表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
350/678

331話 いざ登頂へ③

 何事もなく更に一日が経過した。僕らの現在位置は島の中央にそびえる山の標高250サート(約1000m)を超えたあたりだ。

 艦内は与圧されているので忘れてしまいがちだが、こっちの世界は僕らの居た世界と異なり平地でもやや空気が薄いらしく体感だが富士山の五合目くらいに相当する場所だ。



「寒すぎる……」

 見張り台で毛皮の釣り鐘型外套(マント)に身を包みこんでいても寒さでブルリと身を震わせる。第五階梯の魔術に【温度管理テンプレチャー・コントロール】と呼ばれるものがあるのだが、あの魔術(ギャルダー)は制約も多く今は使っていない。


 なぜわざわざ与圧され室温制御まで施された居住空間(キャビン)から寒風吹く見張り台に居るのかと言えば第七階梯の魔術の成功が見えたからだ。


 上の階梯の魔術を使えるようになる準備段階として脳内の未使用領域に魔術回路(ギャルダンド)焼付ける(記憶)する必要がある。これは無詠唱魔術(テルガン・ギャルダー)略式魔術(インフォメール)とのトレ-ドオフである。


 そして試してみるのは第七階梯でも難易度の低い【空間探索(クァーアラ)】である。この魔術の効果は音波発信探知(アクティブソナー)のようなもので術者(キャスター)の脳内に音の反射で得られた情報を元に立体地図を作成するものである。効果範囲も広く半径25サート(約100m)の球形である。


 別に室内でも良いじゃないと思わなくもないのだけど、失敗(ミス)したところを見られるのは恥ずかしいじゃないか。


 そんな訳でさっさと詠唱してみよう。

 初回なので深呼吸をし詠唱に入る。


綴る(コンポーズ)拡大(エルト)第七階梯(ルナルル)探の位(ランサイチ)波長(トンフェッド)発信(エグレサズ)広域(ラテーリー)精査(イレッティ)反射(レフレクティエ)解析(アナリザ)構築(ビガーリー)展開(インストル)発動(ヴァルツ)。【空間探索(クァーアラ)】」


 導管(コンディット)万能素子(マナ)が通り、魔力(マーナ)に転じ魔術回路(ギャルダンド)に従い構成され術式(グラニ)通り魔力(マーナ)が形を成していく。


 詠唱の完成と共に知覚が広がる感覚があり程なくして大量の情報が飛び込んでくる。それら意味不明の情報は脳内で処理され再構築し僕の周囲の状況をややぼんやりとだが映し出す。


「なるほど……確かに見えていない箇所も分かるなぁ」


 効果を確認し艦内へと戻ろうかと思った時、何か大きなものが飛び立つのが見えた。


 それは体長5サート(約20m)ほどある(ドラゴン)の頭部をもつ翼のある(アラー)といった印象の生物であった。


 確かあれは……。


 蛇竜(ワイアーム)だったか?


 あれも迷宮(アトラクション)産の怪物なのだろう。分類上は偽竜(デミドラゴン)と呼ばれており、討伐すればかなりの実力者であると証明できる。


 だが、ザイドリック級(ザイドリック一番艦)の大きさに恐れておりそのまま逃げ出してしまった。


 倒せば結構純度の高い万能素子結晶(マナ・クリスタル)が採れただけに残念ではある。


 今度こそ戻ろうと思った時だ。開閉扉(ハッチ)が開き和花(のどか)がひょっこりと顔を出したのだ。

「こんな寒い中で何してるの?」

 そんなある種当然の質問を投げかけてきた。


「第七階梯の魔術のとっかかりが掴めたんで試してみたんだよ」

「上手くいった?」

「勿論」

 実は結構苦労しただけに思わずドヤってしまった。

「おぉ~おめでと~。なら【転移(テレポート)】が使えるのもすぐかな?」

 そんなことはつゆ知らず素直に称賛してくれる。

 そう言えば同じくらいの技量(うで)だと思ってたんだが和花(のどか)の方はどうなんだろう?


「ありがとう。ところで和花(のどか)の方はどうなの?」

 礼を言い探りを入れてみるが……。


「もう使えるよ」

「え?」

 一瞬だが耳を疑ってしまった。和花(のどか)が魔術の鍛錬をしている姿を見たことがないのだ。もしかしてチートなの?

「確か一昨日だったか……。唐突に行けると思って試したら上手くいったの」

 ニコニコとそんな事を宣う和花(のどか)にちょっと畏怖を……いや、違うな嫉妬してしまった。


 瑞穂(みずほ)にしろ和花(のどか)にしろ実に羨ましい限りである。だが他人を羨んでも自分の能力が上がるわけはないのだし、僕は僕で自分のペースでやっていくしかない。


 限られた手札でやっていくしないのである。気を取り直して何しに来たのか尋ねてみるかな。


「ところで僕の事を探してた?」

「あ、そうそう。ちょっと相談に乗って貰いたかったの」

「分かった。ここは寒すぎるし居住空間(キャビン)に戻ろう」


 そう促して居住空間(キャビン)へと戻るのであった。

 しかし相談……。

 なんだろう?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ