27話 最終試験②
2023-09-11 ちょっと文章を改変
ぱっと見た限りで赤肌鬼が20匹はいる。
ざっと見た感じで50人規模の村だと思うのだが、それを20匹程度で襲い掛かるって事は、村の中での戦闘要員が少ないことを認識してるって事かな? それもあるけど、新人冒険者を2度撃退した事で気が大きくなっているんだろう。
本来は臆病なで無秩序な赤肌鬼だけだここまでの数で動くことはない。この人数を制御できる知能の高い上位種がいる。
「どこかに司令塔の上位種がいるはずなんだけど…………」
そう呟きつつ周囲を見回す。
既に健司が手近な赤肌鬼に三日月斧を振り下ろしているのが見えた。
何人かの村人も防戦しているが勢いに飲まれているのか手こずっている。赤肌鬼達の怖いところにはその勢いがある。こういう時の赤肌鬼は素人や経験の浅い人だと手に負えないことが多いと師匠が言っていた。
まずは司令塔を潰したいところだけど…………。
「見つけた…………」
師匠に言われた通りで、そいつは他の赤肌鬼と違っていた。特別に体格が大きいわけではないが、身に着けているものが他の赤肌鬼より豪華なのだ。
そいつは燃え盛る住居の傍で何やら指示を飛ばしているが、赤肌鬼語は理解できないので意味不明な叫びにしか聞こえない。
僕は片手半剣を抜き、そっとそいつへと近づいていく。
そいつはまだ僕に気が付いていないようだったが、僕の視界に映ってなかった一匹の赤肌鬼が行く手を塞いできた。どーやら司令塔である赤肌鬼呪術師の警護役のようだ。
普通の赤肌鬼より若干体格の良いそいつの事も師匠から聞いている。赤肌鬼剣士だ。先祖返りだが上位種ほど賢いわけではない。
普通の赤肌鬼より剣を取り扱えて性質が悪いと聞いている。
実際に赤肌鬼剣士の斬撃は鋭く、ただ武器を振り回してるだけの赤肌鬼とは違う。
明らかに剣術の初歩は心得ているようだ。
僕はと言えば、まだ師匠のように器用に動きながら魔術は使えないので、威力重視ということで片手半剣を両手持ちにする。
小剣の構え方扱いはそれなりだが、やはり赤肌鬼というべきか堪え性がなく片手半剣を正眼に構えたまま動かない僕に焦れたのか赤肌鬼剣士の方が先に動いた。
しかし互いの攻撃範囲を把握できてないあたりが赤肌鬼と言うべきだろうか?
攻撃が届く前にこちらの一振りによって絶命した。
肉を割き骨を断つ感触は気分がいいものではないな————。
「あっちぃっ!」
戦闘中に思案とか間抜けもいいところである。
視界の端に赤い火線が見えたと思った時には胸に命中していた。
赤肌鬼呪術師の存在を忘れていたわけではないが、精霊魔法の発動条件を失念していた。
幸い命中した箇所は硬革鎧の部分だったので被害は少ない。【炎弾】が命中した際の火の粉が熱かっただけだ。
赤肌鬼呪術師の傍に炎があった時点で警戒しておくべきだった。
傍の家屋の炎が不自然に揺らめく。
まずい。また【炎弾】を唱えてる。
ダッシュで赤肌鬼呪術師へと向かうが間に合いそうもない。
「くそっ」
走りつつ半ば自棄糞で胸の投擲短剣を右手で投擲する。その距離1.5サートと有効射程ギリギリだったが赤肌鬼呪術師は慌てて避けた。
逃げようと慌ててこちらに背を向ける所を左手に持つ片手半剣で横薙ぎに斬る。
服と共に肉を割く嫌な感触が左手に残る。
赤肌鬼呪術師は背後から斬られた勢いでそのまま転倒する。
「殺生は好きになれないが、お前らとは永遠に分かり合えないからな…………」
理解していないだろうと思いつつもそう呟き片手半剣を両手で持ち上段に構える。
赤肌鬼呪術師がこちらに向かって何やら口にしているが通じない。たぶん命乞いなんだろう。
「……………………はっ」
唐突な雑念で意識がそっちにいってた。そして赤肌鬼呪術師はと言えばヨロヨロと距離を取ろうと這いずっていた。
「くそっ! 【雑念】の魔法か!」
あっさり魔法にかかってしまった事にイラっとして八つ当
生物の感情を司る精神の精霊の一種であるを用いたたりのするかのように片手半剣を振り下ろした。
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挨拶も兼ねて村長に挨拶に行った。
流暢な公用交易語で僕らを迎えてくれて、被害が軽微だった事を感謝された。
被害が出たことを詫びたところ、
「赤肌鬼20匹に襲撃されてこの程度の被害なら軽微だ。気にするな」
と村長に気を使われてしまった。
その後は夕飯に招待され、前任者が4日前に森に入ったきり戻ってこないとの情報を得た。
村在住の狩人によると村はずれの森の中に洞窟があるそうで赤肌鬼共はそこを巣穴にしているのではないかという事だ。
四日前?
馬車などでも往復二日かかるんだけど、その割には随分と依頼の再掲載が早いな。
そのあたりの事を質問すると、森に入った翌朝に血塗れの革鎧を狩人が見つけたそうだ。大きな森ではないしこれは返り討ちにあったなと判断したらしい。
聞いた限りでは、もう巣穴に残っている赤肌鬼は多くても10匹くらいではなかろうかとの事だ。
既に夜だが、ここは一気に攻めるか?
「みんなはどう思う?」
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