324話 未知なる孤島-港湾都市④
数話ほど健司目線で進行
「さて、俺らも仕事始めるか」
何か違和感を感じつつも樹らのザイドリック級が離れていくのを見送り、残った各位に指示を出さなくてはならない。慣れない事ではあるが居残り組のまとめ役は俺なのだから。
先ずはハーン以下五班の魔導機器に詳しい面子を太守の館の地下施設の探索に向かわせる。次にダグと戦闘面で頭抜けている三班には市壁の外で魔物狩りを任せる。外の魔物の大半は迷宮宝珠からあぶれた怪物が野生化したものが殆どであり討伐すれば万能素子結晶を採取できる。それは太守の館での都市機能を生かすための動力源に転用できる。
そして俺の方はといえば六班を率いて都市内の調査だ。そしてシュトルムと癒し手のセシリーには太守館で待機だな。
あぁ……そうだ。女中ちゃんたちには館の設備の機能確認と食事などの準備を……。
そう指示しようと思った時だ。
ん?
そういえばなんで女中ちゃんらは六人もいるんだ? 確か予定では……。
そこで疑問符が浮かび違和感の正体に気が付いた。俺とダグが残るという事で船員らを増員した際女中ちゃんらを五人に増員した。そこまでは樹から聞いている。そして違和感を覚えた一人はと言えば、
「……なんでアリスがここに居んの?」
そう、違和感の正体は船員らに医務室の女神と称えられるアリスであった。しかもご丁寧にメイド服なんて着ているのですぐには気は付かなかったのだ。
そしてありすからの返答はと言えば、
「ん? 癒し手が足りないから出発直前に相談して降りたんだけど」
と言うのだが、ならなんでメイド服なんだと問いたい。
いや、恐らく前世絡みの趣味が絡んでいるのだろう。
「似合う?」などと裾をひらひらとさせているのでおざなりに「似合う似合う」と返しておいた。感情が籠っていないと不評が帰ってきたが無視である。
取りあえず樹からは何も聞いていない。考えられる理由は――。
「ま、勝手に降りたんでなければいいや」
面倒なんで考えるのをやめた。そして、
「んで、なんでメイド服なわけ?」
「前世の私なら喜んで着た、からかなぁ……」
「それだけかよ!」
どうでもいい理由に思わず突っ込んでしまった。それにしても普段は飾り気の少ない長衣姿なだけに違和感がスゲーわ。
「アリスはダグたちに同伴して助けてやってくれよ。あいつら荒事専門だし」
高位の精霊使いであるアリスは攻撃から回復まで熟せる万能キャラなのでこの際だからこき使うとしよう。
アリスの返事を待たずにダグを呼びアリスの警護も宜しくとお願いして六班を率いて市内に向かう。
特に事件もなく五日が経過した。




