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195話 階段都市モボルグ⑥

 ぐっすり眠り翌朝、いつも通り目覚め走り込みと柔軟後に朝食を摂る。だが日替わりテーブルに並んだそれは予想外のモノだった。

 燕麦(オーティム)をベースに数種類の細かくした乾燥果実(トロケンフラクト)種実(セーメン)類が盛られた深い大皿、牛乳(マイト)の大瓶とヨーグルト(ジョガーティ)の大瓶が並べられている。

 よーするにフルーツグラーノっぽいものに牛乳(マイト)ヨーグルト(ジョガーティ)をぶっかけて食ってねって事らしい。

 とにかく朝食に手間をかけないのが地霊族(ドワーフ)流らしい。


 朝食も終わり冒険者組合エーベンターリアギルドに書類を発行してもらおうかと思ったら手回しのいい事に師匠が昨晩済ませたらしくメフィリアさんから「はい、どうぞ」とにっこりと手渡された。

 それを受け取りメフィリアさんにお礼を言っておく。残念ながら師匠は別件でここを発っており数日は戻ってこないと言う。

 師匠の集団(クラン)の面子は昨夜の話で方針が決まり小型の収納箱(チェスト)を買いに走っている。

 予想以上に僕の案、収納箱(チェスト)に便座を取り付けそこに【入れ物(ポケット)】の魔術を【魔法封入スペル・エンチャントメント】して簡易トイレとする案が好評だったのだ。


 昨夜に商売しないのでやり方を教えてくれと押しかけられ必要な魔法陣(マギア)を教えたのである。

 やっぱどこの冒険者(エーベンターリア)も360度開放空間で踏んばりたくはないらしい。

 街道周辺とか周囲125サート(約500m)は障害物が何もないからねぇ……。


 予定が変わったけどやる事は決まっているのでまずは衛兵(セントリー)の詰め所に向かう。書類を提出し、衛兵(セントリー)を借りるのが目的だ。魔法生物(クリーチャー)の不法投棄は明確な違反行為であり逮捕案件なので手枷などを用意してもらい逮捕権のある衛兵(セントリー)に同行してもらう必要がある。

 ただこの案件は結構大事になっているようで衛兵(セントリー)が一個小隊三一名が同行する。それだけ大事という事だ。


 因みに似たような職で憲兵(ソティラス)というのがいるが、こちらは日本(やまと)帝国の警察に近い。衛兵(セントリー)は逮捕権を持つガードマンと言った感じだろうか? たまに逮捕権での手柄の取り合いで揉めるらしい。


 最下層から廃棄物(アブフォール)シリーズの確認をしつつ上層階の魔術師組合(メイジギルド)へ向かう段取りとなる。昨日は半日かけて八〇体も駆除したので今日は大していないだろうとタカを括っていたのだが……。


「なんでこんなにいるの?」

 昨日ほどではないけど一〇体以上はいるのである。だが悲しいかなメフィリアさんの前では鎧袖一触(がいしゅういっしょく)もいいところであった。


 もう僕らいらなくね? と思わなくもない。


 駆除しそこないの確認に来たつもりが総勢三六名で残敵掃討になってしまう。とにかく廃棄物(アブフォール)シリーズの数が異常に多すぎる。普通の駆除依頼は一体か二体程度らしい。


 これは個人の仕業ではなく魔術師組合(メイジギルド)の一部署、この場合は創成魔術(クリエイト)の学部全体が関与しているのではないのだろうかと小隊長(ザグファラー)が言ってきたが僕も同じ意見だ。


 半日近くかかって上層階までの掃討が終わり廃棄物(アブフォール)シリーズの昨日からの延べ討伐数は一一五体となった。

 魔法の鞄(ホールディングバッグ)に入っていたお茶と調理済み乾燥食品(インスタント食品)でお昼を済ませる。本来この国の習慣ではお昼は温かい食事を腹一杯に食べるのが基本なのだ……。

 そのせいなのか衛兵(セントリー)さんたちの目が血走っているように見える。食い物の恨みは怖いからなぁ……。


 ▲△▲△▲△▲△▲△▲


「――――以上の理由により強制捜査をさせていただく。 ……突入!」

 小隊長(ザグファラー)の号令の下、分隊(マンスキャフト)が各持ち場へと移動していく。

 突然の事に混乱する受付広場レセプション・スクェア小隊長(ザグファラー)以下二個分隊(マンスキャフト)二一名が創成魔術(クリエイト)学科へと向かう。僕らと受付広場レセプション・スクェアを封鎖する分隊(マンスキャフト)はそれを眺めつつ幾つかの魔術を行使して周囲を観察する。


「何があったんだ……」

官憲いぬどもが神聖な敷地を土足で踏み荒らしやがって……」

「嗚呼……無学な徒共に何故に貴重な勉学の時間を邪魔されなければ……」

「マズい……あれがバレたんじゃ……」


 をいをい……小声で話してるつもりだろうけど【聞き耳(ヒャノイズレベル)】を唱えた僕には全部聞こえているぞ……。

 ここに残っている分隊長(グラペンファラー)受付広場レセプション・スクェアにいるとある魔術師見習いメイジ・アプレンティスを連行するようにお願いする。


 ほどなくして逃亡しようとする魔術師見習いメイジ・アプレンティス握り付き打盾(トンファーシールド)によって殴り倒されていた。彼らの使うその武器は本来は角棒状なのだが、楕円形の盾のような形状をしており盾としても打撃武器としても使えると言う。もっとも回旋棍(トンファー)のように握りを一瞬緩めて回転させて打つ技法は、一部の熟練者のみの技らしいけどね。


 引きずられてきた魔術師見習いマージ・アプレンティスに早速だが火の玉ストレートな質問をぶつける。

「きみ、違法行為をしてるよね? 答えは”はい”か”いいえ”で答えてね」

 当たり前だが、杓子定規に法に触れないで生活している者なんてほぼ居ない。大小関わらずに捕まっていないだけで抵触していることが多い。追及を躱すなら”はい”と答えるべきである。


「……はっ、僕が違法行為などするわけがないだろう」

 連行された魔術師見習いマージ・アプレンティスはそう答えたが……。

 僕は左隣りの和花(のどか)をちらりと見る。

 彼女は首を横に振る。事前に【虚偽看破(ファゾム・ライ)】をかけて貰っていた。僕がかけておけば良かったのだけど、魔術には決まりがあり同じ系統の違う魔術は効果が上書きされてしまう性質があるのだ。【虚偽看破(ファゾム・ライ)】は”精神魔術”で【聞き耳(ヒャノイズレベル)】は”拡大魔術”なのだが、問題はこの二つは同じ”探知系”魔術なのでどちらかしか効果がないのだ。


「いまの君の発言は嘘だね。嘘を重ねると罪状が重くなる事は君も知っているよね?」

 魔術師見習いマージ・アプレンティスは首を必死に縦に振る。どうやら僕の言いたいことが伝わったようだ。

 前に魔術師組合(メイジギルド)に行ったときに確認したが長衣(ローブ)についている飾り紐の色で所属の学科が分かる仕組みなのだ。彼は基本魔術(ソーサリー)を専攻している。本来であれば無関係なのだが、僕はある仮説を立てて挑んでいる。

「きみは、魔術師組合(メイジギルド)の帳簿を管理しているね?」

 そう質問すると魔術師見習いマージ・アプレンティスは「はい」と口にする。

「きみは、在庫管理に関与しているね?」

 そう問うと、「……はい」少し間をおいて肯定した。彼の挙動は落ち着きがなく、その顔色はかなり悪い。和花(のどか)を見ると首を縦に振る。


 僕の予想では犯行はほぼ間違いなく創成魔術(クリエイト)学科の誰かだろう。学科ぐるみではないだろうと思った理由は組織単位で動けばもっと巧妙にやるだろうと判断したためだ。個人ないし複数人の犯行だとして外部に協力者がいる可能性も考えた。


 初っ端から外部協力者に当たった可能性があるのは楽でいい。在庫管理か会計管理を疑ったのには訳がある。

 廃棄物(アブフォール)シリーズだが、こいつらは処分をする際にいくつかの薬品を用いて処分する。結構高価な薬品だ。

 犯人は在庫管理担当を懐柔して処理に使ったと偽って薬品を横流ししたか、会計担当者も巻き込んで購入したと偽ったかだと思ったのだ。

 そして廃棄物(アブフォール)シリーズは不法投棄である。もしかしたら金属流体金属生物(テカッティー・コブ)が出たと言う話に便乗したのかもしれないが、それはきっちり専門家にお話(じんもん)してもらおう。


 そうこうしているうちに創成魔術(クリエイト)学科に出向いた分隊(マンスキャフト)魔術師(メイジ)達を引き連れて戻ってきた。


 さて、この中に主犯がいると楽でいいんだけどねぇ……。

年始は毎年仕事が溜まっていて余裕がないので更新ペースが落ちます。

居るかどうかは定かではありませんが当作品を楽しみにしてる方には大変ご迷惑をおかけいたします。


一応今月は週二ペースはキープしたいとは思いますが……。

ダメなときは体調を崩したんだと思っていただけると幸いです。

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