439話 王城ヘ②
あっと思う間もなくフリューゲル高導師が猛ダッシュで乱戦状態であった魔導従士の足元まで接近するとまるでネコ科の動物の様に巨体に似合わぬ動きでスルスルと騎体を登っていくと開放型の操縦槽に到達する。
騎士は固定帯で固定されておりフリューゲル高導師の存在に気づき慌てて固定帯をはずそうとするが後頭部に蹴撃を喰らいガクリと項垂れる。
騎士が意識を失った事で魔導従士は動きを止めガックリと崩れ落ちる。
残りの四騎は何が起きたのか理解できないのか戦闘を止め呆然としていた。
「行くよ!」
騎体の足が止まっているうちに通過してしまおうと声をかけ走り出す。斜路を駆け上がり【光源】の照らす明かりの先、城門棟の手前に衛兵隊と思しき武装集団が見えてくる。その数は小隊規模だ。そしてそれを率いてる不審な人物と冒険者らしき一党だ。
「あれが名もなき狂気の神の高司祭よ」
アルマが指さす人物は一言でいえば痴女だった。
マイクロビキニ並みの布面積の煽情的な衣装というか痴女そのものの格好の妙齢の女性だ。
あの格好は【狂気の踊り】の闇の奇跡を発動させるために自身を注視させるための格好だという。
確かに街中で見かければ二度見するレベルの格好ではある。
こいつらも黒の勇者の協力者なのだろうか? 正直いって無関係なら先を行かせてもらいたいのだが…………。
残念なことにそうはならなかった。痴女ならぬ闇司祭は冒険者らになにやら指示をし衛兵隊らを連れて跳ね橋を渡っていく。衛兵隊らは闇司祭の制御下にあるようだ。
そして冒険者らというと。まとめ役らしき大柄な女傑が前に出てきた。硬革鎧に両腰に広刃の剣を佩いており双剣使いのようだ。
「坊やたち。ここから先は通行止めだよ」
そう言うとニヤリと獰猛な笑みを浮かべた。
殿を買ってでた冒険者らの残りのメンツはフリューゲル高導師並みの体躯に皮鎧を纏った大剣使い。黒く染めた革鎧を身に纏った長槍使い。長衣に身を包んだ長杖持ちは魔術師だろう。筒状長鎖衣を着込んで凧型盾と軽槌矛を持った奴はおそらくどこかの宗派の神官戦士だろう。この世界の冒険者にしては良い構成の一党だ。
何の前触れもなく戦闘は始まった。
真っ先に動いたのは瑞穂であった。[透過の刃]を抜くと大剣使いに矢のように突っ込んでいく。
それに釣られるようにそれぞれが動き出す。双剣使いは僕に狙いを定めたようで距離を詰めてくる。
長槍使いと長杖持ちと軽槌矛持ちは術者だったようで詠唱に入る。こちらは九重だけが詠唱を始める。
「「戦乙女! ――――」」
「綴る、八大、第三階梯――――」
「死の神よ。あの異教の小娘に石の呪縛を!」
和花とアルマはと言えば詠唱は行わずそれぞれの得物を構えて走り出した。
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