表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
346/678

327話 未知なる孤島-港湾都市⑦

健司(けんじ)くん、ダメだよ」

 精霊使い(シャーマン)らしく俺の感情の高ぶりが視えたのかアリスが注意してくる。

 言いたいことは理解している。体格差が違い過ぎて恐らくだが一撃もらえば衝撃で気絶する可能性も十分にある。ただ(いつき)の言葉を借りるなら、相手の骨格などの問題で攻撃の軌道はかなり限定的だから頑張れば避けれる筈なのだが……。


 俺が習い始めた武技(グウェラー・アーツ)の[功鱗闘術]は大型の武器を用いた一撃必殺の技だ。あれだけの巨体だと一撃で()れなければ無防備な硬直後を狙われるとヤバい。短剣(ダガー)のような鉤爪を鎧の表面で滑らせて被害を軽減するって事になりそうだが、僅かにでもズレれば……。


 異世界ひゃっほぉぉぉってノリで来たはいいけど、もっとイージーな世界に来たかったぜ。


 取りあえずだ。


「二人とも振り向かずに、風の壁の後ろに回り込むように少しずつ下がれ」

 後ろにいるふたりへと指示を出す。返事を確認した後に俺もジリジリと後退していく。彼我の距離は10サート(約40m)ほどなので俺らが振り返って走り出すようなことになればすぐに追いつかれるだろう。そしてその無防備な背後から殴り倒されるだろう。


 直立していた四手熊フジョーヘンダル・バールアングは頭を下げると三対六脚となりゆっくりとではあるが近づいてくる。恐らくだが俺らの後ろにある平台型(プリツク)魔導騎士輸送機マギキャバリエ・クラディアントを警戒しているのだろう。


「逃げ切れるか?」

 つい正直な感想が口をついた。

四手熊フジョーヘンダル・バールアングはたぶん頭から風壁に突っ込むだろうから一瞬だけ怯む筈だからチャンスはその時かな……」

 アリスの回答を聞きどうするか思案する。歩行時の頭の位置がちょうど風壁の位置であり壁に突っ込めば風乙女(シルフ)によって切り刻まれる。迂回してくれるならあの巨体ゆえに小回りが利かないので逃げる時間は確保できるんだが……。

 怯んだ瞬間に一撃いれて急速反転離脱だな。


 取りあえず後ろの二人に作戦を伝える。大きな手柄が欲しいシュトルムは即答し、アリスは暫し悩んだ末に了解した。四手熊フジョーヘンダル・バールアングとの距離はいつの間にか5サート(約20m)にまで縮まっていた。

健司(けんじ)くん。以前集落で襲われたことあったけど――」



「それじゃ、任せたぜ」

 アリスの体験談を聞き打って出ることに決めた。三日月斧(バルディッシュ)を肩に担ぐように構え左足を前にしやや腰を落とす。[功鱗闘術]【斬撃ざんげき】の初期動作(モーション)だ。

 更に魔闘術(ストラグル・アーツ)によって筋力を増強し、【練気斬(リスタ)】の為に体内保有万能素子(インターナル・マナ)をかき集め圧縮し三日月斧(バルディッシュ)へと集約させる。


後ろに居たシュトルムが凧型盾(カイトシールド)を眼前に構えて風壁へと摺り足で近づいていく。それに釣られたのか四手熊フジョーヘンダル・バールアングが飛び出す。


 予定通り風壁の存在には気が付かなかったようで顔を突っ込んだ瞬間、風壁内に漂う風乙女(シルフ)によって切り刻まれる。四手熊フジョーヘンダル・バールアングの勢いを殺しきれず風壁は消失し顔を刻まれた怒りか立ち上がろうとする。


 このタイミングだ!


「キィエーイ!!」

 猿叫を発し大きく踏込みと三日月斧(バルディッシュ)を大振りで振り下ろす。

()った!』

 三日月斧(バルディッシュ)は吸い込まれるように四手熊フジョーヘンダル・バールアングの頭部へと振り下ろされる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ