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392話 対決。白き王-中編

 次は僕から動いた。まずは何の変哲もない投擲短剣(スローイングナイフ)を一本投じる。

 狙いは悪くなくったがキャッチされると無造作に投げ返される。回転しながら僕の横を素通りし後方のギャラリーに命中し絶叫が上がる。正直言って観戦は結構だけど自己責任でねとか思わなくもない。 


 有効射程2サート(約8m)ほどの投擲短剣(スローイングナイフ)5サート(約20m)ほど離れているギャラリーに怪我を負わせるとはすごい馬鹿力だな。誰も想定していなかったのだろうね。


 次も投擲短剣(スローイングナイフ)を投じる。ただ投じたそれは左腕で弾き飛ばされた。


「お前。馬鹿にしているのか?」

 白き王(竜也)は威嚇するかの如く鉾槍(ハルバード)を振り回しはじめその軌道は台風の暴風圏のようだ。


 もう一本投じる。こいつは特別製だ。

 投じた投擲短剣(スローイングナイフ)が振り回していた鉾槍(ハルバード)に叩き落された瞬間、砕け散り破片は破壊の魔力(マーナ)に変じる。

 条件付け発動の【自爆ファイナル・ストライク】が施してあったのだ。破壊のエネルギーが白き王(竜也)を飲み込む。


 おまけとばかりに残り2本の投擲短剣(スローイングナイフ)も投じる。連続した破壊のエネルギーの連鎖に晒された。

 程なくして街路に倒れ伏す無残な姿の白き王(竜也)が居た。普通に見て死んでるだろう。しかし予想に反して板金鎧(プレートアーマー)は無傷である。


 歓声が沸く中で白き王(竜也)が光り輝き再生する。残機を消費したようである。倒すこと自体はさほど難しくないようだ。


 起き上がった白き王(竜也)は怒りに震えていた。


「お前には失望した」

 そう吐き捨てると右腕を天に掲げた。

「来い」

 白き王(竜也)がそう呟くと中空に一振りの巨大な漆黒の大剣(グレートソード)が出現する。

 彼の意を受け勝手に鞘が外れ禍々しい波長(オーラ)を発した漆黒の刀身(ブレイド)が現れる。


 初披露だろうか? これまでの事前情報にはない武器である。


 握り(グリップ)を手にし無造作に振り下ろすと街路が大きく割ける。それを見た周囲が沈黙するのだった。


 これは気を引き締めないと危ないなと感じ片手半剣(バスタードソード)を握りなおす。


 健司(けんじ)が負けた理由は(パワー)対決(パワー)という同じ土俵だからだ。かといってこの世界の標準的な戦闘技術である受流し(パリィ)受止め(シース)逸らし(グライド)が防御主体の戦闘技術も(パワー)でねじ伏せられる。


 白き王(竜也)が強い理由は残機アリの不死性とすべてを砕く圧倒的な(パワー)で間違いない。ただ瑞穂(みずほ)との戦闘や先ほどの動きから推察するに技術はからっきしのようだ。


 先ほどまでで分かった事は魔法に対しては過度な防御力はない。次に見たいのは板金鎧(プレートアーマー)の物理防御だ。ただ本体は痛覚こそあまりないようだが耐久性は普通の肉体のように感じる。


 そうこう考えを纏めていると人間離れした速度で漆黒の大剣(グレートソード)を振り回しながら近づいてくる。一振りごとに余波なのか街路が裂けている。

 質量武器は初動が遅く制御が難しいが一度動きだし加速し始めると手に負えなくなる。なら誘導して止めてしまえばいい。止めるとなると左右の袈裟斬りを誘い街路に刀身を叩きつけさせればいい。


 白き王(竜也)は巨大な大剣(グレートソード)を八の字を描くように一定のリズムで振り回しはじめる。

 まともに打ち合ったところで生身でダンプカーに突っ込んでいくようなものなのでここはネチネチと打撃を繰り出し白き王(竜也)のイラつきを加速させる。冷静な判断力を奪うことで戦闘をこちらの意のままにコントロールしたい。


 僕は右袈裟斬りをタイミングよくやり過ごし左袈裟斬りがくるまでの僅かなまで横に回り込むと片手半剣(バスタードソード)を三連撃放って【疾脚しっきゃく】で離脱する。


 そこからは大振り(フルスイング)を躱し僕が潜り込み連撃を浴びせ離脱するというパターンとなる。久しぶりの片手半剣(バスタードソード)は重く感じ初動の遅れと剣速の遅さを実感する。



「ダメだ。使えん」

 仕切り直しに十分に距離を取ると僕は片手半剣(バスタードソード)を投げ捨てる。攻撃の感覚が微妙にズレており白き王(竜也)板金鎧(プレートアーマー)に幾状かの裂け目を残したものの痛覚のなさそうな白き王(竜也)には効いてなさそうであるからだ。板金鎧(プレートアーマー)の方も時間の経過とともに再生が始まっている。


「おいおい。せっかくの得物(ぶき)を捨てるのかよ、そんな棒切れじゃ俺を倒すなんて出来ねーぜ!」


 白き王(竜也)はそう叫ぶと巨大な大剣(グレートソード)を大上段に振りかぶり距離を詰めてきた。健司(けんじ)の【屠月斬とげつざん】に比べるべくもなく稚拙な動きである。距離が1.5サート(約6m)を切ったところで白き王(竜也)は大きく飛び上がった。高所から飛び込み振り下ろしで威力が上がると考えたのだろう。しかし飛び上がるのは下策である。


 僕はと言えば鯉口をきり【八間やげん】で飛び込む準備できており巨大な大剣(グレートソード)が振り下ろされる刹那のタイミングで懐に飛び込み抜刀。その際に魔戦技(ストラグル・アーツ)の【練気斬(リスタ)】を練り刀身(ブレイド)体内保有万能素子(インターナル・マナ)を集約させておく。


 僅かな抵抗もなく打刀(かたな)は振り切っていた。


 白き王(竜也)は何が起こっているのか分からないといった表情(かお)でズルズルと身体がズレていきやがて斜めに両断された上半分が街路に転がった。


 周囲に静まり返っていた。


 僕は打刀(かたな)を一振りし納刀する。白き王(竜也)板金鎧(プレートアーマー)はそれなり格の魔法の鎧(アーマニー)であったが命中さえ出来れば他の者でも十分に物理的に打倒可能のようだ。


 現在のところ白き王(竜也)は残機アリの不死身ぶりとするい(チート)な身体能力と【爆裂(エクスプロージョン)】級の破壊力がある自爆兵(狂信者)で他を圧倒してきたようだけど、個としての能力はそこまで高くない、かな?


 寧ろこの間の龍人族(ドラケン)闇森霊族(ダークエルフ)のアドリアンや迷宮都市ザルツで対した竜人族(リルドラケン)の戦士の方が遥かに怖い。


 振り返ると白き王(竜也)は再生を始めていた。どうやらちゃんと残機を消費したようだ。


 再生が完了すると白き王(竜也)は天を仰ぎ、

「おい、もっと俺に力を寄こせ!」

 と叫ぶのであった。


 その願いは叶ったのか白き王(竜也)から黒い波長(オーラ)が放たれる。それが収まると唐突に正拳突きを放った。

 何も知らぬギャラリーの一人が爆散した。


 衝撃波かと思ったけど今のは間違いなく【魔力撃(ブラスター)】だ。正拳突きで放ってくるとかちょっと予備動作(モーション)が盗み難い。


 なんか奇声を発しながら左右交互に正拳突きを放つ。それらはすべて【魔力撃(ブラスター)】であり本来であればありえない運用方法であった。


 通常は無詠唱魔術(テルガン・ギャルダー)は脳への過大な負荷を抑えるために待機時間(クールタイム)が存在する。

 白き王(竜也)の動きにはそれがない。何か代用手段があるのだろう。



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