403話 東方へ
間に合わなかった……。
明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。
新しく設置しなおした[転移門の絨毯]を使ってハーンの元へと赴く。和花の話だと一度もこちらに顔を出していないとの事なので予定の作業を終わらせてやりたい放題やっているのだと思う。
結論から言えば予定の作業は完了しており予想通り趣味に走って色々やらかしていたが自重していたようで禁忌に触れるようなモノは造っていなかった。
そのあたりは死を超越せし者にして太古の帝国の最後の皇帝たるエスパニア陛下から忠告があったらしい。
そして例の島の闇森霊族の氏族が僕らの潜水母艦に興味を持ち陛下経由で接触を図ってきた。
その際にハーンの独断ではあったが一部を作業員として受け入れつつ代りに族長と交渉する権利を得た。グッジョブと言っておこう。
太古から続く氏族である深き闇の族長は神話戦争を生き残った上位闇森霊族ともいうべき超越者である。
子宝に恵まれない長寿種な彼らは一番若い個体ですら二千歳を超えるという。
アドリアンらの氏族の受け入れに関しては、相手次第でもあるので交渉のテーブルに着くことは了承がもらえた。
島の迷宮攻略の件で陛下から催促された。いまは潜水母艦から万能素子を安定供給できる関係で問題はないそうだが、潜水母艦を動かすと途端に万能素子が枯渇するんでとにかく島の迷宮の数を減らせとの仰せだ。
それに関しては春の後月に入ってから始めると回答しておいた。
そして僕はハーンに偽装が完了した白鯨級潜航艦を大陸の共同体の館へと持ってくるように指示を出し拠点へと戻る。
拠点に戻ってからは只管修練の日々であった。サボると鈍ってしまうからだ。
そうして気が付けば春の中月の後週の終わりであった。
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新規メンバーの訓練などもある程度進んだある日のことである。鍛錬を終え湯あみでもと思っていたところを通信魔術師のアルドレッドから東方情勢の最新情報がもたらされた。
「ハルカラからの報告ですが美優は確保した。合流地点にて待つ回収されたしとの事です。それと白と赤の陣営が戦端を開いたようです」
神聖プロレタリア帝国は僕らに白き王が倒された後は何事もなかったように新しい白き王を用意した。ただし戦術はこれまでと変わり新しい王は最前線に立たずに中央に位置し狂信者の自爆攻撃で邪魔する者を徹底的に排除している。更に北方方面から正体不明の兵器群が狂信者たちの後背から襲い掛かり少なからず痛手を与えているという。兵器群は間違いなく元の世界の連中だろう。
一方で赤の帝国の方は斥候の軽装騎兵で標的を探し魔導騎士の小隊が排除するという基本原則で勢力を拡大を続けている。
報告によると騎士の練度はバラつきが多く一度は死亡者を出すのではという危機的状況に陥ったという。
取り合えず脱落者が出なくて良かった。
「主要メンバーを会議室に招集してください」
通信魔術師のアルドレッドにそう伝えると湯あみはやめて【洗濯】で汗や汚れを落とし会議室に向かう。
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