表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
334/678

315話 未知なる孤島-裏③

「あの方向にあるのって妖魔の森アルフ・ディ・アバーロよね。事前確認であんなところってあったっけ?」

 アリスのいう事前確認とは道中に指揮所(ブリッジ)裏の海図室(ジュラズ・カート)にある[神の視点ポント・ビスタ・ディ・ディウス]の立体画像で島の大雑把な地理的特徴などは把握していたのだ……。広大な森があることは分かっていたのだけど、アリスが指し示す場所は、まるで線を引いたかのように明らかに他とは植生の異なる植物が茂る森なのであった。


「でも、周辺調査として軽装(水着姿)で行くような場所には見えないよね……」

 アリスはそう言うと少し考えこむ。そして、

「恐らくだけど、【迷いの森(メイズ・ウッズ)】の魔法が掛かっていて奥へと誘い込まれたのかも?」

 そのような予想を口にした。


 なるほどと思っているとアルマが気になる事を口にする。

「そうなると相手がどれくらいの力量(ちから)の持ち主かで対応も変わってくるよね」

「どういう事?」

「ん~……術者(キャスター)力量(ちから)で効果が変わる術って結構あると思うんだけど、専門家のご意見は?」

 そう言ってアルマがアリスに話を振る。

(いつき)君の予想だと結構昔は誰かしら住んでいたのよね?」

「そうね」

 確かそんな話をしていたはずだ。そう考えているとアルマが

「外界と二万年近く隔絶されていて妖魔の森アルフ・ディ・アバーロがある事を考えるとやっぱり闇森霊族(ダークエルフ)が住んでいると思うのよね。そう考えると……最低でも上位闇森霊族(ハイ・ダークエルフ)だと思うから……」

「ん? 最低でも?」

「うん」

 アルマが頷くと知識を披露し始める。その内容はというと。


 人間を含むほとんどの人型種族は学術的に最上位種、上位種、下位種に分類される。妖精(アルヴ)族であれば神代の時代に神々によって妖精界(アルヴプレーン)から召喚された所謂(いわゆる)本物の妖精(アルヴ)族であり、知人でいえば先生の友人であるフェルドさんやバルドがこれに当たる。ほぼ半神(デミゴッド)と言ってもいい。

 上位種とは神代の時代が終わり自力で妖精界(アルヴプレーン)に帰還する能力を失った真なる妖精(アルヴ)族同士の交配によって誕生した存在であり、この世界でも稀に見かける事がある。下位種はいま一般的に見かける妖精(アルヴ)族の事だ。


「――――仮に真なる上位闇森霊族(ハイ・ダークエルフ)が居たとすると恐らくは森は半妖精界(アルヴプレーン)と化していて時間の流れすら違ってしまうわ」

 最悪の事態を想像してしまい三人して沈黙してしまう。そこに先ほどまで沈黙していた(すめらぎ)が口を挟んできた。

(いつき)って()()()()だろ? ここにいる主に誘い込まれたって事はないか?」

「まって。主が居る事で確定なの?」

 私は思わずそう叫んでいた。

「いや、確定というか……」

 (すめらぎ)は言い淀む。そして無言で先を話すように促すと、「あくまでも憶測だぞ」と前置きして話しだした。



「そもそも[神の視点ポント・ビスタ・ディ・ディウス]って上空から見たリアルタイム画像を立体映像として映すものだろ」

 (すめらぎ)はそう言って一旦言葉をきる。


 何勿体ぶってるの?


「俺が思うに二万年も見つからない島が突然見つかり、島の見た目と上陸後の地形に食い違いがある。何者かが世界を見ていて標的として(いつき)を誘い込んだ……と考えたんだ」

「それはありそうねぇ……でも、そうなると主の正体は……」

 私の脳裏にいくつかの候補が上がる。


「この環境で居そうなのは金属魔人ミアタル・ディアブハル死を超越せし者(ノーライフ・キング)あたりかしら?」

 いまあげたのは共に魔術師(メイジ)が永遠の思索に耽る時間欲しさに転じた存在だ。片や錬成魔術(キューデンダム)、片や死霊魔術(ネクロマンシー)の奥義である。


「高い知性があるから少なくとも話は通じるわね」

「そうは言うけど……脅されたりしない?」

 アルマの意見には同意できるものの力で従わせてくる可能性も十分にある。

「でも、わざわざ招き寄せたって事は、恐らくだけど交渉する必要があると判断したんだと思う」

「ん~どんな事を言ってくるのかしらねぇ……」


「居るか分からない存在の事で思い悩んでても仕方ないよ。それよりも……(いつき)君とかの捜索はどうする?」

 脱線していた話題をアリスが軌道修正して元に戻す。


「取りあえず捜索隊は私、アリスに……後はどうしよう?」

物品探知ロケート・オブジェクト】が使える私は必須で森の中での活動なら自然崇拝者(ドルイド)にして野伏(レンジャー)たるアリスは必須だ。

 だけど……。


「私らってどちらかというと後衛型だよね。誰か壁役が欲しいよね」

 アリスの提案に(すめらぎ)が「俺が着いていくか?」と答えるものの却下する。

(すめらぎ)もダグさんも大型武器を持った重戦士(ヘビーウォーリア)でしょ。出来れば狭小な場所で戦える軽戦士(ライトウォーリア)タイプの人が良いんだけど……」


 無いもの強請りなのである。当一党(パーティー)軽戦士(ライトウォーリア)タイプは瑞穂(みずほ)ちゃんだけなんだよねぇ。


「ならシュトルムとセシリーに頼むか」

 (すめらぎ)の提案も一理あるなと思っていると――。


「敵襲っ! 全員いますぐ逃げろぉっ!」

 拡声器(ライズ・アチェル)からルワンダ索敵員(ミラント)の叫びが響き渡る。


 これはただ事ではないぞと互いに頷きあい一目散に魔導騎士輸送機(ザイドリット級一番艦)へと走り出す。


 そして襲撃してきたモノが森から飛び出す。その姿は全長3サート(約12m)を超え、幾つかの節に分かれた細長い身体に前肢が鎌状になっており羽を広げ飛翔している。大きさは兎も角として外観的には水蟷螂に近い。


長節蟷螂蟲(ラナトラー)っ!」

 知識人のアルマが青い顔をして悲鳴じみた声を上げる。大きいけど強そうには見えないんだけどなぁ……。

 だが、こいつが如何に恐ろしいかはすぐに判明した。警護担当で自律稼働中の多脚戦車コーソー・ラオーソーグが排除に動きだした際に獲物と感じたのか

 口器から液体を吐き出したのだ。

 それは着弾すると金属の装甲(スキン)をドロドロと溶かしたのである。


 人間が浴びたら洒落にならない。

 だが数騎の多脚戦車コーソー・ラオーソーグの犠牲のお陰で負傷者もなく魔導騎士輸送機(ザイドリット級一番艦)に逃げ込んだのであった。


「俺の[ウル・ラクナ]を出すぞ!」

 (すめらぎ)魔導騎士(マギ・キャバリエ)で迎え撃つようだ。

「一人じゃマズい。俺も出る」

 それに続いてシュトルムも操縦槽(ディポッド)へと飛び込む。


 大丈夫なのだろうか?

ブックマーク、評価などありがとうございます。


忙しすぎて今月は二話しか投稿できなかった……ガックシ。

六月くらいまで過労死レベルで仕事が忙しすぎて更新ペースを守れそうもありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ