416話
「――。そんな訳なんだけど、ハーンの意見を聞きたい」
閣下とのやり取りをハーンに告げ相談する事にしたのだ。
「正直に言うとあの人はちょっと胡散臭いんですよね。絶対に俺らを都合よく利用して使い潰してやろうくらいに思っているんでは?」
「そうだね。気位の御高い王族であれば不敬罪で捕まえて財産没収とかってやるだろうし。内心はともかく利用できるうちは利用して用済みになったら処分するんじゃないかな?」
殿下、もとい閣下に対する印象はハーンも概ね僕と同じようだ。以前聞いた限りでは他の面子も同じような印象を持っているので今後も気を付けて付き合おうと思う。
ハーンは少し思案した後にこう切り出した。
「それなら装甲歩兵ですが弱体化して渡します?」
「あまり露骨に下げるとマズくないかい?」
「積層装甲を廃止して外装板も材質を落とします。取り合えず巻上式重弩が止められる程度に。他にもいくつか非公開の機能は削除しておくっす」
鑑定スキルとかいうチートもないのでいくらでも誤魔化せる。
「そこは任せるよ」
専門家にまる投げしてしまおう。
「でも子爵の名目でお一人で来たって事は……もしかして自領に自動工場を隠匿してるんすかね? 通常は自動工場を使うような高度な魔導機器の生産依頼がある場合は魔導機器組合の偉い人を連れてくるでしょうし」
ハーンに指摘されてそういえばそうだなと思った。いくら大国の王太子だとしても三大組合の一つである魔導機器組合に強権を働かせることは出来ない。自領に自動工場を秘匿してあるこそ勝手に量産が出来る。通常は魔導機器組合に話を通し生産計画を調整してもらうのにだ。
「確かに胡散臭いね……」
もしかしてさり気なく僕らに重要情報を匂わせて、それを広めたら……って名目で共同体の設備を接収に動くつもりとか?
「……やはり偽装の装備と例の島へ移動させる人員の厳選とかしておいた方が良さそうだ」
そういう話で纏まり並行して誰かを調査に向かわせようという事で子爵の件は終わった。次は日本帝国自衛軍から鹵獲、もとい提供された機材の処理だ。
提供品を僕らが買い取ったという名目で取り残された日本帝国自衛軍の面々の当面の生活費用を工面したのである。重複する装備は取り合えずメイザン司教猊下経由でマネイナ商会を通して魔導機器組合に売却しようと思う。
ただし攻撃兵器と銃器だけは売らないで封印とする。あんなもんこっそり量産された日には平衝が一気に崩れる。
正直言うと回転翼機とか音がうるさすぎて僕らには使いにくい。ただ、ハーンが趣味で欲しがっているので預けておくかくらいの考えだ。
「早速潜水母艦に戻って偽装用の装備を生産してきます」
ハーンはそう言うと部屋を出ていく。
さて、次は諜報を担当しているレルンを呼ぶかと思い手鈴を鳴らす。
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