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幕間-25④

 打ち合わせで方針が決まったので二頭立て四輪荷馬車(ワゴン)は手放した。疾竜(フェルドラ)の脚力に馬車では追い付かないとの事である。一日の移動距離においても大幅に違う。幸い私は野外で寝る事にも慣れたことだし荷物は[魔法の鞄(ホールディングバッグ)]があるので手ぶら同然である。彼らの分の糧食なども私が預かる事となった。軽量化によって疾竜(フェルドラ)への負担を減らし航続距離を伸ばそうという事である。

 船の乗船券(チケット)も転売した。流石にこの時期になると逃げだす者が増えており、お陰様で10倍の価格で売れた。


 価格が高騰し始めており相場の三倍ほどになっていたものの食料や水分などを多めに買い込み[魔法の鞄(ホールディングバッグ)]に放り込む。賢者の学院(スカラー・アカデミア)に戻ってフリューゲル高導師(アルタ・グル)の執務室の書物なども可能な限り[魔法の鞄(ホールディングバッグ)]に放り込む。かなり貴重な書物もあるからだ。


 そうして準備が整ったのが後週(下旬)の半ばであった。ルイスの商人(マークアンテ)情報によるとすでに学術都市サンサーラがある半島近くまで迫っているとの事である。


 知り合いもみんな脱出の準備に忙しく挨拶は出来なかった。事態を甘く見ている者がそれなりに居るようで都市人口の六割、(およ)そ5万人近くが残るようである。それが悩みどころであったのだけどハルカラに促され私は旅立つ決意をした。


 ▲△▲△▲△▲△▲△▲



疾竜(こいつら)の足で二日ほど全力で駆け抜ける。休憩はあまりとれないと思うが死にたくなければ我慢してくれ」

 市壁を抜けたところでハルカラがそう告げた。頷いた途端に猛スピードで街道を疾駆し始めた。全力の駿馬(カダー・タングトゥ)より速い。一党(パーティー)は次々と馬車や馬を追い抜いていく。


 そうして二日が過ぎた。



 ハルカラが操る大柄の疾竜(フェルドラ)の目が何かを捉える。ハルカラがそちらに目を向けると振り返り指示を出す。

戦闘準備(シアプ・パーラング)!」

 一党(パーティー)はハルカラの命令で石弾弩(プロッド)を取り出す。形状こそ(クロスボウ)なのだけど発射するのは太矢(クォーレル)ではなく鉄弾(ブリッド)などである。弾代が高いので使い手をあまり見たことはない。


 準備が終わるとハルカラが私に話しかける。

「そろそろ赤の帝国(チャコール)の先遣隊と遭遇(エンカウント)すると思う。かなり荒っぽい動きになると思う。吐いても構わないが大人しくしてて欲しい。君に配慮すれば恐らく拿捕される」

 自分が足手まといなのは十分理解しているので素直に肯首する。この状態で未熟な私は魔術(ギャルダー)は使えないので足を引っ張らないことに専念したい。



行くぞ(セーテウアキャナ)!」

 ハルカラの号令で七騎が一斉に駆け出す。程なくして左前方から軽装の騎馬が三騎走ってくるのが見える。斥候(スカウト)部隊のようだ。


 彼らはこちらの進路上に立ち塞がるように割り込みをすると「止まれ!」と強く命じるがは先頭を往くハルカラは無言で偃月刀(ファルシオン)を抜くと駆け抜け様に躊躇なく先頭の隊長格の男の首を刎ねる。後続も止まることなく残りの二騎を仕留める。当たり前の仕事をしたとばかりに雄叫びすら上がらない。目の前で血飛沫が上がるのは流石に喉に込み上げてくるものがあるけどこれを堪えられないといつまでも足手まといのままである。


斥候(スカウト)の来た方向からしてこのまま進むと噂の魔導騎士(マギ・キャバリエ)部隊と鉢合わせになる。少し進路を北に変えるよ」

 ハルカラは私にそう告げると返事を待たずに一党(パーティー)の進路を北西方向へと変える。


 半刻(一時間)ほど走るとハルカラが周囲を気にし始める。そして、

警戒(ワスパダァ)!」と叫ぶ。

 一党(パーティー)の緊張感が高まる。程なくしてそいつが姿を現した。それは2サート(約8m)ほどの背丈の真紅の重厚な鎧をまとった巨人であった。彼らもこちらを視認したのか走り始めた。その数三騎。


「ルルド、トリー、手筈通りにナーラトケアン・レンキャナー

 ハルカラの指示によってルルドと言う少女とトリーという少年が隊列から離れていく。

 彼らは手綱から手を放し足だけで疾竜(フェルドラ)を操作しながら石弾弩(プロッド)を準備する。装填する弾は白色(アルブム)の弾である。


 魔導騎士(マギ・キャバリエ)らを斜めに横切るように二頭が駆け抜け様に石弾弩(プロッド)を発射する。狙いは先頭を走る魔導騎士(マギ・キャバリエ)の頭部だ。

 二発とも頭部に命中すると弾が割れ白い液体を撒き散らす。液体は頭部を白く染める。それは粘性の高い隠蔽力の高い塗料であった。


 突然視界が塞がれたことで混乱した先頭騎は急制動をし止まろうとするが状況の分からない後ろの二騎が突っ込む形で三騎がもつれる様に大地に突っ伏す。

 大抵の騎士(キャバリエライダー)であれば衝撃で気絶だろう。しかし追い打ちとばかりに白い弾、塗料弾を撃ち込む。


 しかし流石は太古の魔導騎士(マギ・キャバリエ)と言うべきか、起き上がろうともがき始める。ルルドとトリーも追撃は行わずに脇目もふらずに逃走をはじめ合流を果たす。


 私たちはそのまま北西方向へと走り去る。塗料弾が有効なのは初見だったこともあるだろう。情報が共有されれば次からは命中させにくくなる。


 一刻(二時間)ほど走り陽が傾き始めたころ広大な(ライヴオーク)の林が

 本日の休憩場所である。

 魔導騎士(マギ・キャバリエ)は森や林では著しく動きを制限されるので一応安全だろうとの判断である。


 ここは植林された場所であり魔法帝国時代の魔改造により通常より成長が早く、また切り株から成長し再び立派な(ライヴオーク)になるという。

 私たちは簡単に夕飯を済ませると交代で仮眠を取り一の刻(二時)頃起きだすと移動を始める。このまま西進し合流予定地まで何事もなければ良いのだけど……。







ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。


本編と時間軸を合わせるためにここで一旦止めます。

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