404話 まずは東方へ
「これから訓練を兼ねて先発隊の収容作業を行う」
ハーンらが例の島から大型の次元潜航艦を回航してきた。共同体敷地内の偽装用倉庫の中で本体を亜空間に残したまま艦橋の上部のみ浮上させた状態で係留させてある。
今回の航行はハルカラらを東方で回収するついでに操船訓練の話を行うという話である。すでに人員は厳選しており口が堅いものに魔法の契約書に署名までさせる念の入れようである。こいつの存在が見つかると恐らく何らかの理由をもって接収されるのが僕らの共通の意見だからだ。接収だけで済めば安いものではある。
東方に赴きハルカラ率いるペンタズ氏族の部隊を収容しなければならない。いくら疾竜が強靭な脚力と体力を誇るといっても赤の帝国の大部隊と会話が成立しない神聖プロレタリア帝国の狂信者を振り切って長期滞在できるとは考えられない。過酷な生活に慣れているペンタズ氏族の面々だけなら兎も角お客さんである美優を同伴している。
今回の訓練航海には運搬業務を担当していた元船員らから15名の他にハーンを含む魔導機器技師6名の他には僕、和花、瑞穂となる。
フリューゲル高導師には彼には別件で乗艦させるという約束の元で魔法の契約書で協力関係を構築した。今回は残った面子に対しての武術指導と勉学を頼んだ。
十字路都市テントスで顔が利き睨みを効かせられるアルマとお目付け役として派遣されている商業の神のメイザン司教には居残ってもらう。メイザン司教にも魔法の契約書と神の名に誓っての誓約をしてもらったうえで必要なことはすべて話した。
健司は[功鱗闘術]の鍛錬で忙しくシュトルムは新調した板金鎧の慣らしと残った運搬業務担当の人員への教導員とし残ってもらっている。軍隊的な集団行動や魔導歩騎の訓練など彼以外にはできない。
次元潜航艦で亜空間を突き進み目的地付近で浮遊式潜望鏡にて浮上可能地点を探す。大型の白鯨級潜航艦では通常空間に浮上してしまうと結構目立つ。
その為に白鯨級潜航艦に半埋没式で格納されている小型の逆戟級潜航艦で浮上し収容する。もっとも小型と言っても全長10サートもあるのでこの世界基準でいえば中型船相当のサイズなので十分大きいのだが……
亜空間潜航中の巡行速度は10ノードほどで馬などと違い途中で休息を挟まないので五日ほどで目的地周辺に到着する。
操船を行わない僕はハーンの案内で艦内の確認作業を行っていた。
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時間がない。やはり金を払ってでも時間を捻出するしかないのか……。




