377話 後始末②
「さて、君らの氏族の現在の人数と、後はどこで回収するかだね」
因みに新天地はこのアルカンスフィア大陸ではなく、海の浮かぶ島だと説明し移動方法については[転移門の絨毯]を用いると説明する。
「これまでの依頼で戦闘員も結構失った。残っているのは62名だ。非戦闘員は結社のアジトである迷宮に囲われている」
困ったことに非戦闘員の大半は若い闇森霊族らしく指導役の年老いた者が不在ということでいい歳しても碌に戦う手段がないのだという。
「結社は人質として囲っていて出す気はないって事かな?」
いわゆる光の神々の教えが浸透したこの大陸では闇森霊族は住みにくい。極端な奴は闇森霊族ってだけで殺しに来る。
迷宮とは言え生活環境が整っている中で囲われていることは悪い事でもないような気がするが……。
「囲われてるなら安住の地とか必要なさそうだと思っているな?」
どうやら僕の思考を読まれてしまったようだ。
「何が困るんだ?」
「このままいけば遠からず優秀な戦闘員は居なくなる。そうなれば残った非戦闘員は追い出されるだろう。結社は利用価値のないものに温情はかけないからな」
「それが分かっててこき使われていたのか?」
「長寿の我らは万年盛っている貴様ら人族とは違って種としては増えにくい。一度数を減らすと元に戻ることはほぼ不可能だ。族長として俺は無為に減らす選択は選べなかった」
「例え遠からず滅びると判っていても?」
「そうだ。だが、そろそろ選ばなければならないと……」
そうなると迷宮に閉じ込められている非戦闘員をどうやって例の島へ移住させるか?
『やっぱり僕らで潜入かなぁ……』
『そこまでするメリットってあるの?』
【戦術念話】にて呟けば同じように和花から返ってきた。メリットと言われると……。
『確かにこれと言ってメリットがない様にも……』
『どうみてもないよ』
ん~……。
暫し和花とのやり取りを沈黙に耐えられなかったのかアドリアンが、
「俺としては無報酬で、というか借りを作りたくない。何か俺に出来ることはないか?」
そう提案とも言えないことを提示してきた。
取り合えず和花に相談する事にした。
『表立って活動できない彼らに何ができると思う?』
『裏仕事専門は?』
食い気味に返答が返ってきた。確かに向いているんだけどねぇ。裏仕事専門と言っても諜報活動も含むしレルンとは別の使い方が出来るかも? それに強い術者は欲しい。
いや、それじゃ僕らも結社と大差がない。
「まずは安住の地が確保できるか否かを確認してからにしよう」
その為には代表者であるアドリアンが例の島の闇森霊族に挨拶に行ってもらわねばならない。
その事を説明し後日どこかで待ち合わせることにしようとなった。それが一旦片付いたので次は、
「ところで結社はここに何を求めて人を派遣したんだ?」
これは聞かないとだめでしょ。
ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。




