりないけどおそらく【束縛(クリップル)】は呪いの類だろう。であれば解呪するまで瑞穂(みずほ)はあのままだ。


「小賢しい真似を!」

 隙あらば瑞穂(みずほ)を切り刻むつもりだったのか悔しさが滲んだ表情(かお)闇司祭(ダークプリースト)がそう叫ぶ。


「名を失いし狂気の神よ。我に狂気を!【狂気付与(ルナティック・シード)】」

 そう叫ぶと狂ったように笑い出しこれまでと違って猛然と突っ込んできた。狂ったように三日月刀(シミター)を振り剣速もこれまでより早い。必死に【刀撥(とうはつ)】で斬撃を逸らし返す刀で斬りつけるが致命的な一撃とは言えない。それでもこちらの攻撃が当たるようになっただけマシだ。


 いつの間にか屍人(ソンビー)はすべて倒されており瑞穂(みずほ)はアルマによって介抱されている。和花(のどか)が周囲を警戒し九重(ここのえ)はといえば、

「援護するぜ!」

 と闇司祭(ダークプリースト)に殴りかかっていった。互いの攻撃を躱し受け流しつつ巧みに無手の間合いを維持して戦いを有利に進めている。


 こうなってしまうと僕が間に入るのは悪手だ。周囲を警戒しつつ呼吸を整え体力の回復を図る。

 しかし九重(ここのえ)の優位も闇司祭(ダークプリースト)が放った【気弾(フォース)】で崩れた。

 衝撃に九重(ここのえ)がたたらを踏んだ隙に必殺の一撃が見舞われる。


「甘ぇぇぇ!!」

 斬られる刹那の瞬間九重(ここのえ)が叫ぶ。


 三日月刀(シミター)九重(ここのえ)の脇腹に浅く食い込む形で止まっていた。[金剛闘流]の中伝の技である【剛体壁(ごうたいへき)】だ。

 筋肉を収縮させることによって、肉体に突き刺さる矢や剣を筋肉で止める事が出来るがもちろん血が出るし痛い。


 二刀目は左前腕を軌道に差し込んで三日月刀(シミター)の柄の近くで受ける。そして、

「おらぁぁぁ」

 雄叫びともに固く握りしめた拳で顎を打ち抜く。これで狂乱状態が止まればと思ったがそう都合は良くいかない。

 それでも崩れそうな膝を必死に堪え常軌を逸した目でこちらを睨みつける。


「あとは任せたわ」

 そう言うと九重(ここのえ)はもう戦いは終わったとばかりに座り込んでしまった。


 こうまでお膳立てされたら決めるしかない。僕は納刀し鯉口をきり腰を落とすと右手首を返して鍔の側を下から包み込むようにして柄を握る。

 そして歩法【八間やげん】の技で飛び込み交差する直前に抜刀。


 僅かな手ごたえが右手に伝わる。


 神速の突進からの抜刀術である[飃雷剣術]奥義【一閃(いっせん)】がきれいに決まった瞬間であった。


 程なくして闇司祭(ダークプリースト)(こうべ)が大理石の床に落ちる。


「なんか人殺しは嫌だと言いながら、人殺しの技ばかり上手くなるなぁ…………」


 そうぼやきながら血振りをし納刀する。


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