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215話 虚無の砂漠①

2020-05-05 誤字報告に合わせて修正

「な~~~~~んか……一面、砂、砂、砂、砂、……たまに岩しかないねぇ……」

 そんな和花(のどか)のボヤキが左側から聞こえた。

「そりゃ、目の前は砂漠だしね」

 取りあえず僕は振り向きもせずにそう返しておく。


 ここは虚無の砂漠の外延部であり、僕らは魔導騎士輸送機(ザイドリット級一番艦)の艦橋上部の展望デッキから眺めている。


 展望デッキの高さ的にここから周囲を見回せば、目立った障害物もほとんどなくなく地平線までの距離は約4.75サーグ(約19km)前後となる。

 見渡せるのだが、和花(のどか)がボヤくようになんにもない。

 唯一あるのが北にそびえる折れた白亜の塔(クレーデターム)や遥か東の白竜山脈くらいだろうか?

 目的地は遥か75サーグ(約300km)も先である。今夜ここで一泊したのちに北進する。


「それじゃ、戻って明日以降の話をしようか」

「うん」



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲


 指令所後ろの会議室にて超越(ユニーク)級の魔法の工芸品(アーティファクト)である神の視点ポント・ビスタ・ディ・ディウスを囲んで僕、和花(のどか)瑞穂(みずほ)健司(けんじ)、ハーンの他に船員代表でラーケン艦長(キャピタイン)女中(メイド)代表でアンナが参加している。


「まず、明日の日の出とともに虚無の砂漠へはいる。万能素子(マナ)濃度が9割を下回るから速度は――――」


 本来速度は原速(約15ノット)で運行が基本なのだが、この魔導騎士輸送機マギキャバリエ・クラディアントは大きすぎて減速や回避運動などに問題があり事故防止の為に街道などでは半速(約8ノット)で運行している。

 しかし、今回は周囲に人なども居ないし原速(約15ノット)で移動する事となる。ただし虚無の砂漠は他所と違い万能素子(マナ)濃度が奥へ行くほど激減していく。今度はそうなると万能素子転換炉(マナ・リアクター)の変換効率が極端に落ち性能が著しく低下する。

 行けるところまで進み、効率が落ちたら万能素子濃縮収容器(マナ・コンデンサ)から万能素子(マナ)を取り出す。限界に近い状態での運用テストも兼ねる。


 この虚無の砂漠の厄介なところは万能素子(マナ)がないので真語魔術(ハイ・エンシェント)やそれに類する道具が使えない。更に精霊もほぼ存在しないので精霊魔法(バイムマジカ)も使えない。嫌がらせなのか精霊を支配して連れていくと苦悶の声をあげて勝手に存在を消失してしまう始末なのだ。


 運の悪い事に僕らの一党(パーティー)聖職者(クレリック)はいない。

 いや、ピナがある日を境に草原の神(アムルダンデ)の声を聴いたと言い出し奇跡(ホーリー・プレイ)を発現させたのだ。

 ただ連れていくには良心がね……。

 亜人(ラトゥル)族とは言え10歳の少女を同伴させるのはなぁ……。立場的に来いと言えばピナは断れないしなぁ……。


 脱線してしまった。


 遺跡迄問題なく行けるようなら行く、ダメなら途中で停泊してもらうと言う形で話は落ち着いた。


 行ける場合は問題ないのだが、今回目指す遺跡がほぼ間違いなく未盗掘な理由が、砂漠横断の困難さからくる。

 もともと砂漠横断とか大変だ。だがこの虚無の砂漠は更に面倒なのである。先にもいったが真語魔術(ハイ・エンシェント)が使えない。一部の格安魔法の工芸品(アーティファクト)も機能しない。大半は徒歩で片道一週間(一〇日)以上かかる行程に嘆く。食料もそうだが特に飲み水だ。調査の事と帰路を考えると食料や水はひと月分ほど用意しなければならない。なんせ補給箇所がないのだから……。


 神の視点ポント・ビスタ・ディ・ディウスの視点を操作して周囲を探し回るも綠洲(オアシス)らしいものは見当たらない。一面砂か岩盤かってくらいだ。遺跡と言っても地上部分だけでも小さな村くらいある施設だ。一日や二日では調査は終わるまい。


 また道中は危険な巨大生物に襲撃される危険もある。奴らは普段はほとんど活動しないで砂中で仮死状態となっているが、振動感知によって餌を知覚し目を覚まし襲ってくるのである。


 この砂漠だと、足が速く機敏なうえに胴は長い体節に分かれ胸部に八本の脚、腹に無数の擬足、口には鉄のような大顎を持つ体長1.25サート(約5m)を超える砂走り(デザートダイバー)と呼ばれる生物や体長が2.5サート(約10m)を超える砂蟲(サンド・ウォーム)など危険すぎる生物が息を潜めている。


 過去にこの遺跡を目指して帰ってきたものは居ない。ただ……気になるのは、()()師匠たちが遺跡に手を付けていないと言う事実である。


 単に忙しくて日程が組めなかったとかなら良いのだが……。


 暫く万能素子(マナ)の変換効率が落ちると予想されるので無駄な魔導機器(マギテック)の使用を禁止する事、明日は夜間は停泊して様子見をするという感じで話は纏まっていく。


「――――以上で打ち合わせ(ミーティング)は終了する。ラーケン艦長(キャピタイン)とアンナは伝達の方を頼むよ。解散」


 未知の場所だし想定外の出来事はあるだろう。知識もないのに無駄に煮詰めても無駄だろうし、後は臨機応変(行き当たりばったり)の精神でいこう!



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲


 翌朝――――。


 砂漠と言えば昼は糞暑くて夜は糞寒いと言う感じだが、ここ虚無の砂漠は違う。昼と言えども炎の精霊の力が働いていないせいなのか温度は適温、風の精霊が居ないせいか空気は乾いていて無風、土の精霊が居ないせいか土地は乾いた砂だ。水の精霊も居ないので、雨も降らなければ綠洲(オアシス)すらない。夜は夜で氷の精霊が居ないので気温は適温だ。


「妙なところは幻想的(ファンタジー)だよねぇ」

 というのが和花(のどか)の感想だ。


 予定通り原速(約15ノット)で砂漠を航行している。僕は展望デッキから代わり映えしない砂漠をぼんやりと眺めていた。


「――?」

 何か違和感を感じた。


 二刻(四時間)ほど航行して頃に異常が起こった。突如ガクッと速度が落ちたのだ。

「何があった?」

 思わず傍の伝声管に向かってそう叫んでいた。

「急激な万能素子(マナ)濃度の減少で万能素子転換炉(マナ・リアクター)の変換効率が落ちました。万能素子(マナ)濃度四割を切っております」


 違和感の正体はコレか!

ようやく体調がある程度回復しました。

来週からの仕事の山積みを思うと憂鬱です。

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