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177話 研究……の筈が

 八半刻(一五分)程して和花(のどか)たちがトレイを持って戻ってきた。

「一緒に食べよ」

 そう言って和花(のどか)がトレイを差し出す。お礼を言って受け取り夕飯のメニューを確認する。

 野菜のポタージュに硬質乾酪(チーズ)に、(シガー)肉の厚切りステーキ、白麺麭(リーブ)であった。野菜のポタージュは庶民の定番だが、工場生産とは無縁な硬質乾酪(チーズ)は保存も利く半面そこそこ高価だ。豚肉は結構安いとはいえ厚切りで360グリム(約300g)はあり塩胡椒も利いている。白麺麭(リーブ)はふんわりもちもちでお貴族(ノーブル)様が食べるような品質だ。内容だけ見ればかなり高価である。飛び地とはいえウィンダリア王国だからこそだろう。


 胃袋を掴まれるとホント他所の国に行くのが嫌になるんだよねぇ。とはいえこの中継都市ミルドでの永住は考えられないのだけど。


 味、量ともに満足して油断したのか、気が付けば疲れ果てて片付けもせずにいつの間にか眠っていた。目が覚めるとトレイは片付けられており二人ともどこかに出かけたのか誰もいなかった。


「あ、この時間だと公衆浴場か」

 この世界って夜は遊ぶところがないからねぇ。基本的に寝るか酒かお風呂か異性かって感じだろうか。だが取りあえず僕は研究だ。


 今回の研究対象の【魔法封入スペル・エンチャントメント】のキモは呪句(タンスラ)でも術式(グラニ)でもなく魔法陣(マギア)だ。ここを書き換えれば良いのだけど、問題はどう書き換えるか、だ。書き写したメモを読み直すとそれは間違いないと言うのは分かるのだが法則が見えない。


「よし、師匠に聞こう!」

 そうと決まればメモを置いて師匠の部屋に突撃だ。


 ▲△▲△▲△▲△▲△▲


 何故か牢獄亭の裏庭で木刀を杖代わりにフラフラと倒れそうな身体を支えている。周囲はメフィリアさんが展開した【光源(ライト)】の白い明かりが照らされており、目の前には無防備に立つ師匠が居る。

 相談に行ったはずが何故か近接戦の訓練になってしまった。魔術の実践をするには僕の呪的資源(リソース)は回復していなかったのだ。

 何時になっても掠る事すら出来ず既に50回ほど木刀で打ち据えられている。これで手加減されているというのがなんとも情けない限りだ。


 だがこれは別の意味での訓練でもある。寸止めでなく打ち据えられたことに意味がある。戦士に必要な要素として肉体的な素養は当たり前だが打たれ強さ(ヒットポイント)は後天的に鍛えるものだったりする。極端な話だが戦士(ウォーリア)とはどれだけ我慢強いかが問われるのだ。痛みに対して慣れさせる、我慢できるようにするのも訓練だったりする。

 どれだけ技術が優れていても一撃で沈んでしまっては意味がない。


「今日はこれくらいにしよう」

 師匠がそう宣言して稽古は終了となった。そしてメフィリアさんの奇跡(ホーリー・プレイ)によって傷や痛みがすべて癒される。


 その後は師匠の部屋に戻り、先ほどの訓練の問題点の洗い出しを行い、そのまま魔術(ギャルダー)理論の講義へと移る。十一の半刻(二三時)を過ぎた頃にようやく解放された。


 自分の部屋に戻ると【光源(ライト)】が灯されており和花(のどか)が教師役となって瑞穂(みずほ)魔術(ギャルダー)講義を行っていた。

「おかえりなさーい。搾られてたね」

 ヨロヨロの僕を見て和花(のどか)がクスクスと笑いつつ【洗濯(クリーニング)】で綺麗にしてくれる。

「大丈夫?」

 瑞穂(みずほ)も心配しているようだが、そんなに酷く見えるのだろうか?

「二人とも、ありがとう。ところで何をしていたの?」


「報告。第三階梯の魔術(ギャルダー)が使えるようになった」

 僅かに表情(かお)を綻ばせつつ瑞穂(みずほ)がそう報告した。これはめでたい。頭を撫でようと手を伸ばした時にソレに気が付いた。


(ギャットー)?」

 瑞穂(みずほ)の足元に小さな黒猫が居たのだ。

「うん。私の……」

「ペットは――」

 うちじゃ飼えないぞと言おうして気が付いた。

使い魔(ファミリア)か……」

「ん」

 僕の問いに頷く。魔術師(メイジ)は第三階梯になると【使い魔召還(コール・ファミリア)】で自分の使い魔(ファミリア)を持つのが習わしだ。

 僕や和花(のどか)はそれどころじゃなくて忘れていたけどね。

「……という事は瑞穂(みずほ)も晴れて正魔術師(メイジ)か。おめでとう」


 瑞穂(みずほ)の頭を撫でつつふと思った。なんで黒猫(ギャットー・ニロー)なんだろうと。


 そう聞いたら、「お風呂帰りに拾ったから」と答えが返ってきた。最初は和花(のどか)使い魔(ファミリア)にと思ったらしいのだが、瑞穂(みずほ)に懐いていてたので丁度いいのでって事で【使い魔召還(コール・ファミリア)】を使ったそうだ。


 残念だが使い魔(ファミリア)になったからと言って寿命が延びたり喋ったりできる訳ではない。多少は知能が上がったりはするとは言われているけど。基本的には主人(マスター)使い魔(ファミリア)精神感応(テレパス)で意思の疎通を図る。夜目も利くし偵察要員として使えそうではある。


 明日は瑞穂(みずほ)の正魔術師(メイジ)祝いでもしようって事で一致し僕らは寝ることにした。


 ▲△▲△▲△▲△▲△▲


 朝起きて訓練の一環で軽く朝を流した後に朝食を摂る。今日のメニューは焼き立てのライ麦パン(ラグリーブ)と薄く切った燻肉(ベニウー)目玉焼き(スピエゲレェ)に葉野菜が付いて汁物(ブーラッド)として玉蜀黍(ズウィーベル)のポタージュ、よーするにコーンポタージュがついてきた。


 瑞穂(みずほ)のお祝いは師匠やメフィリアさんも呼ぶとして健司(けんじ)と連絡が取れない。多分だが金もあるし妓館(ブロセル)公娼(トレド)のおねーさんと楽しい事をしているのだろう。ゲオルグはいつも通り戦の神(ゲラン)の神殿だろう。


 朝食後は使い魔(ファミリア)と戯れる瑞穂(みずほ)を眺めつつ部屋で和花(のどか)魔法陣(マギア)の改良作業に精を出す。

 昨夜の魔術(ギャルダー)講義のおかげで何通りかの改良した魔法陣(マギア)が出来上がった。実践するのは昼食後でいいかな。

どなたか存じませんがブックマークありがとうございます。


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