表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
455/678

419話 指名依頼

 冒険者組合エーベンターリアギルドへ行くとすぐさま担当職員(オーサル・パーソナー)のマクファイト嬢が出迎えてくれた。軽い雑談をしつつ会議室に通される。


 ソファーで座って待つ事一限(五分)ほどするとマクファイト嬢が一人の人物を伴ってやってきた。その人物は冒険者組合エーベンターリアギルドの十字路都市テントス中央支部の責任者であるマーテリア氏であった。


 マクファイト嬢は書記としてこの打ち合わせを記録するために残る。


 そして指名依頼についてマーテリア氏が話しを始める。


 ▲△▲△▲△▲△▲△▲



「――なるほど……」

 依頼内容を聞いたもののどうするべきか思案する。依頼は複数あり人員を振り分ける事は十分可能である。


 まず優先度の高い依頼が巡回業務(パーティオトヨッタ)である。


 この大陸は規模の割に人数は少ない。結果として人の住まない空白地が多々あり、そう言った個所に赤肌鬼(ゴブリン)豚鬼(オーク)と言った狩猟種族が住み着く。ただし彼らは餌場が枯渇しそうになると次の地へと移動する。移動の際に開拓村などを見つけると襲う事も多々ある。更に野盗(マリング)や正体不明の黒い獣なども現れる。いくつかの開拓村は潰れたそうだ。


 事態を重く見た各代官は巡回業務(パーティオトヨッタ)で巡回中の冒険者(エーベンターリア)らを好待遇で防衛業務(パオラスタズ)として長期契約をしてしまい人手が足りないのである。黒鉄等級(第三階梯)一党(パーティー)が頑張っているがすでに連絡のつかない一党(パーティー)がいくつか出ているという。

 茶鉄等級(第二階梯)以下で戦闘能力がありそうな冒険者(エーベンターリア)は殆どいないところに、最近某所からのタレコミでうちの共同体(クラン)に凄腕の剣客集団が在籍したとの報告があったという。


[高屋流剣術]本道場派の面々の中でも中伝を修めた者らで一党(パーティー)を組ませて派遣しようかと考えている。それとフリューゲル高導師(アルタ・グル)の門弟を借りようかと考えている。彼らは実戦に勝る修練なしと考えており機会があれば探索行などにも同行させて欲しいと言われていたのである。


 運搬業務(トラスポーティ)は継続するとして、指名依頼の巡回業務(パーティオトヨッタ)も引き受ける。一〇組の一党(パーティー)を用意すると約束する。六人編成で交代要員が出る可能性も(かんが)みると四〇名近くは残しておきたい。それにフリューゲル高導師(アルタ・グル)の門弟の数がそれ以上は出せないのもある。


 次の依頼が東方(オリエント)の北部にある竜王国ロヒキャーアムへの物資援助だ。白竜山脈にある王国で唯一の竜騎士(ドラゴン・ライダー)を要する小国である。天然の要害と最強の幻獣(バイデ・ベスティア)にして魔獣(カーミナ・バーラナ)たる(ドラゴン)を乗騎とするかの国は神聖プロレタリア帝国(白の帝国)の猛攻をしのぎ切った国としても有名である。


 だが難所故に食料などの補給が滞ると途端に苦戦する。現在は一〇〇万もの狂信者(ゼロット)が要所要所の街道を制圧し物資がほとんど入らない状態となっているそうだ。


 竜王国ロヒキャーアムの人口は三万人と少々規模の大きい都市国家、またはウィンダリアなら男爵領程度でしかない。


 籠城用の備蓄はせいぜい今年の夏いっぱいが限度だろうとの事だ。

 僕らに糧食の運搬と彼らから産出物の鉱物資源を受け取って欲しいとの事である。


 流石に陸路ではと言おうかと思ったのだけど、先にこう言われた。

「空路、お持ちですよね?」


 どうやら自衛軍から接収した大型輸送回転翼機(ギラビアン)や|垂直/短距離離着陸回転翼機ティルトローターの存在が筒抜けのようだ。


 これはおそらく契約の穴をついた情報収集の結果なのだろう。この情報を漏らした人物は共同体(クラン)にさらに仕事が舞い込むと思っての事だと思う。当人は利益になると信じているのだから契約で不利益な情報は話さないという内容は違反ではない。


 これは契約内容を見直す必要がありそうだ。


 受けるにしても問題が二点ある。ひとつは操縦士が足りない。幾人かは日本(やまと)皇国に送ってしまった。彼らをスカウトしてこなければならない。

 次に飛行能力を持った怪物の存在だ。

 空中で襲撃された場合で振り切れるとしたら|垂直/短距離離着陸回転翼機ティルトローターくらいだろう。

 積載量が一二グラン(約一〇t)ほどだ。一般的な一頭立て二輪荷馬車(カート)に換算して最大で一〇台分だ。


 操縦士が足りないので確保できれば受ける方向で話はまとまった。


 次は南方(アサド)の南部域で中原(ダール)民族の富裕層が黒の勇者と呼ばれる人物が率いる南方(ダルマニア)民族に襲撃され命を落としていると話で、討伐業務(サブジャギティオ)がある。


 黒の勇者と言えば人類皆平等を謳い金持ちはこれまで贅沢をしたのだからその資産を貧乏人にバラまけとばかりに館や隊商(キャラバン)を襲撃し金目のモノを奪い取ると市井にバラまいているという。


 これで済めばこの依頼は来なかった。黒の勇者が襲撃して立ち去った後に南方(ダルマニア)民族の者たちが襲い掛かり略奪暴行の限りを尽くすのである。


 中原(セントルム)では黒の勇者の首に賞金を懸けた。金貨五〇〇枚(50万ガルド)で生死を問わずとした。


 だが有名どころの人狩り(トゥル・キャザー)たちはすべて返り討ちにあったという。

 黒の勇者の特徴は黒装束であり無手の戦闘術の使い手とされている。棍術と格闘術の達人にて拡大魔術師(エンハンサー)でもあるフリューゲル高導師(アルタ・グル)まとめ役(リーダー)に据えて対応してもらおうかと思案する。


 黒の勇者は義賊を気取っているのかもしれないが正直やりすぎである。平等を謳い他人に暴力によって自身の主張を強要するのであれば自身もより大きな力によって主張を強要される覚悟があるのであろう。


 あるよね?


ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。

なろうのマイページの表示速度が遅いのか誤字報告が上がっている事に気が付きませんでした。

貴重なお時間を割いていただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ