446話 黒の魔王②
徐々に日本攻略の道筋が見えて来た。その第一弾として日本の[呪文貪喰の指輪]と[高防御圏の指輪]の効果を打ち止めにしなければならない。
幸いというか日本は精神状態がアレなせいか非常に視野が狭い一つに集中すると他が疎かになるのでここは手数で勝負だ。
しかし少し遅かった。日本が次の目標へと移動したからだ。次の標的は判りやすいくらい聖職者って格好のアルマであった。回復役を先に潰してしまおうという判断だろう。
これにはさすがに僕も焦った。アルマの近接戦の和花と同程度で普通なら気にしなかったのだが失敗した!
「法の神よ! 聖なる――――」
接近する日本に対して【聖光】で目潰しを敢行しようとするもそれぞれの位置関係に気が付くと祈りを止めてしまった。
今の配置は閃光で日本の視力も奪えるかもしれないが僕らもその影響を受ける配置であったので急遽取りやめたのだ。
牽制の意味もあったのであろう小剣を右薙ぎに振るが逆にその手を取られてしまう。そこからは早かったアルマの右腕に絡みつくように自身の左腕を絡めると右手で法衣の襟を掴み自身は懐に潜り込み背負うように投げる。
床は大理石であり叩きつけられれば無事では済まない。間一髪でそれを防いだのが瑞穂が投じた棒手裏剣だ。
技をかけている最中に棒手裏剣が脇腹に刺さりバランスを崩しったのか投げたものの背中から落とす形となってしまった。
それでも衝撃は大きくすぐには動けないようだ。
日本は棒手裏剣を抜くとアルマをうつ伏せにし跨ると左腕を取り肘を極める。
先ほどの投げ技、[鬼神闘拳]の【蔓極落】によって右肘が折られており体格差もあり碌に抵抗できていない。そもそもこちらの世界の住人は組み技などに対する知識が乏しい。
場が止まってしまった。どーせ奇跡で癒せるし腕の一本や二本くれてやることは簡単であるがそれは自身の場合である。この場合は締め技に持ち込まれなかっただけマシと思うべきか。
魔法の投射はダメだ。誤射の危険が大きすぎる。
ここは【雷槍】による神速の刺突にかけるか?
こちらの様子を窺いつつアルマの左肘を極めつつ起き上がる。そのまま人質として逃走つもりなのかジリジリと後ろに下がっていく。
[|超人の腕輪]の効果で怪力の日本にとってアルマ程度の体格の女性を引き摺って移動するのは殆ど負担にはならないようだ。
アルマと一瞬目が合うと僅かに頷いた。
「法の神よ。神罰を!【神気炸裂】」
奇跡の優れているところは固有の詠唱がないところだ。アルマの願いを聞き届けられたのか強烈な衝撃波が全方位に放たれる。アルマの左肘を極めていた日本が大きく吹き飛んでいく。[呪文貪喰の指輪]の効果が発動しなかったところを見ると判断が遅れたのだろうか。
大きく吹き飛び難を逃れたアルマであったが代償はあった。しっかり極められていた肘は折られていた。
苦痛に表情を歪めて次の奇跡を願う。
そのあいだに瑞穂がアルマと日本の間に立つ。これでアルマが回復する猶予が取れる。
日本が起き上がるわずかな時間に僕は詠唱に入る。このタイミングを逃すと面倒だ。ここで仕掛ける事にした。
ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。




