369話 上陸②
「とりあえず見て回ろうか」
「そうね」
そう言って歩き始めたものの見るべきものはあまりなく一刻も歩き回れば調査はほとんど終わってしまった。太陽も中点をすぎ軽く昼食を取り残すはテーブル台地だけとなった。
これまでの調査結果を纏めると林は定期的に整備されていたのか木々の育成は良好であった。木材は楓と檜と鋼硬木と実用的な木材であった。平地に擱座していた多脚戦車は共食い整備された形跡があり恐らくだが終末戦争後に暫く住人がいたのだろう。朽ち具合から五世代ほどは経過している。
平地には建物の構造物は朽ちていたが基礎や土瀝青の歩道は残されており仮拠点の建設作業が少し楽が出来そうだ。
ただ気になるのは粗大ごみがどこに消えたのか?
「湖に捨てたんじゃないの?」
その話をしたら和花の回答はこんな感じであった。
「あとはテーブル台地だけか」
「正直って遺跡かなと思ってるんだけど」
「ま、ここの状況を見る限り間違いないだろうねぇ。問題は盗掘済みか否かだけど」
そう言って歩き出す。
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「さて、困ったね」
思わず呟いていしまった。
「まだ判らないよ」
そう答えてくれるのはいいんだけどね。
テーブル台地の北側斜面に到着したのだが、判りやすいくらいハッキリとした開口部があった。ただ手放しでは喜べない事が。
「この足跡って割と最近よね?」
開口部の周囲はむき出しの土であり和花が指し示す足跡は大小さまざまであった。人数は20人ほどだろ。
「う~ん……。食人鬼か豚鬼に赤肌鬼。それにこの靴を履いた小ぶりなのは女性か森霊族かな? あとは人族らしいのもあるね」
この構成……まさかね。
「例の結社絡みの冒険者かしら?」
そう言う和花は心底イヤそうな表情である。
「結社絡みだろうけど、連中とは限らないかな」
「どういうこと?」
「足跡を見ると推定で15人。内訳は大型が6、小型が10、やや小ぶりが3、普通が1だ。このうち普通サイズは人族だとやや大柄、健司くらいだね。やや小ぶりはのうち僅かに大きいのは男かな?」
「そこまで判るものなの?」
和花がそんな馬鹿なと言わん表情で問う。
「それくらい判らないと斥候は務まらないよ。瑞穂ならもっと細かく分類できるんだろうけど僕にはこれが限界かな」
「なるほどねぇ。それで、どうするの?」
入るか否かということを問うてるのだろう。
「出て行った形跡がない以上は物色中なんだろうけど……」
「先にテーブル台地の上でも調べつつ明日まで待つ?」
迷っているとそんな提案をしてくれた。いつものメンツがいない以上は無理は出来ないのだけど好奇心さんが中に入ろうと必死にアピールして来るのだ。
迷っていると和花が僕の好奇心さんを後押しするかのようにこんな事を宣った。
「思うんだけど、魔術至上主義の結社にこれ以上の力を着けさせるのってどうなの?」
正直言うと結社かどうかは未定なんだよね。確認するだけでも良いのではないのだろうかという気持ちになった。
「よし、行こう」
その前に準備である。和花は[世界樹の長杖]を取り出し紺色の鍔広のとんんがり帽子を被り帽子と同じ色の長衣を着る。新衣装のようだ。
「あれ? それどうしたの?」
「あぁ、これ。[呪文貯蓄の指輪]の封入をお願いした際にメフィリアちゃんに貰ったの」
魔術師である僕には判るがどう見ても魔法の工芸品である。メフィリアさんが渡したものとなるとどんなとんでも装備なのやら……。
僕の方はというと今回は隠密行動を優先ということで魔法の工芸品である硬革鎧を一式と武器は光剣と投擲短剣が六本。あとは魔力銃である。
出来れば人数分の[妖精の長靴]が欲しかったが一人だけ持っていてもあまり意味がないので今回は出番なし。
「そんな装備で大丈夫?」
普段の重装備でない事から心配してるのだろう。
「大丈夫。問題ないよ」
と返しておく。金属鎧は隠密行動の際には音を立ててしまい斥候役には厳しい。
ほどなくして準備も整い開口部へと入っていくのであった。
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