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407話 苦渋の選択

本日は少なめです。


「あ、樹さん(ボス)。いいタイミングで」

「何かあった?」

「実は――――」

 浮遊式潜望鏡ボリテア・ペリスコープを覗いていたら移動中の軽装騎兵(ライト・キャバリア)中隊(セルスケーペット)が農民と思しき集団を追いかけているのを目撃してしまったとの事である。



 さて、隠密行動中なんだがどうしたもんか?

 こいつの存在は秘匿したいだけに見なかったことにしたいところだが……


「そこまで非情に徹しきれないだよねぇ……」


 思わずそうボヤいてしまう。

 迷った末に浮上を指示しようと思った時だ。


「ダメよ。彼らをここで助けたとしてその後の面倒を見れるの?」


 僕の迷いを見事に突いたのは和花(のどか)であった。


 この世界の平民は住み慣れた土地を離れては生きていけない。やり直すだけの財産がないからだ。


 彼に彼らを救助するなら生活が安定するまで衣食住を援助し仕事を斡旋までしなければならない。少なくても安定するまで数年は面倒見る事になるだろう。これから先も同じような光景は見るだろう。そのたびに手を差し伸べるのか?


 うちの共同体(クラン)でも無教養な単なる小作人などには割り当てる仕事がない。



「農民らしき集団の人数は?」

 答えはすぐに帰ってきた。

「老人と女子供が26人です」

 現在地は推定では東方(オリエント)南西部域のはずだ。戦場から遠いかと思ったけど戦火が広がっているのか。


 自己満足で追い払うだけ追い払うか?


 秘匿中のこの(ナービス)を迂闊にさらすのは危険だ。何故って僕らにとっては単なる移動手段でしかないが、これの性能を考えれば欲しがる者は多いだろう。使い道は強盗から戦争まで多岐にわたる。


 こいつ欲しさに共同体(クラン)構成員を襲う可能性とかも考慮する必要がある。


 この世界のルールを定める集団がどこから見ているか分からない。


 ある程度七賢会議シーベン・ウェーシェーツトレフェンの行動を掴むまでは迂闊な活動はしたくない。この世界で産業革命などが起きないのも彼らが裏から操っているからだというのが師匠の話である。

 多少の事はお目こぼしもあるけどその境界線も分からない。


 心の中で詫びつつ先に進むことにした。


 戦闘発令所インピリウム・マンダタム内で誰かがホッとため息をついた。





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