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380話 そこにあったモノは③

 引き扉(スライドドア)が開いていくと同時に濃密な万能素子(マナ)が部屋に流れ込んでくる。正直言って気持ち悪い。


 内部はと言えば研究室同様に明かりが灯っている。扉から受ける印象からもっと大きな部屋かと思いきや5スクーナ(約10坪)ほどであった。壁に這わせるように魔法装置(アトラストニング)が配置され、中央には漆黒の甲冑(スーツア-マー)がありその手には眩いばかりの魔法の波長(オーラ)を放つ大剣(グレートソード)をまるで剣礼(グラティアム)するかの如く、両手で持ち垂直に掲げ持った姿勢で固定されていた。


 この暴力的な万能素子(マナ)刀身(ブレイド)から溢れているようである。以前見かけた[豊穣の剣(ファーティリデード)]と同じだろうか?


 それならどこかに万能素子(マナ)の放出を抑えるモノがあるはずだ。万能素子(マナ)酔いしそうな状態で目を凝らすと腰に吊るす鞘に違和感がある。


 通常の大剣(グレートソード)は実戦用であれば鞘というより刃を保護するカバーのような形状であり、通常は鞘から抜く動作ではなく留め金を外し地面に落として使う。

 だが、甲冑(スーツア-マー)から吊るされた鞘は豪奢な金の彫金(エングレービング)や宝石で装飾された金属製の鞘であった。

 実戦向けの装備ではないということは、あれが万能素子(マナ)の放出を抑える装備? 


 万能素子(マナ)酔いで心身ともにフラフラとしながら甲冑(スーツア-マー)へと近づいていく。

 甲冑(スーツア-マー)の間合いに入り込んだが動き出す気配がない。取り越し苦労だったのだろうか? 鞘へと手を伸ばしかけた時――――、


「危ない!」

 和花(のどか)の悲鳴に近い警告の声でボンヤリしていた意識が瞬時に戦闘モードに切り替わる。

 いつの間にか甲冑(スーツア-マー)大剣(グレートソード)を最上段へと振りかぶっており今にも振り下ろそうとしていた。


 意識はクリアとなったが身体の反応が鈍い。ここは無詠唱魔術(テルガン・ギャルダー)の【瞬き移動(ブリンク)】で距離を取り仕切りなおすか?


瞬き移動(ブリンク)】を選択する。真っ二つにされる前に甲冑(スーツア-マー)との距離が2サート(約8m)ほど離れる。 

 甲冑(スーツア-マー)は人間ではありえない反応で斬撃をとちゅうで止めるとそのまま突進してきた。


瞬き移動(ブリンク)】の連続使用はできない。次は【防護圏(ボーン・スフィア)】で凌ぐかと思ったときである。


戦乙女(バルキリー)! お前の投槍(ジャベリン)を放て! 【戦乙女の投槍ヴァルキリー・ジャベリン】」


 アドリアンの精霊魔法(バイムマジカ)が飛ぶ。【戦乙女の投槍ヴァルキリー・ジャベリン】は甲冑(スーツア-マー)に突き刺さるが止まることはない。

 続いて和花(のどか)の詠唱が続く。

綴る(コンポーズ)八大(エルム)第五階梯(ヨギルル)攻の位(アェクス)大気(アトム)凝縮(コンデンサティオ)風塊(ベンタズ)発動(ヴァルツ)。【風撃(ブリーズ・ショット)】」


 僕の横を風が駆け抜け甲冑(スーツア-マー)に激突しよろめく。それなりに魔法が効く相手のようだ。


 まだ距離があるので大きい魔術で仕留めよう。僕は詠唱に入る

綴る(コンポーズ)創成(クリエ)第七階梯(ルナルル)攻の位(アェクス)魔力(マァナ)凝縮(コンデンサティオ)光槍(ハスタム)誘導(リェズ)、――――」

 突然収束しつつあった万能素子(マナ)が風船から空気が抜けるように霧散していった。同時に身体から力が抜ける。こんなところで致命的失敗(ファンブル)


 黒い甲冑(スーツア-マー)はもう目の前である。【防護圏(ボーン・スフィア)】が発動し甲冑(スーツア-マー)が繰り出す刺突とぶつかり【防護圏(ボーン・スフィア)】が砕け散るが刺突もコースがズレて右の硬革(かわ)肩当て(ポールドロン)を削るように突き抜ける。


「何やってる!」

 無謀と知りつつもアドリアンが三日月刀(シミター)を閃かせ甲冑(スーツア-マー)に斬りかかる。


 甲冑(スーツア-マー)の鋭い斬撃を躱しつつ次の精霊魔法(バイムマジカ)を行使する。

闇の精霊(シェイド)よ! 我が身に纏い敵を欺け! 【影纏い(シャドゥ・ボディ)】」

 魔法の完成とともにアドリアンの身体を黒い靄のようなものが包み込む。敵からの視認を鈍らせる効果があり攻撃が当たりにくなる。

「今のうちに体勢を整えろ!」

 身軽だが斬撃が軽すぎるアドリアンでは甲冑(スーツア-マー)に有効打は出ない。


 よろよろと距離を取り詠唱に入る。


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