333話 帰還①
「艦長、状況を!」
慌てて指揮所に駆け込む僕にラーケン艦長は、
「投石攻撃ですな」
と特に焦った様子もなく答えた。専門家たちに焦りが見えない事から恐らくは問題ないのだろう。
現在分かっている事は、急激に吹雪いてきて視界が確保できない事と、遠距離から直径0.5サートほどの岩塊がいくつか船体に命中している事を告げられた。
「それで、船体の損傷は?」
「数カ所ほど多少凹んでますが、航行には支障ありませんね」
そう返したのはアキレス航海長だ。試験項目の中に必須項目ではなかったが外装板の耐久試験という項目があった。必須項目ではなかったがこの攻撃により追加報酬が出そうで歓迎すらしているようであった。
「しかし、この高度で投石攻撃って……」
射石砲とか重投石器でなければあれほどの岩塊は飛ばせない。この島で、この高度で軍隊がいる筈もなく……。
「恐らくは巨人族、それも霜巨人じゃないかな?」
思案しているといつの間にかやってきたのかアルマが答えてくれた。岩塊は上から放り投げているのであろうという。
左舷側が急激に勾配がきつくなっており言われてみれば確かにと説得力があった。
ん? 急勾配?
ある疑問が持ちあがる。
その事を口にするとラーケン艦長も、「データも取れたしそろそろ戻っても良いのでは?」
と返してきた。必須項目は埋まったものの選択項目が埋まっていなかったし、どうやら僕が止めなかったので継続していたらしい。
では、戻ろうと指示を出し僕らは居住区へと戻る。
下りは渦巻き状に進む必要はなく、そこそこの勾配をかなりの速度で滑り降り大してトラブルもなく最終試験項目も埋まり町へと帰還を果たしたのであった。
不謹慎であるが、何かしらの事件を期待していたのは内緒である。
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「あれを生身で仕留めたんだ? すごいじゃないか」
帰還を果たした僕らは市壁に吊るされ血抜きされているらしい四手熊を見て報告がてらにそう尋ねた。
「まぁ……な」
てっきり誇るかと思ったのだけど健司の返事は歯切れが悪い。数多くいる冒険者でも一党で四手熊を倒せる連中は数えるほどしかいない。誇ってもいいと思うのだけど健司はその戦闘で自信を喪失したのだという。
これまでは恵まれた身体能力と魔戦技にる身体強化によってどうにかなっていたが、ここに来て技術的な未熟さを実感したというのだ。
確かに四手熊の頭部の傷を見るに刃筋が立っていないなとは思った。【斬撃】の鍛錬が足りないのだろう。
うちの一党はシュトルムは盾で攻撃を往なし隙あらば片手剣でざっくりといったスタイルだし、瑞穂はチート過ぎて話にもならない。ダグは槍を自在に操る使い手でありちょっと戦闘スタイルが噛み合わない。僕に至っては速度重視で魔術頼りの為に健司とは真逆だ。僕らの一党には両手武器の使い手が居ないのがねぇ……。
僕からのアドバイスとしては只管に素振りである。一日一万回くらい頑張ればいけるはず!
ま、慣れても三刻はかかるんですけどね。
健司の件はすぐにどうなるものでもないので暫くは無心に素振りしてなよと言っておく。
もう一つの重要案件であるハーンの調査結果を聞かなくては!
船員らに撤収指示を出し僕はハーンを探しに行く。
最近忙しすぎて時間の間隔がおかしい。気が付くと数日経過している感じだ。
取りあえず今月中に書きかけの二話くらいは投稿したいなぁ。




