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344話 掘り出し物②

 サモエド風の狼人族(ローグル)が大様に頷く。

「直シテカラ、ゼヒ後ロノ恋人ニ送ル事ヲオ勧メスルヨ」

 相変わらずというか声帯構造の違いか聞き取りにくいなとか思っていると。

「そうですね……和花(のどか)になんてどうですか?」

 後ろでアルマがそんな事を勧めてくる。一応自分の立ち位置分かってる? と問いたいが問うとやぶ蛇なので取りあえず無視する。折れた小剣(ショートソード)刀身(ブレイド)を差し替えて贈る? どっかでそんな風習が……と思っていると、

「少し古い風習ですが、装飾の施された小剣(ショートソード)を意中の未婚女性に送る風習があるんですよ」

 とアルマが答えてくれた。


 そこまで言われて思い出した。


 一党(パーティー)(リーダー)として常識に疎いのはマズいと思い文献を読み漁っていた時に見た記憶があった。


 たしか……。


『俺のものになれ。貞操の危機に際してその剣で(貞操を)護れ』


 だったはずだ。

 所謂(いわゆる)求愛(プロポーズ)というやつである。しかし貞操の危機には自害しろって話も酷い話だなとか思うがお国柄ってやつなんだろうねぇ。


 しかし、和花(のどか)にねぇ……。

 今更な気もするけどモノには順序というものもあるかなと思う事にした。


「いくらだい?」

「壊レテイルガ装飾品トシテノ価値ガアルカラ金貨50枚(五万ガルド)デイイヨ」

 即答であったが随分とというか、かなり強気の金額設定だ。


「高いな……」

 取りあえずケチをつける。そうしてほかの陳列品に目を向ける。この手の露店に陳列されている商品は未鑑定品か粗悪品(フリークエントリー)級が殆どである。せこい話だが値切ろうって事だ。

 鑑定スキルなんて便利な物はないので鑑定する者の知識に依存する。そのためたまたま記憶していたとかでもない限りは、普通は数日から一か月かかるため未鑑定のまま売り飛ばすことが多い。


 だが、見つけてしまった。

 恐らく未鑑定で市場に流したものだろう。


「その左手用の革の手袋(レザーグローブ)とそこの指輪(リング)を五つも合わせて金貨50枚(五万ガルド)で売ってくれる?」

 正直かけ引き苦手なんだけど予想通りであるなら……。


「オ客サン。イイ(トゥル)族ネ。オマケデコノ小袋(スモールザック)ヲ付ケチャウヨ」


 異種族ゆえに分かりにくい表情だが声のトーンの上がり具合から歓迎してくれているようだ。


 この手の露店では高額商品を取り扱っていることが知れると襲撃されることもあるのでお金を受け取るとサモエド風の狼人族(ローグル)商人(マークアンテ)はそそくさと露店を畳み始めた。


 その後もフラフラと露店を覗くものの目ぼしい商品は見当たらず気が付けば一刻(二時間)は過ぎており小腹が空いたので焼き物を扱う飲食系露店で正体不明の肉の串焼きと煮込み(ラグー)を買う。

 ややチャレンジャーな気がしたが一般的に食べられているようなので問題ないだろうとの判断だ。


 しかし思うにこの手の露店は包装用の紙が用いられないのでお土産で買うとかやりにくいんだよね。そういう場合は自前で大皿とかを持っていくとの事だけど……。

 器で提供する露店も基本的には食べたら器を返してくれって感じだし。運がいいと殺菌性の高い葉っぱで包んでくれる露店もあるが稀有だ。

 葉っぱならタダのように思えるが大量に採取するためには人件費(コスト)がかかるし町の外に冒険者に取りに行かせるなら彼らの報酬も加味すると気軽に使えるものではなくなってしまう。


 正体不明の肉だが、

「これ、たぶん畜産用の巨大鼠(ジャイアントラット)ですね」

 と先に口をつけたアルマの感想だ。


 肉自体に臭みはあまりなく鶏肉に似た淡白な味わいで肉質は弾力がある。迷宮都市ザルツで散々倒した巨大鼠(あれ)を思い浮かべてしまいちょっとモヤモヤする。

 味付け自体は塩味のみだがなんの肉だか聞かなければそれなりに美味しかったと思う。


 煮込み(ラグー)の方は一杯で銀貨5枚(5ガルド)であったが、器を返せば銀貨1枚(1ガルド)戻ってくる。そう考えると小さな島だけに中身は魚介であるが量はあり食べごたえだけはある。


 アルマが食べ終わるのを待ち器を返しに行き返金は受け取らずに戻る。

「小腹も満たされましたし、そろそろ今後の話でもしましょうか」

 聞きようによっては誤解されそうな言い回しをしているが、殿下、もとい閣下の話を聞き今後の計画に軌道修正が必要になったのでそれの話の事だ。


「それは戻ってからにしよう」

 計画を知る主要メンバーにも話さないといけないし、ここは人が多すぎる。ついでに言うと先ほど購入した魔法の工芸品(アーティファクト)を調べたいというのもある。


「それもそうね」

 とアルマが歩き出す。

 それを追うように僕も歩き出すのだが、妙な気配を感じた。

「なにかあった?」

 僕の動きに懸念を持ったアルマが傍によって見つめてくる。

「何でもないよ。さっさと戻ろう」

「私に嘘は通じないわ。何を感じたの?」

 やはり高位審議官クァタオー・スタドトラットには嘘や誤魔化しは無理のようであった。


「誰かに尾行さ(つけら)れている」

「人数は?」

「おそらく二人かな?」

 相手の技量(うで)はそこまで優秀ではないと思う。少なくともこの混雑した場所で平時の僕に感づかれるのだから。


 さて、どうするか?


ブックマークしていただいた方ありがとうございます。

なんとかエタらずに生息してます。


活動報告に書きましたがいろいろありとても執筆してる余裕がありませんでした。

しかしながら珍しく上司が仕事して少し仕事に余裕ができたので今月中には今章を書き上げるめどは立ちました。


暇つぶし程度で構いませんので、今後もお付き合いいただけると幸いです。

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