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幕間-20 とある道化師の目線-中編-

中編です。

「久しぶりだな。お山の大将さんよ」


 そいつは日本(やまと)帝国語でそういったのだ。


「確かに久しぶりだな。あれから二年もたっているが、よくも生き残っていたもんだ。しかし俺をお山の大将と言った無礼は死を以って贖ってもらうぞ!」

 そう告げると大剣(グレートソード)を大きく振りかぶる。(すめらぎ)の奴も俺と同じ戦闘スタイルらしい。大剣(グレートソード)を振り上げる。


 最初の一撃は互角だった。そのまま鍔迫り合いに持ち込むもやや優勢なれど相対的には拮抗している。どういうことだ? 


 仕切り直しとばかりに(すめらぎ)が下段蹴りを放ってきたので回避しつつ大きく後ろへ下がった。


『おい、どういうことだ』

『あやつは自己強化で一時的に能力を底上げしてるにすぎん』


 俺の問いに自称神はすぐさまそう返してきた。

 なるほど、持久戦か。

 ダメだ。俺の性分じゃない。そもそも神に選ばれた俺と雑魚が互角などとあってはならないことだ。力でもってねじ伏せる!




 互角に見えた打ち合いも三〇合を過ぎたあたりで(すめらぎ)が息切れし始め徐々に形勢が明らかになってきた。


 そして三四合目で(すめらぎ)大剣(グレートソード)が折れた事で勝敗は決したが俺は返す刃で(すめらぎ)の両腕を斬り落とす。それで力尽きたのか両膝を落としそのまま前のめりに地に伏した。


 さて、目的のモノを探すかと思った瞬間、なぜか地面を見つめていた。


 ああ……首が落ちたのか。いまので残機が減ってしまった。頭部のない身体が動き出し俺の頭部を掴んで定位置に戻す。一瞬意識が飛び傷はすぐに塞がった。


 俺の首を飛ばした不届き者は誰だ?

 周囲を見回そうと振り返った瞬間、またも地面を見つめていた。今度は全身がバラバラにされた。しかし程なくして元に戻る。


 離れて状況を窺っていた連中から声援が上がる。どこにいる? 周囲を見回すがそれらしき人物がいない。


 しかし全身バラバラに刻まれたことで問題が発生した。防具どころか服すらない。

 まぁ~いい。見られて困るような貧相な身体ではない。寧ろもっと見て俺を讃えろ!

 残機がさらに減ってしまった。たしか残り9機だったか? そろそろ正体を掴んで倒さねば。


 その時、選ばれた俺の超感覚が風切り音をとらえた。とっさに左腕を差し込むと刃は左腕を切断し首の半ばまで切り裂いた。だが俺は生きている。そこで目の前にいる相手の正体が判明した。小柄な男? いや女か!

 とっさに右手で相手の右手を摑まえる。力強く握りしめると苦悶の表情を浮かべるが声は発さない。実に生意気な小娘だ。

 そこで全力で握りしめるとボキリという音が聞こえた。しかし腕が折れたにもかかわらず小娘は悲鳴一つ上げない。どうやって鳴かせてやろうかと思っていると空いていた左手に持った儀式用短剣(リチュアル・ダーク)で首を落とされた。


 また残機残り8機に減った。


 街路に転がっていた大剣(グレートソード)を拾おうと屈んだ瞬間に首があった位置を刃が通過した。さすが俺だ。


 大剣(グレートソード)を持ったからにはもう俺は無敵だ。小娘よ! 俺の攻撃を防げるか!


 縦横無尽に大剣(グレートソード)を振り回す。戦場ではこれで数えきれないほどの兵隊や実力者をなぎ倒してきた。それに対して右手を力なくぶら下げたままの小娘は往なすわけでもなく寸での距離で躱しているのだ。だが躱しているだけなら体力勝負でいずれ俺が勝つ。


 そういえばよく見れば小娘は整った容姿をしている。数年飼えば美味しく頂けるかもとか思い始めた途端に下半身がむくむくと……。


 節操がないな思えないななどとにやけていると――――。


 気が逸れた瞬間、小娘を見失っていた。そして自分の愚息が宙を舞うのが見えた。思わず大剣(グレートソード)を投げ捨て股間を抑える。本来あるべき筈のモノがない。そして周囲から笑いと悲鳴が起こる。

 股間を斬り飛ばされたという不名誉を嘲笑されたが投げ捨てた大剣(グレートソード)が偶然だが小娘の回避コースと重なり左腕で飛んでくる大剣(グレートソード)から身を庇った事でポキリと折れたのだ。


 やはり選ばれた男は持ってるなと感心していると意識が遂げれた。


 そこうしているうちにどうやら出血多量で残機を消費してしまったようだ。これで残り7機か。

 俺は神の力で並行世界(コンカレントプレーン)の別の俺と紐づいておりここでの俺が死亡すると身代わりで並行世界(コンカレントプレーン)の俺が突然死ぬ事で俺は再生するのだ。神に選ばれなかった見知らぬ俺には悪いが本物の俺のために死んでくれ。


 両腕を力なくだらりと下げているが瞳はまだ力があり何かやりそうな予感はする。目を離すわけにはいかないがそれでは勝負がつかない。


 それは天啓だったのか視界の端に映るある人物に焦点がいった。その異教徒の少女はとても美しく非常に目を引いた。俺の女遍歴の中でもあれほど美しい女は俺を小馬鹿にした和花(のどか)くらいだろうか? ま、あいつは胸が薄かったけどな。

 邪神の聖職者(クレリック)となれば殺すか改宗させなければならん。だが殺すには惜しい。攫って分らせるとしよう。小娘のことなど頭から消え美しい邪神の聖職者(クレリック)をあれこれと想像の中で弄ぶ。


 邪神の美しい聖職者(クレリック)は祈りを始めた。すると両手をだらりと下げていた小娘の右手が淡く光り始めた。治癒の奇跡か!

 これは急いで聖職者(クレリック)を黙らせなければ!


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