幕間-26 新しい組織の体制と ①
今回は三部構成です。
「疲れたぁ……」
思わずそう呟いて執務机にぐでーっと突っ伏す。私は共同体の拠点の執務室で書類仕事に忙殺されていた。
いまは白き王の二度目の襲撃から一週間が経過している。
まず翌日にマネイナ商会、もとい商業の神から監視役というか仲介役としてオラクル・メイザン司教がやってきた。
手始めに彼が始めたのは十字路都市テントスの外壁地区の南通りにある空き家となっていた元大富豪の館を買い取りうちの共同体の拠点としたことだ。派遣初日にそれを終わした。
翌日には茨の園と双頭の真龍などからの人員補給で一気に250人超えの大所帯となり大急ぎで倉庫や駐騎場から品物を新拠点へと運び込んだ。
新拠点はとても大きく敷地が東京ドーム5個分、即ち《35000スクーナもある。
三階建て使用人宿舎が四棟で最大400人収容可能である。派遣された人員を余裕で収容できる。
他に本館、運動場、大庭園、小庭園、温室、大型倉庫、事務所、あとは6人いた奥さんのそれぞれの邸宅ある。
共同体構成員の内訳はこうだ。
教導員員として先生らが選別した者ら引退を控えた25歳以上の銅銹等級から青銅等級が90名。彼らは街路を挟んだ反対側に建設中の冒険者教育設備の教導員員として出向する。五年勤めあげれば十字路都市テントスの市民権を得られるという特典に惹かれて応募してきた者たちだ。あと有名になってしまったうち共同体の構成員という名声が手に入りモテるらしい。
以前雇っていた元借金奴隷らの船員ら25名を経験者枠で雇用した。これは解散前に事前に取り決められていたことだ。
彼らには後輩らの教育と選別と一部の者には表向きの業務を担当してもらう。仕事内容は共同体としての運搬業務並びに護衛業務が主となる。また一部には郵便業務を任せる予定だ。
先に合流した五名の魔導機器の専門家は例の島というか潜水母艦で作業を継続してもらっている。
女中ちゃんら10名はアンナを筆頭に新人らの教育を行う。
他には茨の園のから送られてきた未成年の借金奴隷65名だ。一般人以上の教育と一部専門分野の教育を受けた者たちで以前居た船員らの後輩にあたる。訓練後適性を見て業務を振り分ける。
ここ数日である程度の適性が判明した。内訳は戦闘員35名、使用人28名、魔導機器技師2名となる。
他に先生のご厚意でやってきた武術師範とその門弟が10名に以前お世話になった医療魔導師のキーン船医が看護魔導師10名を伴ってやってきた。
事務員が追加で3名の増えたほかには以前事務所に居たギャリソン業務管理者、ピピン経理師、オリビア事務員、アルドレッド通信魔術師が引き続き働いてもらう。雑役女中の二人は残念ながら職場が遠すぎて辞退されてしまった。
構成員の腹を満たすのは以前お世話になったダクザ料理長が率いてきた台所女中20名である。
他にも専門職が必要であったけど残念ながらこの短期間では用意できなかったのでギャリソン業務管理者に丸投げした。
そういえばもう一組いた。熱砂の砂漠を渡る際にお世話になったペンタズ氏族の若き女戦士が率いた15人の若者とお目付け役と思しき老戦士で構成された計17名の戦士団だ。見聞を広めるという意味もあるそうだが、私たちが買い取った疾竜を持て余しているのではと思ったそうだ。
これには非常に助かった。疾竜は戦闘力も走破能力も馬とは比較にならないくらい優秀な反面なのか欠点として懐きにくい。運動不足を解消させるためには定期的に走らせなければならない。結構困っていたのだ。
彼らを歓迎しうちの共同体のメンバーとして動いてもらうことになった。彼らとしても自分たちで稼ぐより私たちの共同体所属となったほうが賃金が多いので歓迎された。
さて、主要メンバーのその後だけど、あれからどうなったかと言えばシュトルムは斬り落とされた左腕の再生待ちでやることがないのか石化したセシリーに付き添っている。その石化したセシリーに至っては大事になった。
商業の神のメイザン司教に【解呪】の奇跡をお願いしたものの成功せず、翌日になりアルマの件が伝わったのか様子を見に来た十字路都市テントスの法の神分神殿の総責任者であるバイラン・オルネージュ最高司教が【解呪】を試みるもこれも成功せず。
業を煮やした彼が頼ったのは始祖神の最高権威たるプルシエル・ロマルティーニ総大主教を頼り信者たちも動員した大規模解呪の儀式を執り行ったのである。
裏でどういったやり取りがあったのか伺い知れない始祖神のロマルティーニ総大主教は快く引き受けてくださった。
事前準備に二日、解呪儀式は二日かけて行われた。ロマルティーニ総大主教を軸に儀式が始まり集まった始祖神、商業の神、法の神の聖職者300名が不眠不休で祈りを捧げ解呪は成功したのである。
これで終わればめでたしめでたしなのだけど、待っていたのは寄進という名の請求書であった。その額金貨500枚であった。
独身男性が細々と暮らせば42年近く暮らせる金額である。
ほくほくと帰っていくロマルティーニ総大主教を見送ると法の神のオルネージュ最高司教が帰り際に「くれぐれも宜しくとお伝えください」とやたらと念を押して帰っていった。
分かっている。
神を降臨し魂が砕け散らなかった高位審議官たる聖女アルマリアは樹くんとの間に子供を作ることを条件に派遣されている。独占欲がないわけではないがアルマの事は好きだし構わないと思っている。しかし肝心の樹くんがね……。
そもそもが樹くんが余計な介入を行ったことが原因でもあるのだから大人しく責任取って孕ませてしまえと思わなくもない。
まぁ……当事者不在の状況であれこれと思い悩んでも仕方ない。
兎に角、儀式は終わったのが先日である。セシリーは大変恐縮しまくっていたけど正直言えばお金で解決できたので助かった。非情ではあるがとある理由により最悪の場合は見捨てる可能性もあった。いまはシュトルムの介助している。シュトルムも今朝から簡単な訓練を再開させた。
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金曜日の夜に新幹線に飛び乗り実家に戻り日曜日の夜に新幹線で現場に戻る生活が続きます。家の都合で戻るので自前の貯蓄を崩す羽目に……。
年寄りの面倒見て潰れていく社員を幾人も見たけどとうとう自分もかなとか思い始めている。




