358話 クラン会議③
次はアンナにしよう。
と言っても彼女に出来ることは今度師匠のところから派遣されてくる娘らの女中教育くらいなんだけどね。用件を伝えるとすぐさま「承知致しました」と回答が来た。
アンナの了解が取れたので次はアリスなのだが……。どうしたもんか。
「取り合えずアリスと瑞穂は暫くのんびりしていていいよ。ただ働かないと落ち着かないとかいうのであれば忙しそうなところを手伝ってあげてよ」
「ん、わかった」
「……はい」
アリスはやや困惑気味に、瑞穂はやや不服気味に返事をした。なんかフォローしておいたほうがいいのだろうか?
そんなことを考えていると、
「ところで樹くんはどうするの?」
と和花が聞いてきた。では、本日の本題に入ろうか。
「みんな食事も終わったしちょっとテーブルを開けてもらうよ」
そう断ってから【魔化】した白い布をテーブルに広げる。
そして――――。
「綴る、統合、第四階梯、幻の位、触媒、親機、子機、蓄積、共有、送信、中継、受信、地形、地図、詳細、投影、立像、精査、拡縮、更新、増光、破棄、発動。【幻影地図】」
詠唱の完了とともにテーブルに敷いた白い布の上にこの町とその周辺が立体投影される。映し出された映像を移動させていく。方向は南西だ。
そしてある特徴的な場所で動きを止めた。そこは海沿いの場所で南側が海岸、それ以外は山で囲まれている場所だ。中央に巨大な湖が存在し無数の小島が存在する。山を越えた東は熱砂の砂漠で西は日本皇国。
昔は研究所だったのか湖のそばまで街道が存在する。
「ここを偽装拠点にしたいと思っている」
「そこって魔獣の狩猟場でしょ?」
まず最初に反応したのはアルマであった。
「大所帯でこの十字路都市テントスに滞在するのは維持費が馬鹿にならなくてね。それに近場だと国ないし領主に税金を納めないとならないし、場合によっては徴発されかねないから……」
魔獣の狩猟場なら誰の土地でもないし勝手に住み着くことは可能である。ただし危険に対しては自己責任となるけど。
「それにここなら天然の要害だし密偵からも防御できる」
「だが、それだと休暇はどうするんだ? 数日かけて町まで行くことになるが?」
そう言ってきてのは健司である。確かにここで過ごした場合は妓館に通うの大変だろうしねぇ。
そこは考えてある。
「十字路都市テントスに新事務所を用意して、ここと事務所を[転移門の絨毯]で繋ぐ予定だよ」
「新事務所の防犯に関しては大丈夫なのか?」
そう問うのはシュトルムである。[転移門の絨毯]には使用者を制限する機能はない。
「防犯対策としては扉に【強固の錠前】をかけて、おくし警備用に多脚戦車も配備しておく」
「それを乗り越えてくる奴には?」
「そうなれば僕らで対処しなければならない相手ってことになるね」
「そこまで考えているならいいんだ」
シュトルムは納得したのかしてないのか微妙な表情で何か考え込んでいる。
「ところで例の島にはいつ行くの?」
「それに関してはハーン次第かな」
和花の質問に対して僕はそう回答する。ハーン次第と言ったけど実際には自動工場の稼働具合による。
「あとは――――」
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