406話 自動調理器
食堂にやってきた。
「見せてもらおうか自動調理器やらの性能を」
言わずにはいられなかった。
見た目は0.25サート四方の箱である。備え付けの映像盤にメニューが表示されておりタッチパネル方式のようだ。
メニューを見る限りこの世界では大量の食物性油を使用する為に高級食に属する揚げ物なども結構な種類がある。
デザート系も僕らの元の世界で存在したものはほぼ揃っている。逆に未知のメニューが見当たらない。名称の違いこそあれどほぼどこかで見たようなモノばかりだ。
おかげで味の想像が出来て注文しやすい。試しにかつ丼を頼んでみた。
一限程して開閉扉が開き出てきたものは大盛のかつ丼であった。
そう何の違和感もない外観である。一体どういった調理工程を経ているのだろうか?
「これってどうやって作ってるわけ?」
「それ聞いちゃいます? 人によっては食えなくなりますよ」
僕の問いにハーンがすぐさま答えてくれた。
「では製造工程を見てみましょう」
そう言って自動調理器を整備扉を開けてくれた。
「ここから調理過程が見えます。どうぞ」
そう言って場所を変ってくれた。そしてハーンが何かを注文する。
「うげっ」
思わずそう声が漏れてしまった。
トレーが出てきたと思ったらまるで3Dプリンターの出力のように積層で器から料理まで印刷されているのである。
確かにこれは……。そういえば素材はどうなっているのだろうか?
「見ました? 素材は内緒です。原理そのものは創成魔術の奥義の【物質創成】ですよ」
確かに創成魔術は無からモノを作り出す魔術体系だ。
ハーンの頼んだものはチーズバーガーであった。見た目は確かに肉厚のハンバーグとソテーされたタマネギとレタス、酢漬、ケチャップ、マスタード、スライスされた乾酪が挟まれているのである。丸パンのサイズは直径で3.75サルトほどだ。
さて、自分の方に戻ろう。問題のかつ丼だ。
どんぶり自体は陶器製に見える。カツは器からはみ出るほど大きい。恐る恐る食べてみるとカツは揚げたての如くサクサク感が残っており卵の絡み具合も絶妙である。味付け自体も薄くなく濃くもなく絶妙は塩梅であった。こっちの世界の料理は割りと味付けが濃いか極端に薄いかの二択だったのでこれはありがたい。というよりもう外食できないかも……。
あっという間に完食してしまった。
「あ、食器は再利用箱に放り込んでください」
ハーンに言われて放り込む。残り物や食器は中で最小単位に分解され再利用されるとの事だ。
さて、腹も膨れたし一度戦闘発令所に移動するか。
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ルビ振りの方法を少し変更しました。




