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幕間-20 とある道化師の目線-前編-

前置きが長くなったので三話に分離。

本編の補完が目的ですが一部アレな表現をあるかもなので読まなくても話は通じます。たぶん。

「暇だ」

 優れた能力を持つ俺様は燻っていた。そんなある時だ。神を騙る存在に請われ異世界へと旅立った。そこで白き勇者として活躍し、先代の白き王が亡くなると民衆に請われ王となった。いまは光の神の信者三〇〇〇万を率いて人類解放戦争を行っている最中だ。


 この世界は邪悪な神々によって滅びに瀕しており既に多くの人間が邪神に魂を売り人の皮を被った化け物と化しているという。


 俺らはそれを片っ端から狩るのが使命なのだが、大所帯過ぎて指揮伝達に時間がかかり遅々として進まない。しかも狩るべき邪悪は少なく見積もっても数億もいる。


 それでも北方(ノード)地方の数々の邪悪な国家を滅ぼし末端の村人も邪神に信奉したことを後悔させながらこれでもかというほど残酷に殺して回った。


 現在は東方(オリエント)の北部域で信者らが大暴れしているのだが山岳地帯ゆえに戦線が伸びまくりやや苦戦しているとの話だ。


 この信者だが数百世代にわたって閉鎖された環境下でのマインドコントロールが功を奏したのか白き王の命令は絶対となっている。何をしても疑問にすら思わないすべてが好意的に解釈されるからスゲーと思う。


 特に強敵の出現もなく数の暴力で磨り潰せる戦展開が暇すぎて信者の中で美人を見繕って爛れた生活を送っている。俺が命じればニコニコしながら妻や娘を差し出す。実に最高だ。


 そして日課になりつつある爛れた日々だったが自称神が俺に十字路都市テントスと呼ばれる穢れた都市で危険な力を感じ取ったとの事で討伐してくれと頼んできた。

 俺みたいに優秀な奴はこうして神からすら懇願されてしまうのだ。参ったね。


 取り合えず信者の中でも戦争ではあまり役に立たない老人を二〇〇人ほど率いて【転移門(ゲート)】で跳ぶ。



 到着した十字路都市テントスとやらは異世界ファンタジーらしくない近代的な町であった。街路には糞もゴミもほぼなく街灯まで設置されており住むならこういう都市がいいなと思った。最終的にここに遷都するのも悪くないなどと夢想していると革鎧に身を包んだ二人組の男がやや離れた位置から高圧的に怒鳴りつけてきた。


 しかし何を言っているのか俺にはさっぱりである。実に不快なノイズだ。これがこの地方の邪悪な使徒の言葉なのだろう。

 どうしてやろうかと思っていると偶々目が合った信徒の老人に「れ」と命じる。

 俺に声をかけられた老人は恍惚とした笑みを浮かべると「光の神に栄光をあれ!」と叫んで走っていき周囲の人も巻き込み轟音を立てて爆発した。


 実に爽快である。


 探し物するには周囲の建造物が邪魔である。こいつらに退けてもらうか。

「光の神に奉仕する時が来たぞ。周囲に散って務めを果たせ」

 そう命じると皆「光の神に栄光をあれ!」と叫んで走っていき華々しく爆散していった。

 そのおかげもあって周囲の見通しが良くなった。だが目的にモノが見当たらない。形状は不明だが大きな力を宿したモノとだけしか聞いていないからだ。


 見ればわかると言われたが見当たらない。もう少し信者を連れてくるべきだったかと思っていると斧を振り上げた大男がこちらに走ってきた。


 俺は白き大剣(グレートソード)を取り出すとすれ違いざまに切り捨てた。大男を斬られて怒ったのか他の連中も各々の手段で攻撃してきたので無双してやった。俺が大剣(グレートソード)を振るたびに雑魚が死んでいく。


 俺を苦戦させてくれるような好敵手は居ないものだろうか?


 10分もすると遠巻きに俺を囲み反抗的な目で見るだけで何もしてこなくなった。そんな時だ。一人の男が立ちはだかった。

 広刃の剣(ブロードソード)を突き付け何かを喋っている。ただ理解はできた俺に喧嘩を売っているという事だけは。そいつらは二人組だ。

 男は金属鎧に広刃の剣(ブロードソード)凧型盾(カイトシールド)で武装しており同伴者は黒い法衣(ガーメント)祭司帽(ミトラ)姿だ。邪神の信徒というわけだ。


 男は凧型盾(カイトシールド)を前に掲げて突っ込んできた。それに対して俺は叩きつけるように大剣(グレートソード)を右袈裟気味に振り下ろす。大抵はこれで真っ二つである。

 だが予想に反して凧型盾(カイトシールド)で受けるのではなく往なされる。大剣(グレートソード)はそのまま勢い余って街路を叩き割る。そこへ男の広刃の剣(ブロードソード)が突きこまれるのを俺は超反射でその刺突を躱し大剣(グレートソード)を構えなおす。こいつは意外とできるなと気分が高揚してきた。



 何合だろうか巧みに往なしているように見えた凧型盾(カイトシールド)も気が付けばボロボロであり金属鎧の男も肩で息をしている。

 金属鎧の男に付き従っていた邪神の使徒が時折祈りを捧げて回復しているのが実に鬱陶しい。まずは邪神の使徒を黙らせるか。


「あの邪神の使徒に石の呪縛を! 【石化の呪い(ストーンカース)】」


 そう叫ぶと邪神の使徒は跪いたまま足元から徐々に石化を始めた。驚愕の表情(かお)が実にそそる。それを見ていた金属鎧の男が意味不明の絶叫をあげてこれまでの戦闘スタイルを捨てて斬りかかってきたのでそれを余裕をもって躱し大剣(グレートソード)を叩き込む。その一撃は脆くなった凧型盾(カイトシールド)を割りその勢いのまま左腕を斬り落とし金属鎧を大きく切り裂き血飛沫が舞う。戦闘能力、いや致命傷だろう。


 倒れ伏した男は残された力で石化していく邪神の使徒に這って行く。死にゆく男には興味を失ったが邪神の使徒に興味が惹かれる。やや耳のとがった巨乳の美人だったからだ。あとで連れて帰って弄ぶとしよう。いや、男も生かして男の前で嬲るのも良いかもしれない。


 そんないい気分になっているところに一人の無粋な男が割り込んできた。


「久しぶりだな。お山の大将さんよ」


 そいつは日本(やまと)帝国語でそういったのだ。


ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。

中編に続きます。

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