表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
282/678

264話 砂塵の迷宮へ④

 疾竜(フェルドラ)が選ぶ主人(マスター)の基準がよく分からん。


和花(のどか)に関しては一番軽い瑞穂(みずほ)二人乗り(タンデム)してもらうか……」


 いつまでも考えていても埒もあかないので代金として一頭につき3万ガルド(金貨30枚)、七頭なので21万ガルド(金貨210枚)を支払い世話の仕方や乗り方などを三日かけて習う事になった。

 安めの魔導速騎(マギスピーダー)1万ガルド(金貨10枚)な事を考えるとかなり高額にも思えるが、魔導速騎(マギスピーダー)も維持費が結構かかるし騎体寿命は安物だと五年くらいな事を考えると寧ろ安いのではと思ってしまう。


 馬具ならぬ竜具の準備の準備などに半日かかるとの事で本日は一旦戻って翌朝から騎乗訓練となる。


「取りあえず今日の寝床(宿屋)を探そうか」

 と宣言して探し始めたものの意外と数がない。交易路(トレド)沿いの都市だからもっと宿屋(ロキャンダー)があってもおかしくはないのだけど……。


 平台型(プリツク)魔導騎士輸送機マギキャバリエ・クラディアント居住区(キャビン)は本来は六人でも手狭に感じる空間(スペース)なので宿屋(ロキャンダー)を探さないと荷台(カーゴスペース)の空きスペースで寝袋を使うことになる。

 いまは乾期であり、時期的に夜でも293クロン(摂氏20℃)くらいのため過ごしやすそうなので寝袋でも良いかと思いはじめていた。


 上位地霊族(ハイドワーフ)であるバルドさん以外は暑さに対して耐性もなく師匠とメフィリアさんは平然としているがこれには訳がある。

 師匠が身に纏っているのは魔法の工芸品(アーティファクト)適温の外套(サーマル・マント)と呼ばれる【温度管理テンプレチャー・コントロール】の施されたモノなのだ。


 正直言ってズルい。


 一刻(二時間)ほど歩き回り分かった事は宿屋(ロキャンダー)の数自体が少なく、代りに貸天幕(ゼルト)屋なるものが多い事だ。

 もう面倒だし野営で良いかと思い始めたのは木柵の外にポツポツと天幕(ゼルト)が並び出したのを見たからだ。


 僕らも騎内倉庫(ストレージ)から天幕(ゼルト)などを持ちだし平台型(プリツク)魔導騎士輸送機マギキャバリエ・クラディアントの傍に設営を始める。

 防衛軍のオジサンたちは流石に訓練されており手早く設営が終わってしまった。この人たち、言語の問題さえ解決すればこの世界で生きていくのに苦労はしなさそうな気がする。


 夜営の基本は三交代制だ。術者(キャスター)を六時間寝かせ精神的疲労を抜かせる。二交代にして全員が6時間睡眠とか基本的にはあり得ない。

 何故なら設営準備や後片付けなどの時間を含めると動ける時間が大幅に減ってしまう為だ。そうなれば訓練なども出来なくなる。

 三交代で一番つらいのが中番(深夜帯)である。三時間寝て三時間野営して三時間寝るというサイクルだ。

 さて、僕と和花(のどか)遅番(早朝帯)になった。今回は警護用に多脚戦車コーソー・ラオーソーグは持ってきていないので、一応安全面の為に防犯魔術である【雷鎖網(ショックアレスト)】、【星の加護(スター・ワード)】、【防虫(ペスティシダー)】を周辺に施しておく。


 そして予想以上に疲れたのか天幕(ゼルト)に入りいつの間にか眠ってしまった。


 起こされたのは一の刻(二時)を少し過ぎた頃だった。僕らと入れ替わるようにおじさん達が仮眠に入る。


 周囲には結構な数の天幕(ゼルト)があり見張りとか居なくても問題ないようにも思うのだけど、そう考えるのは僕がまだ日本(やまと)帝国人気質が抜けきっていない証拠なのであろうか。


 月明りだけで十分な明るさを確保している事もあり焚火はしていない。こういう一面砂しかないような地では焚火に用いる薪も安くはないのだ。


 和花(のどか)と会話もなく一刻(二時間)ほどが過ぎ去った。沈黙を破ったのは和花(のどか)であった。


(いつき)くん、誕生日おめでとう」

 そう言われて自分がそろそろ誕生日を迎えたのだと思い出した。こちらの世界の暦では秋の中月(11月頃)の中週が僕の誕生日となる。これで僕も17歳となったわけだ。


「ありがとう」

「それと……これ、瑞穂(みずほ)ちゃんと用意したの」

 そう言って魔法の鞄(ホールディングバッグ)から取り出したのはかなり豪奢の刀装の施された一振りの打刀(かたな)であった。


「バルドさんに打ってもらった白鞘の打刀(かたな)があったでしょ? お父さまから頂いた高屋(たかや)家の(ガード)を付けてきっちり刀装するんだって言ってたやつ」


 刀身はオマケというか模造刀なので刀身を入れ替えて使って欲しいとの事であった。打刀(かたな)は手入れの問題もあるので冒険者(エーベンターリア)稼業では使いにくいのではと散々聞いている筈である。ただの豪奢な品ではないという事か。


「折角、(いつき)くんと【簡易的な(クリエイト・)魔法の(マイナー・)工芸品作成アーティファクト】の研究をしてるからそれを生かしてみたの」


 かなり複雑な技法を用いて複数の効果を持たせることに成功した品との事だ。後で知識の共有をしなくては!


 【品質保全(クバリテット)】によって切れ味が落ちず【形状保全(シェープ)】によって刃こぼれが発生しても時間を掛ければ修復するといった効果がある。基本的には手入れ無用だ。


 【高位威力強化ハイ・エンチャント・ウェポン】によって切断力が強化されるだけでなく、魔力(マーナ)を帯びたモノでなければ打撃を与えられない存在にも効果がある。


 【魔力増強(エンハンス)】によって魔戦技(ストラグル・アーツ)の【練気斬(リスタ)】の威力が増加する効果も付加されている。


 万が一武器を取り落としてもによって【所持品召喚(アポート)】手元に戻ってくる。


 【調節(アジャスト)】によって刀身のサイズが想定と違っていても勝手に最適化されるのである。


 (つか)には呪符魔術(マーカー)の【放出抑止(デテランス)】の呪符(ふだ)が貼られている。こいつは僕の恩恵(ギフト)である開放(リリース)による急性(アカタ)万能素子(ズ・マナ・)欠乏症(テコート)をギリギリで防ぐリミッターの役割を果たす。

 虚無の砂漠で【自爆ファイナル・ストライク】で失ってしまった師匠から貰った片手半剣(バスタードソード)の代わりにという事だろう。


「……本当にありがとう。でも、よくこれだけの効果を付与(エンチャント)出来たね……」


 改めて礼を述べたと同時に素直に感心したのだ。【簡易的な(クリエイト・)魔法の(マイナー・)工芸品作成アーティファクト】という儀式魔術は効果を一つ追加するごとに難易度が飛躍的に上昇する。


「う、運が良かっただけだよ。瑞穂(みずほ)ちゃんにも手を貸してもらったからお礼を言ってあげてね」


「勿論だよ」

 そう反したのだが、なぜ(ども)ったかが気になる。恐らく問い詰めても絶対に口を割らないだろう。ただ欠陥品を渡すような性格でもないから性能面に関しては信用している。

 運が良かったと言っているが推測するに数多くの失敗作の末の完成品ではないかと思う。


「これは大事に使わせてもらうよ」

 そう少なくとも【自爆ファイナル・ストライク】を用いる事には使わないと心に決めた。


「うん」


 そしてまた静寂が戻る。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲


 朝食後まだ気温が高くならないうちに宿営地へと向かい疾竜(フェルドラ)の騎乗訓練を開始する。

 手綱(たづな)(サドル)(あぶみ)の付け方、乗り方、降り方、騎乗中の命令の出し方、他にも最低でも一刻(二時間)は連続して騎乗出来るようにすること。余裕のある者は騎乗戦闘の訓練をする。


 このレセップス砂漠は砂蟲(サンド・ウォーム)の他に異種族の蠍人(アンドロスコルピオ)という上半身が(トゥル)族、下半身が蠍という種族が存在する。好戦的な種族だという。他にも砂漠蜥蜴人デザート・リザードマン竜人族(リル・ドラケン)妖精(アルヴ)族の炎霊族(アリル)などと遭遇する可能性があると説明される。


 それらの対処法の説明などひと通り聞き疾竜(フェルドラ)の運用上の注意点をされる。

 毎日ほどほどに運動させる事、水はあまり飲まないが食事は可能な限り与える事。空腹が続くと命令を聞かなくなるばかりか襲われることもある事などの注意を受ける。他にも最大戦速で25ノード(約93km/h)ほど出るので振り落とされないように注意することなどだ。


 四日ほど留まり慣熟訓練も予定通りに終わり、和花(のどか)に付き従うおじさん達の装備を決める為に職人街へと向かう。


 防衛軍の装備は補充も修理も出来ないから以後は使わないものとして仕舞っている。武器に関しては防衛軍支給の戦闘用大型ナイフの他に当人たちの希望で機械式弩コンパウンド・クロスボウを十字路都市テントスで事前に購入してある。僕らの世界だと狩猟用の飛び道具(ミサイルウェポン)(バールアング)鹿(ラサー)すら貫通する威力を持つ。ただし整備や維持が大変なので使い手は少ない。


 防具は革鎧(ソフトレザーアーマー)硬革鎧(ハードレザーアーマー)の二択となるのだが、動きが微妙に阻害されることを嫌って彼らは革鎧(ソフトレザーアーマー)を選択する。


 今回は僕と健司(けんじ)は訓練用の硬革鎧(ハードレザーアーマー)である。

 失った僕の武器の変わりはバルドさんが打った打刀(かたな)に先日誕生日プレセントとして貰った刀装を移植した打刀(かたな)である。予備として階段都市モボルグで購入した深紅の刀身の打刀(かたな)も提げている。騎乗戦闘するなら柄の長い武器も欲しかったが使い慣れない慣れない武器をぶつけ本番で使うのも愚かと思って見送った。


 空いた時間で旅装を買い揃え、その日は早めに寝て翌一の刻(二時)に起床し出発する。地図によると目的地までは三日ほどだという。

四連休で書き溜めするぞと思っていたけど、気が付けばひたすら横になっていただけだった気がする。


皆さまは有意義に過ごせたのでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ