285話 岩柱の遺跡-下部構造編②
時間も惜しいけど可能な限り危険は避けたいので僕と瑞穂、それに使い捨てである石の従者で地下一階へと降りる事にした。
昇降機で降り、扉が開くと涼しげな空気と共に不快な光景が目に飛び込む。
壁などに弾痕などはなく空薬莢も落ちていない。広場に引きちぎられたかのように飛び散る装備や肉片の具合から近接戦闘で破損したとは考えにくい。まるで強力な重火器を一身に浴びたかのようだ。
考えられるのはかなり昔の発達した魔導機器の武装に【魔力撃】のような魔力の塊を多重砲身回転連射火器の様に高速で撃ちだすものがあったのでそれではないだろうか?
取りあえず石の従者を囮に周囲に敵がいないかを探ろうとおもう。広場からまっすぐと幅1サートの通路が伸びており5サートほど進むと左右に分岐しているのが見える。
「前進せよ」
僕の命令語語を受け石の従者はゆっくりと歩を進める。
歩く様子を眺めていると程なくして分岐に差し掛かったので「止まれ」と命じる。
ちょうどT字路で停止した瞬間に左からまるで赤い光線のようなものが走り石の従者は一瞬でバラバラとなるのであった。
警戒する僕と瑞穂の耳に聞きなれた歩行音が飛び込む。
「この音……」
「多脚戦車だ!」
人間以上に硬く耐久性のある石の従者が一瞬でバラバラとなった打撃力である。魔術で防御するにしても一瞬で食い破られるだろう。
「撤収!」
二人して慌てて昇降機に飛び乗り扉を閉め一階へと戻る。恐らくアレを倒さない限り地下一階の探索は出来ないだろう。先行した集団も恐らくは逃げ出したはずだ。
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「――という訳なんだけど、どうする?」
僕は地下一階での出来事を皆に報告し相談する事にした。ここに居られる時間も少なく危険を冒しても探索する価値があるかを問う為である。師匠には防御対策対策はあるかという事も確認してある。
ただ、対策は僕らの技量では無理な話であった。僕も和花も第八階梯の【力場障壁】は使えない。あの魔術であれば一斉射程度であれば止められるが無いもの強請りである。
リスクはあるがもう一つの手段を行使するという手もあるが……。
「それだけの守りを固めてるって事はお宝もあるんじゃねーの?」
思案しているとまずダグが切り出してきた。彼としては引退するにしろ継続するにしろここで稼げるだけ稼ぎたいという事だろうか?
「だけどリスクが高すぎじゃね?」
ダグの意見に否定的なのは健司である。健司の場合はダグと違い無理をする意味がないって言うのもある。
これフラグになってないよね? 安定を求めた途端に死亡フラグがって割とあるよね?
多重砲身回転連射火器というかサイズ的にミニガンの威力を良く知るオジサンズは反対だと口にする。
「ここであれこれと議論してても仕方ないし、一度最下層までいかない?」
男性陣の間で行く行かないで議論が続いていたところに和花が割って入る。
構造的に最下層は動力設備があるのではないかというのが和花の考えだ。瑞穂も同じ意見なのか無言で頷いている。
「よし、決めた。先に最下層に行こう」
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地下五階へと降り広場を抜けまるで迷宮のような構造を彷徨う事すでに半刻が過ぎていた。
しかも警備担当なのかきちんと武装した赤肌鬼の近縁種である緑肌鬼が度々襲ってきたのである。
緑肌鬼そのものはそこまで強敵ではない。やや田舎者赤肌鬼より強いかなという程度だ。一人前の戦士であれば十分に倒せる。
お陰さまでダグやオジサンズの技量はあらかた見当がついた。
「おいおい、これって構造的におかしくねーか?」
口にはしなかったけどなんとなくおかしいなと思っていたことを健司が口にした。
「この階層は【空間拡張】が施されているんじゃないかと思う。明らかに岩柱の直径より大きいね」
「しかも中央部へと向かう通路が見つからねーんだよなぁ」
「偽装扉を見落としたのかな?」
「怪しいところなかった」
和花の疑問を瑞穂が否定する。
「そうなると魔術的な何か……いや、待てよ……」
何か見落としてる気がする……。
「そうだ! 壁擬態型粘土状疑似生命体の存在だ」
そこで瑞穂も何やら思い至ったのかハッとなりガックリと項垂れる。恐らくだが怪しいと感じるところがあったもののスルーしたのだろう。
「ごめんなさい」
「いや、誰にでも失敗などはあるし、あまり自分を責めないようにね」
しゅんとなる瑞穂を宥めつつ僕は魔法の鞄から冒険者必須のアレを取り出す。
「これで壁や床を叩きながら進もう」
そう、TRPGでお馴染みの10フィート棒である。
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昔、TRPGで盗賊が賽の目が振るわずに何も発見できずに終わったセッションがありました。あの時間を無駄にした感は今でこそ笑えますが当時はプレイヤー内で結構尾を引きましたね。




