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幕間-19

予約投稿わすれてもーた

 舞台は中原(セントルム)から北へと移動し北方(ノード)のとある荒野


「正直春の前月(4月頃)だっていうのにこっちは寒いな」

 黒髪黒目の巨漢がぶるりと寒さで身体を震わせる。

「強制的に追い返されたと思ったらまさか……また戻ってくるとはね」

 隣に立ち巨漢に応えるのは平均的な身長ではあるが鍛え抜かれた格闘家を思わせる肉体の持ち主である。


 この二人は集団誘拐(強制召喚)後に傭兵(マーセナリー)業で生活しており共通語たる公用交易語(トレディア)が話せるという事と他のメンツより多くの知識があるという理由で連れてこられたのだ。


 彼らのいる陣地は集団誘拐(強制召喚)の報復措置として武家の中で古参の小鳥遊(たかなし)が音頭を取り防衛軍を派遣した場所だ。小鳥遊(たかなし)家の一派が交代で儀式にて参加し【次元門ディメンジョン・ゲート】を維持している。

 今回の派遣は異世界からの攻撃に対する報復というスタンスである。

 一世代前の装備を中心に一個師団が最初に送られたが後に補給物資とともに次々と小隊(ザグ)単位で増員されている。増員されたメンツを見るに現役の防衛軍ではなく予備役、それも三等市民(低所得市民)などを強制的に招集したのではと疑うようなメンツばかりであった。


 そして増員で呼ばれた小隊(ザグ)は順応期間として数日過ごすと方々へと偵察行へと送り出される。




「そういえば気が付いたか」

 小柄の方の男が巨漢に問う。

「何がだい」

「連日垂直離着陸(ティルトローター)機が飛び立っているのに航空燃料タンク車が見当たらない」

「言われてみると確かに食料と弾薬は運び込まれているが……」


 この疑問は後日判明する。


 ▲△▲△▲△▲△▲△▲


「俺らの国って実はこっちの世界とあまり大差ない?」

 先日の事だ。調査隊が北方(ノード)北部域で集落を発見し通訳として傭兵(マーセナリー)業をやっていた巨漢を同伴させたのだ。


 巨漢は此処だけの話だがと小声で先日の件を話し始めた。

 カタログデータでは垂直離着陸(ティルトローター)はせいぜい半径1700km程度と言われている。ところが彼らが赴いた場所は片道だけで3000kmは離れていたのだ。空中給油機は【次元門ディメンジョン・ゲート】の陣のサイズ的に持ち込めなかった。

 気になっていたところ一人の下士官が内緒だぞと言って話してくれたのだ。

 構造は良く知られている噴射式回転軸推進器ターボシャフトエンジンと同じ構造だが万能素子(マナ)を吸収し回転しているだけとの事で実質航続距離は無限なのだという。


 そういう意味で防衛軍の垂直離着陸(ティルトローター)飛行魔導輸送騎(マギ・エアキャリア)なのである。

 自分たち常識とやらが一体どれだけ真実なのだろうか? 二人は黙り込む。


「それで、北方(スルト)民族と交渉で何が得られたんだ?」

 格闘家風の男が先を促す。

「運よく村長が公用交易語(トレディア)を話せたんだが、想定していたより逃げ延びた者は多いらしい。彼らの集落(ヴィレッジ)のさらに奥に金鉱山があるらしく多くのものはそっちに退避してるんだと」

「それでか……」

 そう言って格闘家風の男が視線を【次元門ディメンジョン・ゲート】陣へと移す。そこには明らかに兵器とは異なる機械が運び込まれていた。


「報復という体で天然資源を根こそぎかっぱらう気かね?」

「かもな」


 二人してやれやれとため息をつく。


 その時、陣地がざわめく。報復という名目で東にいる白衣の大群に多連装集束噴進弾投射装置、いわゆるMLRSを投入したのだ。着弾観測を行う回転翼機(ギラビアン)が見当たらないと思ったら遅れて戻ってきた。


 彼らはどれだけ殺してやったとはしゃいでいる。


「人殺しがそんなに楽しいもんかね?」

 格闘家風の男が吐き捨てるように言う。

「恐らく彼らは人を殺したという自覚がないんだよ。ゲーム感覚というべきか……」

 巨漢がそう答える。


 そんな浮かれ気分が尾を引き夜になっても宴会が続く。日本(やまと)帝国の法律では飲酒は出来ないので二人は遠巻きにそれを眺めている。


 だが、そんな浮かれ気分は歩哨の叫びと銃撃で終わりを告げる。サーチライトが一点を照らすと騒然となる。

「あれって……」

屍人(ソンビー)だろうねぇ」

 照らされたそれらは少なくて見積もっても一〇〇体を超える屍人(ソンビー)であった。防衛軍を騒めかせた要因は屍人(ソンビー)の中に偵察で派遣した小隊(ザグ)が混ざっていたためだ。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲



「一体あと何日続くんだろうな」

 あれから毎夜毎夜屍人(ソンビー)の襲撃がありそのたびに撃退している。少なくとも一週間(一〇日)以上はこんな状態である。

 周囲は数千体を超える躯が転がっている。穴を掘って放り投げ焼却しているのだが処理が追い付かないのだ。


次元門ディメンジョン・ゲート】陣を経由して補給が出来るとはいえ弾薬も無限ではない。軍人たちも疲労がにじみ出てきて些細なことでいざこざが起こっている。


 もう一つ問題がある。

 昼間になると真っ黒の超大型犬のようなモノが襲い掛かってくるのだ。


「これは隙を見て逃げるしかないんじゃ?」

 巨漢が格闘家風の男に囁く。

「足がなければ流石に無理だろう。それも装甲付きの」

「あれがよさそうか?」

 巨漢が目配せしたものは軽装甲機動車であった。ずいぶん昔に法改正があり15歳から車の免許が取れるようになった。そしてふたりとも免許は持っている。

「そうなると俺の魔法の出番か……」

 格闘家風の男は精霊使い(シャーマン)であった。


日本(やまと)帝国には逃げ帰れないだろう。捕まるだけだ。そうなると高屋(たかや)のいる中原(セントルム)か」

「だが、ここから南下しても奈落への大亀裂ラチャダーラー・インフィアリアに阻まれて中原(セントルム)には行けないよな」

「そうなんだよなぁ。個人的には手土産を持って再会したいのだが」

「決行はいつにする?」

「慌てるなよ。もう何日か待とう。そろそろ彼らも限界だと思う。それに糧食などもパクってこなければならない。隙を見て……だな」


 二人はあれこれと段取りを決めていく。一人の男に見られているとも知らず。




ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。


ちょっと職場で動きがあり予定が未定となりました。

幕間-20は時系列を合わせるため本編をもうちょっと進めたら差し込みます。

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