364話 異変②
「全てを、開放せよ」
今度こそは成功させたい。先ほどのは単なる失敗だったと思いたい!
「綴る、付与、第十階梯、創の位、術式、展開、圧縮、貼付、【力場障壁】、条件、一、規約、奥義、術式、展開、圧縮、貼付、【反発力場障】、条件、二、規約、条件、三、規約、奥義、発動。【偉大なる魔法の工芸品作成】」
長い詠唱を終え無事に発動した。
魔術陣が光を放つ。それが徐々に収束していくとほんのりと青白い魔力の波長を発する腕輪が残された。
「ん~……さっきのは何だったのだろう? メタ的な事を言えば失敗ではなく致命的失敗って感じの現象だろうか?」
なんにしても魔術は成功し必要なブツは出来上がった。その後いくつかの低位の魔術を行使したは特に異常は見られず致命的失敗だったんだなと自分を納得させた。
夕飯時となりいつもの倉庫に集合し皆で屋台もんを食していると来客があった。師匠の共同体、双頭の真龍所属の半森霊族である隼である。
「うちのヴァルザスさんから預かりものと伝言だ」
彼は挨拶もそこそこ用件を切り出してきた。
まず預かりものとは二冊の本であった。一冊目は終末戦争の対応方法についての報告書であった。二冊目は頼んでいた人員の目録である。問題があるのはその人員だそうだ。
「実は銀髪さんが僅差で人材を持って行ってしまって申し訳ないが必要数が集められなかったとの事の謝意と代わりの人材を用意したので確認してほしいとの事だ」
「いま?」
「そう。いま直ぐに」
「判った」
そう返事をし目録に目を通す。基礎教育を終えて戦闘訓練を受けた男女が25名、女中教育を受けたものが5名であった。希望した数に比べて戦闘員は15名少ないし女中は10名少ない。
暫し瞑目する。
「なら、基礎教育を受けた者を男女比同じ程度で30名ほどお願いしようかな。専門教育はこっちで行うよ」
「それくらいなら問題ないが、基礎教育が終わった子らは殆どが12歳くらいだぞ?」
子供ではあるが、この世界基準だと丁稚などで既に大半の子は労働に従事している年齢でもある。14歳になった瑞穂を最前線で使っている現状としては今更である。
「構わないのでそれでお願いする。あと追加でなんだけど――――」
教導員として使えそうな熟練で引退を視野に入れた冒険者を50名ほど斡旋して欲しい事と通信魔術師や医療魔導師や土木魔術師や生活魔術師や看護魔導師などの各種魔術師を雇いたいので探して欲しいとお願いした。それから彼らに渡す報酬額の話になり打合せは半刻程で終わった。
「追加人員の事もあるし受け渡しは来週半ばにしよう。用意出来次第連絡するよ。それじゃ、食事中に悪かったね」
そう告げると隼は姿を消した。
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ちょっと文字数が増えてしまったのでもう一話追加




