359話 クラン会議④
さて、本題に入ろう。
「僕らに限らずそれなりに大きな力を保有する集団や個人の動向を監視されている」
そう言うと上を指す。釣られて見上げる者が数名。ただそのまま見上げても倉庫の天井しか見えない。そうではなく七賢会議と名乗る組織が存在し彼らは星界に浮かぶ天都と呼ばれる場所から大陸を監視し組織や文化のほか住人の行動を監視または抑制している連中の事だ。
「彼らの定めた規約は残念ながら僕には判らない。どういった行動が彼らの定める禁忌に触れて制裁対象となるのか? そんなわけで出来る限りコソコソと動きたい」
この世界はなぜか特定分野がまるっきり進化していない。数百年レベルで進化がなく未だに中世レベルから脱却できていない。かと思えば農業革命は起きているのか食料品に関しては20世紀レベルだったり、土瀝青や鉄筋混凝土なんかもある。逆に鍛冶や工業製品に関してはせいぜい16世紀程度である。兎に角いろいろおかしい。
それに知識人も多くは判を押したように過去文明の復元こそ至上の命題であるとばかりに新しいことを試みようとしない。
そのおかげで僕は簡易魔法の工芸品である携帯トイレ、和花は錬金魔術の万能美容液で一儲けできたのだけどね。
その時は称賛されてお咎めはなかった。では一体どのラインまでが許されるのか?
ただ七賢会議の定めた規約を逸脱したものは消されるているからでは師匠が言っていた気がする。
その為にも偽装が必要なのだ。
何せ僕らがこれから用意するものはこの世界が最も繫栄していた2万年前の技術だからだ。ハーンから概要を聞いた限りでは「恐怖で世界征服も余裕です」との事だった。
「ところで……もう手中に収めた前提で話しているが、その島は安全は確認できているのか?」
シュトルムがそう口にした。そういうだろうと思った。
「事前に【幻影地図】で確認していて周辺状況も含めて確認はしている。あとは僕が直接出向いて確認かな」
「ここから結構な距離……目測だが375サーグくらいあるが調査時間も結構かかるんじゃ?」
恐らくシュトルムは十字路都市テントスの外壁が直径25サーグなのでそこから判断したのだろう。普通に移動すれば結構な距離だ。
「普通に考えるならね。でも僕ひとりなら【転移】で行って帰ってこれるから調査に一日かかっても――――」
「「「ダメ!」」」
全てを言い切る前に待ったがかかってしまった。
「樹君はトラブルを引き寄せる体質だし一人はダメ!」
「負傷したときとか一人じゃ困るでしょ?」
「索敵要員は重要」
和花、アルマ、瑞穂がそれぞれの意見を口にする。和花はともかくアルマと瑞穂の言い分は理解できるが今回に限れば身軽さ優先なので同伴者がいると困るのだ。
「三人とも忘れた? 僕は[身代わり人形]の呪いを受けているってことを」
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ちょっと仕事と両親の面倒でバタバタしております。




