413話 移住計画
九重と別れて三日経過した。
僕は瑞穂を伴って会談場所の東方北西部域の小都市である城塞都市ケンタリウムにやってきている。この日の為に大急ぎで大型の魔導騎士輸送騎を運んでもらった。
話し合い次第では怪我人や僕らと合流しない者らを日本皇国へと送るためだ。合流組は運命共同体という事で白鯨級潜航艦の存在を伝え魔法の契約書に署名の後に乗艦してもらう。
その白鯨級潜航艦は城塞都市ケンタリウムから3サーグほど離れた廃村に潜行している。
この世界だとどうしても時間にルーズになりがちであるが九重らはほぼ予定時刻に到着した。
事前に予約していた富裕層向けの防音個室がある高級食堂で九重と防衛軍の代表格であるという雲龍三等陸佐だ。
自己紹介が終わった後に唐突に雲龍三等陸佐が「坊ちゃんが無事で……」と男泣きしたのには参った。
彼は高屋家の末席に位置する武家階級であり本家道場で[高屋流剣術]の上伝を修めたスキンヘッドの猛者である。
まず、彼らの現状の再確認と今後の進退について話し合った。
逃げ出した人員が戻ってきて想定以上に大所帯になってしまった事。別の場所で安静にしている負傷者を入れると総員で一個連隊になるという。
正直言って僕にそんな大人数を養うだけの器量なんてないぞ。
日本皇国に亡命を希望する者が多く僕についていくると言ったものは殆どが本家の道場出身者で顔を知っているものが多い。それでもその数は一個中隊になるといいう。九重からの説明でどういった仕事をするかなどは一応説明を受けたうえでの選択だという。
基本的に戦闘員兼土木要員と考えれば仕事はある。あとは魔導機器との相性と公用交易語の習得だろうか。
機材の方は各位が自動小銃と拳銃を所持。ただし弾薬は少なく各位に渡っている自動小銃の予備弾倉は二本との事だ。分隊支援火器や対空ミサイルや対戦車ロケットなどは弾薬が尽きており一纏めにしてるとの事だ。
それは回収して僕らの手で処分だ。
乗り物に関してはティルトローターが1機、大型輸送ヘリが2機、偵察ヘリが1機、弾のない主力戦車が6両、三トン半輸送トラックが5台、高機動車が2台だという。
後は破壊ないし逃亡者が持ち出したため所在不明との事だ。
野営用の装備などは十分な数がある。
食料などは不足気味でかき集めても一週間分ほどしかないという。
取り合えず約800人を順次日本皇国へと輸送させつつ何往復する事になるんだろう? 食料の補充に日本皇国で橋渡しをしてくれる人員の確保が急務かな。
僕らの同級生が現地で所帯を持ったのが居るから彼に仲介を頼んで暫く集落で世話してもらうか。
その場合はいくらお金を積むか……。
そう言った話が一刻ほど続き解散となった。とりあえず800人は負傷者を預けてあるは廃村に集めて只管輸送である。
その際に亡命組の代表者を決めてもらおう。ただ仲介を担当する者が17歳なので足元みて横柄な対応しなければいいんだけどなぁ。
日本帝国の法律が適用されない事でタガが外れるのが怖い。人数的にも村レベルなんぞ簡単に力でねじ伏せてしまうだろう。
理性的な行動に期待するしかない。
後日、亡命組には追加の食料を渡し廃村に移動してもらう。そこで希望者は大型魔導騎士輸送騎にのり移動。個人ないし少数で活動したいものには一人頭金貨20枚を与えた。
1年以上は暮らせるはずだ。一応この世界での基本的なルールは説明した。あとは自己責任という事にしておこうと思う。
日本皇国の同級生の方へは和花に【転移】と【飛行】で行ってもらい結構ない大金を領主と積み念のために魔法の契約書に署名させた。
もう金の力で強引に事を進めている。
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