表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
373/678

354話 なんで昇格?②

「うちの共同体(クラン)は教導に割ける人員が四名しかいないのですが、そのあたりは冒険者組合エーベンターリアギルドとしてはどう考えてます?」

  そうなのだ。教導員(ドーセンズ)に回せる人材が和花(のどか)のところの高杉(たかすぎ)三等陸尉らだけなんだよね。彼らは定住を求めているので丁度いいかなとも考えていたけど……。

「こちらとしては定員を500名ほどと考えていますので、教導員(ドーセンズ)の数は最低でも10名は欲しいですね。ですので足りないようなら今月末までに探してください」

 などと無茶な要求を突き付けてきた。


 最悪の場合は僕ら自身が教導員(ドーセンズ)として参加しなければなるまい。これは失敗したかな?

 とりあえず引退(リタイア)を視野に入れた熟年の真面目な冒険者(エーベンターリア)を探そう!

 もっとも誠実な人物などは大抵は冒険者(エーベンターリア)以外に転職してしまっているのだが……。


「判りました。それはこちらで何とかします。ただ……勧誘するにしても何か好条件がないと……」

 冒険者組合エーベンターリアギルドからの指名依頼としての報酬は通常の報酬額の三倍となる。これは拘束期間が長くその間は行動の自由がかなり制限されるからだ。ただそれだと報酬としてパンチが弱い。


 壮年の男性は少し悩んだ後こう告げた。

「なら銅銹等級(第四階梯)以上であるなら任期が満了したら十字路都市テントスでの居住権を発行するというのは?」


 この名を名乗らぬ人物にそんな権限が?


「失礼ながら貴方にそんな大きな権限があると?」

 失礼を承知でストレートに聞いてみた。

 すると忘れてたとばかりに自己紹介を始めた。

「おぉ……自己紹介をすっかり忘れていたよ。私は冒険者組合エーベンターリアギルド十字路都市テントス中央支部の責任者であるアドラル・マーテリアだ」

 どうやら単に忘れてたらしい。

 ちなみに組合(ギルド)のお偉方はどこも大半は現場からの叩き上げではなく事務職からの出世組である。


「なるほど……。しかし組合(ギルド)の支部長程度に王国の直轄地の住民権の手配とか可能なんですか?」

 そもそも組合(ギルド)の力関係はどちらかと言えば国のほうが上だ。命令を強制することは出来ないが法律で活動を押さえつける程度のことは出来る。

「少し誤解を招く言い方をしてしまったね」

 僕の失礼な発言には特に表情も変えずに理由を説明してくれた。


教導員(ドーセンズ)として働いた年数に応じて銅等級(第五階梯)に引き上げるという意味だよ――――」

 この世界はとにかく職業の選択肢が狭いし転職も難しい。職人なら15歳までに丁稚(グーウルタイズ)になっていないとまず受け入れられてもらえない。兵隊(ソルジャー)や事務職であれば20歳くらいまでは新規受付は可能だ。冒険者(エーベンターリア)が騎士として雇用されるのも25歳くらいまでだ。

 30未満で貯蓄がある程度あるなら農村部に行けば歓迎される。

 街中にいて30代とかおそらく野垂れ死に予備軍扱いである。

 銅等級(第五階梯)に昇格した冒険者(エーベンターリア)というのはそれなりにまじめに働いていたという評価になるので定住できるというのはそれなりに魅力的らしい。しかも教導員(ドーセンズ)は結構年配になっても続けられるので遅まきながら結婚も視野に入れられる。


 よーするに募集すればある程度集まるよということだ。


 今月末までに人員を用意できれば良いのでこれは受けても良いかなと判断した。

 了承すると「では、手続きなどは彼女に」と言ってマーテリア支部長は退席した。




「紹介が遅れてすみません。本日より共同体長(クランマスター)である金等級(第八階梯)高屋(たかや)様の専属係となりましたマクファイトと申します。以後良しなに」

 そういって(こうべ)を垂れるのは20歳前後の上品な女性である。組合(ギルド)職員(パーソナー)になるにはそれなりに教養がいるのでそれなりの家柄のお嬢さんなのだろうと思う。

 ただ結婚適齢期だと思うのでうちの共同体(クラン)の男性陣はある意味標的になるかもしれないなぁ……。


「まずは専属受付係エクスクルーシブ・レセプショニストとは何かといいますと――――」



ブックマーク、評価、感想、誤字報告などありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ