373話 龍人族
「代わりに貴様らを赤鱗族の俺の配下としてやろう。ありがたかろう。這いつくばって忠誠を誓え!」
またトンデモないことを言い始めたなぁ……。
こいつらの特徴は真語魔術を使うほかに優秀な戦士でもあり、竜語魔法を使いこなす強敵だ。角の数で強さが決まり三対ということは種族の中では上位個体に属する。赤鱗族と言ったことでおおよその性格は判断できる。短慮にして苛烈と言ったところか?
ここで戦闘する場合は奴が真価を発揮するにはここは狭い。だけど同時にここで戦闘するとアドリアンたちは確実に巻添いで死亡確定かなぁ? それだと降伏させた意味がない。
戦闘するならこちらから接敵するしかないか。
『どうするの?』
そう頭の中に語り掛けるのは和花の【戦術念話】である。便利なんだけど呪的資源がね……。
『正直迷ってはいる。ところで残りの呪的資源は?』
『【転移】分を除くと大きい魔術があと一回くらいかな?』
MPみたいに数値で呪的資源が管理できないのでこの辺りは間違うと拙いんだよねぇ。
一つ気になることがある。もう一人小柄な人型生物が居るはずなんだけど……。どこかで【姿隠し】してるのだろうか?
よし、決めた!
『ひと当てしてイケそうなら勝負する。ダメなら撤退。和花は大きいの入れたらあとは防御に専念して』
『わかったわ』
「跪いて首を垂れろ」
尊大な態度で命令を下す赤髪の龍人族に被せるように和花が小声で詠唱を始める。
「綴る、付与、第六階梯、幻の位、猛烈、腐食、酸化、大気、変質、発動。【酸性の雲】」
周囲の万能素子の異変に気が付いた龍人族は配下どもに攻撃を指示するが奴らが動き出すより早く和花の【酸性の雲】が発動した。
龍人族あたりを中心に周囲の空気が強酸性のモノに変じ爛れさせる。激痛に絶叫を上げれば体内も爛れバタバタと倒れていく。不意打ち気味でうまい事決まってくれた。
僕はと言えば強酸性に変じた空気が元に戻るタイミングで【八間】にて一足飛びに間合いを詰めつつ光剣を一振り。
その一撃は予想されていたのか左腕で受け止められていた。竜の力を再現する竜語魔法の【竜鱗】の効果だ。危険を察知して僕は後ろに飛び退る。
嗜虐的な笑みを浮かべるとだらりと下ろしていた大剣を構えたかと思えば恐ろしい速度で横なぎにしたのだ。反応が遅れていたら真っ二つであった。健司の斬撃速度より明らかに早い。
重い大剣をあの速度で振れるということは剣で受け止めたり逸らしたりするのはかなり危険が伴うと判断した。
止まることなく振り回される攻撃はまるで荒れ狂う風車のようであった。正直言えば攻撃は洗練されていない。卑怯じみた身体能力でただ闇雲に振り回しているだけなのだが、それだけで大半の戦士は勝てないだろう。
まるで竜也みたいな戦い方だ。
僕は思い出す。
八年生の時の教練で行った剣道の模擬戦の事を――――。
ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。
なぜ誤字脱字がなくならないのか?
確認してるはずなんだけどねぇ。
何はともあれ貴重なお時間を誤字報告に費やしていただきありがとうございました。




