表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
164/678

152話 初心に返ってみる

2019-11-01 誤字訂正

2019-11-02 サブタイ変更

 冒険者組合エーベンターリアギルドへ寄ることとなった。ある意味冒険者(エーベンターリア)にとって基本装備をまだ買っていないからだ。組合(ギルド)の手前?にある冒険者向けの雑貨商に立ち寄り必要装備を見繕っていく。

 先ずは水袋(ビーコット)だろうか? 実はこれ(オブス)(レム)の胃袋や膀胱で造られているんだよねぇ。最初に師匠から説明されたときは生理的に飲むのを躊躇ったほどだ。大きいもので6リーター(約3ℓ)サイズだがコレは重すぎるので2リーター(約1ℓ)のモノを購入する。東方(オリエント)は一日歩けば水場が数か所あり、あまり大きな水袋(ビーコット)は必要としない。だが、場所によっては現地人ですら運が悪いと腹を下す。一応だが約2リーター(約1ℓ)の水を生み出す【水作成クリエイト・ウォーター】という魔術(ギャルダー)があるが呪的資源(リソース)消費を嫌って余ほどのことがないと使わない。これが20ガルド。


 次に防寒、雨対策に頭巾付き外套(フーデットマント)を購入する。防寒は魔術(ギャルダー)でも何とかできるが効果時間が微妙だし呪的資源(リソース)的に余ほどのことがなければ使わないので基本はこれだ。これが65ガルド。


 他にはおしゃれ装備としての(スティ)ではなく旅行用の丈夫な長靴(スティバリー)だ。丈夫で防水加工もされており若干だが長時間歩行での脚部への負担も軽減してくれる。これが20ガルド。


 後は毛布が50ガルド、後は基本セットとも言うべき、中型の背負い袋(バックパック)大袋(ラージザック)小袋(スモールザック)、万能ナイフ、小槌(ハンマー)(くさび)20本、鉤爪(フック)細縄(ロープ)2.5サート(約10m)松明(トーチ)6本、火口箱(ティンダーボックス)、青銅製の手鏡、木製の食器一式で150ガルド。


 これで美優(みゆう)用の最低限の装備は整った。デザインに不満があるようだが、この世界だとあまり実用品にデザイン性は求められていないのだ。一応あるにあるのだが、完全受注品(オーダーメイド)の為か10倍以上の価格となる。


 背負い袋(バックパック)にこれらを放り込み、さらに替えの下着と衣服を詰めて背負わせてみると…………。


「すみません。これ、結構重いです」

 そう感想を述べた。

 マッチョになって貰っても困るけど、取りあえず君は体力がなさすぎる。そこは頑張って貰うしかないだろうなぁ。僕らと行動するなら最低限このくらいは出来ないと困る。


 取りあえず雑貨商の用事も片付いたので冒険者組合エーベンターリアギルドへと赴く。毎回思うのだけど、必要なお店を一つの施設に纏めてくれないものだろうか? 結構面倒臭いんだよね。

 そんな事を思っているうちに師匠が依頼掲示板(リクエストボード)から依頼票を四つ持ってきた。どれか選べって事だろうか?

「これ、全部受けてこい」

 そしてこちらの想像の斜め上な事を仰ったのだ…………。この鬼め。


 逆らってもいい事はないので、受付の順番が来るまで取りあえず依頼票を確認する事にした。却下したらたぶんだが、好きにしろって言って去っていきそうだけど。


 一つ目は古代王国時代の遺跡の調査だ。詳しい内容に関しては依頼人と面会してからとなっている。報酬は一党(パーティー)で5000ガルド、金貨五枚だ。


 二つ目はここから徒歩で二日ほど行ったルーファスという村に赤肌鬼(ゴブリン)が数匹出たので駆除して欲しいという内容だ。報酬は一党(パーティー)で3000ガルド、金貨三枚に赤肌鬼(ゴブリン)の首一つにつき100ガルドだ。


 三つ目は徴税官の代わりに領主のいないランサス村の巡回してトラブルがあれば対処してこいという内容だ。場所はルーファス村の隣なのでついでという感じだろうか? 報酬は一党(パーティー)で2000ガルド、金貨二枚。トラブルを解決した場合は追加報酬あり。


 四つ目はルーファス村の奥の森に希少な野草が採取できるという。それを適正な手段で採取して持ってきて欲しいという内容だ。詳細は魔術師(メイジ)組合(ギルド)でとの事だ。報酬は一党(パーティー)で1000ガルド、金貨一枚だ。更に野草の株一つにつき500ガルド、合金(エレクトラム)貨一枚だ。


 最初のひとつ以外は場所が近い。まとめて受けた方が得だろうという事だ。あとは期限がどれも長くない依頼のようなので効率よく処理しないとマズいという事だろうか?


 一番目の依頼はどこまで行くかによっては失敗も視野に入れる必要があるかな?


 受付に呼ばれたので手続きに赴くと、健司(けんじ)好みの巨乳な美人の受付さんだった。認識票(アーケナングスマーク)と依頼票を差し出し必要書類に記載していく。受付さんは依頼票の確認をしながら指示書の作成をしていく。

銅等級(第五階梯)の方ならもっと報酬の高い仕事がありますよ? これってどちらかと言えば白磁等級(第一階梯)茶鉄等級(第二階梯)の仕事だと思うんですが…………」

 作業の手を止めた受付さんがそう口にした。これって穿った見かたをすると初心者用の仕事をいくつも取るなよって感じなのだが、どうやら違うようだ。

「本当に助かります。最近は白磁等級(第一階梯)が行方が分からなくなる事件が多いですし、ベテランは安い仕事は受けてくれませんから初心者向けの仕事は達成不能になる事が多くて困っていたのですよ」


 若手が行方不明な件はもしかしたら、騙して犯罪者に仕立ててそれを熟練者が刈り取って犯罪奴隷(クリミネ・スクラブ)として処分させるあれだろうか?


「お任せください。受付さんの為にジャンジャン処理しますよ」


 そう言って受付さんの手を握りしめるのは、つい先ほどまで黙って後ろに立っていた健司(けんじ)だ。そろそろ妓館(ブロセル)通いが飽きたんだろうか? 普段はこんな事はしないのだが彼はこのお姉さんを口説き落とすつもりなんだろうか?

 対する受付のお姉さんも満更でもない表情(かお)だ。

 ま~健司(けんじ)は容姿は整っているし、こっちの世界ではモテル男の条件に適合しているからなぁ。イケメンに言い寄られて気分が悪くなる人も稀有だろうし。

 とはいえ、受付業務を済ませてもらえないとこっちも困るので咳払いをして正気に戻させる。

 慌てて謝罪をすると手早く指示書を作成して預けていた認識票(アーケナングスマーク)と指示書四枚を受け取る。

健司(けんじ)、いくよ」

 カウンターを離れ振り返り健司(けんじ)を呼ぶ。彼は受付さんと二三話し込んでから「待たせたな」とやってきた。

「フローラさん、20歳、独身、恋人なしだってよ」

 聞いてもいないのに健司(けんじ)がそう嬉しそうに報告する。受付(フローラ)さんの年齢だとそろそろ結婚を考える頃かな? 女性の場合は村だと結婚適齢期は17歳くらいまでと言われている。それが都心部では25までに結婚できないと莫大な持参金を用意しないと結婚してもらえない、らしい。

「口説き落とすの?」

「そのつもりだ」

「なら暫くはここを拠点に活動した方が良さそうだね」

 僕は健司(けんじ)にそう答えたのには訳がある。僕らは銅等級(第五階梯)だが、これは臨時処遇で得たものなので更なる高みを目指すためには普通の冒険者(エーベンターリア)のように多岐にわたる依頼を熟し組合(ギルド)に認めてもらわなければならない。本来冒険者(エーベンターリア)に求められているのは”なんでも屋”としての万能ぶりだ。


 そう言う意味では初心にかえって頑張るにはちょうど良かったかもしれない。


 時間も惜しいので早速だが魔術師(メイジ)組合(ギルド)の依頼者に面会予約(アポイントメント)を取りに行かねば。大所帯で行動してもしょうがないので二手に分かれるか。

「僕は依頼人に会ってくる。美優(みゆう)は僕に付いてきて欲しい」

 これは依頼人とのやり取りを見てもらうためだ。

「今回は美優(みゆう)の教育の為に魔法の鞄(ホールディングバッグ)の使用を禁止するので、各自それに合わせて必要なものを補充して欲しい。一刻(二時間)後に魔術師(メイジ)組合(ギルド)の前で集合しよう。…………解散」

 やや不満顔の二人は無視して美優(みゆう)を連れ立って魔術師(メイジ)組合(ギルド)へと向かう。

お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ