157話 遺跡と言えば入るしかないよね?
前話は大変お見苦しい表現があり申し訳ありませんでした。
「お前さんは優しいんじゃな。だが赤肌鬼と儂らは相容れんのじゃよ」
ゲオルグがそう言って気を使ってくれるが何の慰めにもなっていない。頭では判っているんだ。赤肌鬼共が極めて利己的で邪悪な存在だという事は。大昔に魔術師が実験で赤肌鬼を数世代教育を施したそうだが上っ面は繕えても本質的な部分は変えられなかったという。
僕は無抵抗な怯える赤肌鬼の幼子四匹に無言で【魔力撃】を四発放った。
『僕には殺せません』という事は出来ただろうが、幼子の赤肌鬼の末路は飢え死にか成長して人を害する存在になるかの何れかだ。問題を先送りにしてどこかで被害が出ても自分には関係ないと嘯く事も出来たかもしれないけどね。野盗に襲われた際に捕らえるかその場で殺すかで迷う事に似ているが、赤肌鬼だからまだマシだったと思う事にしよう。
両頬を叩き気分を入れ替える。
「報告に戻ろう」
皆を見回しそう宣言する。瑞穂の先導で七の刻を過ぎた頃にルーファス村へと戻った。
討伐証明を見せて説明をし、駆除は完了したと村長に報告を終わらせ依頼完了証を貰う。まずは一つ目に依頼が終わった。
移動を含めて正味三日で終わってしまった。予定が早まったことはいい事だ。行動に余裕が持てる。
次の依頼熟すために周辺地理を再度頭に入れる為に準備を始める。
触媒の【魔化】された白い布を地面に敷き【幻影地図】の魔術を発動させる。
立体投影された周辺地図を縮尺を変更し、この村と環状列石とランサス村が映し出されるようにする。
「瑞穂」
彼女に声をかけるとトコトコと小走りでやってくる。
「ん」
そのまま僕を見上げ僕の指示を待つ。本当に犬みたいな子だ。
うちの一党の誘導役である彼女に今後のルートの説明をする。採取予定のネルド草の推定位置とさらに次の環状列石の位置関係の把握。普通に歩けば環状列石までは三日の距離だが採取の件があるので森の中での活動は最大で三日と決めておく。
採取は最悪の場合は環状列石の調査の後に済ませればいい。
「みんな出発しよう」
いつまでウジウジしていても仕方ないので気を取り直し出発を宣言する。
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依頼を受けて六日目だ。既に森で二泊している。出来れば今日中にネルド草の採取を終えたいが手元には二株しかない。
「これは同業者がいるなぁ……」
思わず呟いてしまったが、瑞穂の意見を聞くと数日以内に採取された形跡とウロウロと素人、言い方を変えると森林活動のイロハを知らない者が歩き回っている形跡があると言う。
瑞穂も野外活動はとか思ったけど、この娘は一を知れば十を理解する聡明な娘だ。短い間だったけど上位森霊族のフェルドさんから教わった事が役に立っているようだ。
ぶっちゃけずるかよと思うが、その恩恵を受けている身としては頭を撫でつつ褒めることも忘れない。
結局ネルド草は見つからずに更に一泊した。森林内での活動に若干だが疲弊の色が見える。特に美優が酷い。肉体的な問題は和花と瑞穂がこっそり精霊魔法の【体力回復】を施しているのを見て見ぬふりをしているけど、精神的な疲弊度が結構酷そうだ。まぁ……お花摘み問題は直ぐに慣れろって言っても無理だよねぇ…………。
翌朝からはネルド草を探しつつ森を出る経路を進むと先頭を歩く斥候の瑞穂が手を挙げて”止まれ”と手信号で告げる。
「何があった?」
「あれ」
瑞穂に近づき問うと彼女は前方を指し示した。
そこには白馬が倒れていた。ただし焼けただれ無残な姿となっているが。しかしなんでこんな森の中で白馬が?
「樹くん、あの白馬って、もしかして一角獣じゃないの?」
和花にそう指摘されてよく観察すると…………。
「角を折られた一角獣か」
その白馬には確かに額にあたる部分に丸い痕がある。そうなると焼け爛れた痕は【火球】かな? 周囲の焼けた痕跡から見ても間違いなさそうだ。
「刺し傷や切り傷があるし、冒険者崩れの密猟者一党だと思うが、一角獣を狩るのは立派な犯罪行為だ。
「まさかと思うけど…………」
「前に逃がした密猟者だろうな」
僕が口にする前に健司に先に言われてしまった。あの時は一角獣の角は取り返したが、戦士と闇森霊族と魔術師の他に負傷させたが闇司祭を取り逃がしている。
「あの密猟者達がこの森を彷徨ってるとか勘弁して欲しいなぁ」
そうボヤかずにはいられなかった。
もっとも連中も角を確保したのならもうこの場には居ないだろうけどね。ともかくこの一角獣の死骸は埋めてやろう。
地霊族のゲオルグが中心となって男連中で一角獣一体が収まる深さ0.5サートほどの穴を一刻で掘る。流石は地霊族だと感心してしまった。ゲオルグが地霊族の美少女だったら頭を撫でていたところだ。
埋葬が終わり一同は北へと進んで行く。運がいい事にネルド草を追加で五株確保できた。これで七株となる。反則だが魔法の鞄に放り込む。
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その後は特にトラブルもなく十日目の昼に小高い丘の上にある環状列石の傍に到着した。
「思ったほど大きくないのねぇ」
そう感想を口にするのは和花だ。彼女の比較対象は英国の有名な環状列石の事だろう。
僕らのいた世界では環状列石と言えば、円陣状に並んだ直立巨石とそれを囲む土塁からなりる先史時代の遺跡の事で、馬蹄形に配置された巨大な門の形の組石五組を中心に、直径約100メートルの円形に数メートルの高さの三十個の立石が配されている。
ここにあるのは馬蹄形に配置された巨大な門の形の組石五組のみだ。中心に磨かれた玄武岩だろうか? 円形の舞台のようなものがある。
「早いけど、ここで野営の準備をしよう」
僕の指示でそれぞれが準備に取り掛かる。女性陣は近くで石を拾い集めて竈作りを行って貰ううちに男性陣は少々離れたところまで足を延ばして薪となる枯れ枝を回収しに行く。
面倒なので昼食はちょっとお高い干し肉を齧り水袋のまずい水を流し込んで終わりである。
その後は夜中まで暇なので、健司とゲオルグは走り込みや軽い模擬戦を行い、僕ら四人はそれを横目に魔術の勉強である。意外だったのが美優だった。既に精霊という存在を認識できると言う。更に呪文書片手にであれば初歩の魔術が発動するレベルなのである。実戦では使えないがサポート要員としてなら何とかって水準だ。
ただ僕らについてくるなら自衛くらいできないと冗談抜きで厳しい。蘇生や致命傷を治すのは簡単ではないのだ。師匠とかは気楽に使うが本来であれば出来ないと思ったほうが良いレベルなのである。
気が付けば夕飯の支度をする時刻となっていたので毎度おなじみの硬めのライ麦パンに乾燥野菜とちょっとお高い干し肉の汁物で腹を満たし、双月が中天へと差し掛かるのを待つ。
本日は雲一つない空で双月の明かりが周囲を照らし結構明るい。そして夜半になり双月が中天に懸かるころ変化があった。
「お、おい」
健司のその声に釣られて天を見上げていた目線を下げると環状列石の中心の磨かれた玄武岩と思しき円形の舞台が青白く魔力のオーラを放ったのだ。
もしやと思い竈に用いた石を光り輝く円形の舞台へと放り投げる。
放物線を描いて飛んだ石は音を立てることなく光り輝く円形の舞台へと吸い込まれるように消えた。
「【転移門】みたいだね」
さて、どうする?
見回すとみんなが僕の決断を待っている。ここで帰って報告しても一応報酬は出る。だが、冒険者たるもの行くしかないでしょ!
「みんな行くよ!」
そう声をかけ一党の頭目たる僕がまず最初に飛び込んだ。
以前にTRPGで似たようなネタをやったことがあり、この四つの依頼はタイムテーブルに沿ってイベントが発生しています。主人公たちの行動如何では別の展開もあり得たのですが、流石にifも書くべきなのか? 迷うところです。




