433話 目撃証言があったらしい
23-04-03 脱字を修正
「やっぱり日本だったんだ?」
まだ何も言っていないのだけど顔色を見て確信したのか和花がそう問いてくる。
「ちょっと常軌逸した表情だったけど日本だったね」
対象に狂気を植え付ける魔法はいくつかある。どの魔法が絡んでいるかで背後関係も見えてくる気もするのだけど、それを知ったところで日本の罪状の減免は難しいように思える。正直言って彼はやりすぎた。
「でも、こうなってしまうと次の標的を絞るのは大変そうね」
和花がそう言って腕を組むとう~んと唸る。
「そうね。私もこの国の高位の貴族に手を出す愚行を犯すまいと思ってたし」
和花に続いたアルマもそう言って唸る。
「で、次はどこだと思う?」
そう言ってこの国の自称召喚勇者である佐藤君が話に割り込んできた。そろそろ手柄を立てて女性を侍らせたいと考えているようだ。
そうそう上手くいくものだろうか?
狂人の思考は判らない。でも誰かが思考誘導しているのではないかと僕は考えている。そして次の標的は商人組合の金庫か王城ではないか? 魔導機器組合は市場規模が小さくここでは存在感が薄い。他の場所で情報収集している面子と合流するために駐機場に戻る事にした。
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夕飯も終わり情報収集で散っていた面子からの話も聞き次の張り込み場所の候補地を二か所まで絞った。両方に配置するにしても独立商人殿の小型平台型魔導騎士輸送騎も警護しなくてはならないので三つに戦力を分けるか候補地を一箇所に絞るかで悩んでいる。
黒の勇者もとい日本は所有する魔法の工芸品の数からこの国のどんな場所にも攻め込めると思う。衛兵隊も練度もあまり高くないしこの国の貴族や騎士は他の地区と違い魔導騎士に乗れることが条件に含まれない。
世襲の特権階級者にありがちな自堕落な生活をおくっている者が多く王城の近衛騎士も見た限りではお飾りっぽいし数だけは多い。
城門や要所要所に魔導従士や魔導騎士が立っていたけど練度のほどは微妙である。そもそも騎体がまともに動くかすら怪しい。
魔導騎士とかは何かと維持費が高いのである。
増員して一つ良かった点があった。
長い年月でそれなりに混血児進んでいるアサディアス王国民にとって純血の南方民族のダグは一種のカリスマ的存在に映るらしく彼が情報収集で街を廻ると結構な人の口が軽くなる。
そのおかげか分かったことがある。
黒の勇者は日中は活動実績がまるっきりない。そのためか市井の状況がまるっきりわかっていないらしい。聞き込みをした町の人々も義賊的行為をしているという事は知っているが誰がお金貰ったと首を傾げているそうだ。
それどころか行方不明者が増えているという。夜逃げではないかと言われているが件数が非常に多い。
この夜逃げだが、この世界の庶民の事情を鑑みると非常におかしい。職業選択の自由が非常に乏しく特定の職業は生活を守るために人員に枠があるため新入りが入り込むには多額の賄賂が必要になる。すぐになれると言えば小作人か荷運び人くらいしかない。あと冒険者か。
そんな話を聞いているうちにダグが、日本皇国人っぽい人物が南方民族らしい使用人と歩いているのを見たという人がいたという。
その人物が見たのは一昨日の夕方の話でまるで周囲を窺うかのようにキョロキョロと歩いていたという。
場所は富裕層が住みいま僕らが居る区画だったとの事だ。
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