表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
408/678

386話 廃墟の中⑤

この下賤な(フューレズ・)盗人どもめ(ハマイウルズ)!」


 そう下位古代語(ロー・エンシェント)を操る存在はずぶ濡れの長衣(ローブ)を纏った骸骨であった。

 死体に怨念が残り動いている存在である怨霊(ホーント)に分類される亡霊(ゴースト)だ。見た目だけだと屍人(ソンビー)骸骨(スケルトン)に見えるから困る。

 ここの主であることを考えると僕らよりはるかに強い魔術師(メイジ)だ。困ったことが本体は霊体であるので肉体を破壊しても消滅させられないことだ。

 肉体を失えば代わりの肉体に憑依するか死霊(スペクター)地縛霊(ファントム)となりさらに厄介となる。


 今の僕らが唯一倒せる方法は、それは幽体(精神エネルギー体)である彼らは魔法を使う際に自らの存在を消耗して魔法を使う。こちらには幽体(精神エネルギー体)痛痒(ダメージ)を与える方法がないのでお手上げである。


 そうとなれば!


 亡霊(ゴースト)が指の嵌った右手を掲げる。魔術を使う気だ。

 動いたのはほぼ同時であった。


 集束していく万能素子(マナ)魔力(マーナ)へと転じていく。僕は和花(のどか)を荷物を抱えるかのように左脇に抱て室外へと脱兎の如く逃げ出した。その際に悲鳴が上がったが無視である。


 それと同時に僕らのいたところに水柱が上がる。恐らく【魔力撃(ブラスター)】だ。


あいつを(エアム・)取り押さえて(テナーレント)!」

 僅かに遅れて和花(のどか)命令語(コマンドワード)で待機していた【骨の従者(ボーン・サーバント)】が動き出し亡霊(ゴースト)へと向かう。

邪魔だ(イン・バイアァ)!」

 再び【魔力撃(ブラスター)】を放って【骨の従者(ボーン・サーバント)】を粉砕する。だがそのわずかな時間で僕は姿勢を立て直し通路奥の大きな姿見鏡ミロイ・プレアイン・ローンガァへと突っ込む。


 大きな姿見鏡ミロイ・プレアイン・ローンガァは割れることなく僕らを飲み込んだ。




「ここは?」

 脇に抱えたままの和花(のどか)が周囲に目を向ける。僕はといえば周囲の状況を確認する前にほぼ反射的に光剣(フォースソード)握り(グリップ)大きな姿見鏡ミロイ・プレアイン・ローンガァに叩きつける。それによって鏡面に大きく(ひび)が入る。


「ふぅ……」

 これで亡霊(ゴースト)が追ってくることはない。この大きな姿見鏡ミロイ・プレアイン・ローンガァは[転移門の鏡スペキュルム・オブ・ゲート]という太古の秘宝(アンティークォールム)であり、対なる大きな姿見鏡ミロイ・プレアイン・ローンガァとの間を自由に行き来できるものだ。


 僕らが使う[転移門の絨毯カーペット・オブ・ゲート]と同じものである。

 さて、周囲を確認しよう。


 何処かは判別できないが壁も天井もない斬新なデザインの部屋のようだ。


 そうじゃない。

 破壊された混凝土(コンクリート)製の家屋のようである。周囲は鬱蒼と生い茂った木々のみで他に人工物は見つからない。


 破壊された時期はそれほど前ではないと推測される。理由は構造物の欠片だ。長い事放置されていたものではない。


「一体どこなんだろうね?」

「うん。これが夜なら星の配置である程度場所の特定もできるのにね」

 星の運行に関しては魔術師(メイジ)の学問としては基本なので僕らも一応習っている。ただ僕より和花(のどか)の方が優秀だ。


幻影地図ファンタズマル・マップ】を使いたいところなのだけど、和花(のどか)呪的資源(リソース)では使用できない。いま出来そうなことといえば……。


「そろそろ下ろして欲しいんだけど……」

 僕の思考は和花(のどか)のやや不満気味の声で打ち破られた。

「ごめん。ごめん」

軽く詫びつつ地に下ろす。相変わらず体重が軽いなぁ。健司(けんじ)などと同じで修業も兼ねて日常的に魔戦技(ストラグル・アーツ)で軽めに肉体を強化してるので猶更そう感じる。





綴る(コンポーズ)基本(ソーサー)第一階梯(ファルク)彩の位(ルリグ)輝き(リューシート)魔力(マーナ)筆跡(メーニス)刻印(スカルプターラエ)発動(ヴァルツ)。【魔術師の署名(マージ・サイン)】」

 僕らの取った答えはこれである。

 和花(のどか)の本日最後の呪的資源(リソース)を用いてこの敷地に魔術的な印を残しておくことである。後日になってこの印を目印に【転移(テレポート)】すれば良いんじゃないかとなったのだ。



「よし。後日思い出したら調査しよう」

「そうね」


 そうと決まったら移動しよう。


待機解除エクススペクタ・エミシオ

 僕は発動遅延(ディレイ)中の【転移(テレポート)】を発動させる。


 瞬時に場所は変わる。

 十字路都市テントスの共同体(クラン)事務所(ビューロー)の三階である。

 さて、僕は一旦アレをハーンのところに持っていかなければ。


「僕はハーンのところに行くけど、和花(のどか)はどうする?」


ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ