131話 展示物を見に行く
2019-10-13 文言の一部を修正
一夜が明けた。
昨日は中心街をブラブラして何の施設が何処にあるかなど確認の後に別れたフェルドさんとゲオルグと合流して魔導騎士輸送機へと戻った。生半可な宿泊施設に泊るより安全で快適だからね。
そして今日の予定は聖職者であるゲオルグは冒険者としての仕事がないのであれば当面は神殿で奉仕活動に従事すると言って早々に出かけた。
フェルドさんも知人と会うとの事で朝食を摂ったのちに出かけて行った。残りも二手に分かれることになる。
和花と瑞穂とアンナとピナには食材や生活必需品などの買い出しをしてもらう為に乗合馬車にて街の中心部へと出向いてもらう。そして僕と健司とハーンは近くにある中古の魔導従士を見繕いに展示場まで赴く。
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「あれはなんなの?」
展示場に到着し三人で端から商品を見て回っていたのだが健司が何かに興味を惹かれたのかハーンにそう問いた。
「あれですか。…………増幅器っすね」
「結構高いけど何に使うんだ?」
健司に言われて気が付いたが値札を見ると20万ガルド、金貨200枚となっていた。見た目は単なる箱なんだけどね。
「万能素子転換炉の出力強化用の外部装置ですね。いまだと遺跡の自動工場でしか生産できないそうで高価なんですよ」
その後の説明を聞くと急に欲しくなった。
魔導騎士輸送機の性能が劇的に上がるのだそうだ。速度が上がる事と登坂性能が向上するそうだ。
「200枚なら出せないことはないけど…………」
そう呟くものの20万ガルドは安くない。
「いや、辞めておこう。勿体ない」
「そう?」
「緊急性もないしな」
一党で使っているが持ち主は健司だ。その持ち主が要らないというならこれ以上悩んでも仕方ない。
その後も三人で会場を練り歩くが分かったことがある。
「あの魔導騎士輸送機って普通に買ったら金貨3000枚でも買えないんじゃね?」
それが健司の感想だった。見て回った魔導騎士輸送機用の追加装備で装備済の物の金額を合計すると、ゆうに金貨2000枚程になるのだ。具体的な価格は聞かなかった気がするが健司の貯蓄具合から師匠から買い取った価格は本体込みで金貨300枚以内だと推測されるので破格どころかつくづく甘やかされているな僕らはと思うのだった。
そうこう話しながら移動すること半刻、ようやく本命の魔導従士が展示されている区画へとやってきた。
「手前は新鋭騎とかかな? 結構高そうだ」
「そうっすね。我々の欲しいモノは奥の方だと思います」
一番奥は今回の目玉商品らしく人だかりが凄いのが見て取れた。
「でも手前の最新鋭騎より目玉ってどんなもんなんだ?」
健司が僕と同じ疑問を口にする。
「契約前の講義で噂という形で聞いたんですが…………」
ハーンが聞いた話は魔導機器文明の遺失技術のひとつが再現できたという話だった。
「で、勿体ぶらずに結論言えよ」
健司がそう急かす。
「量産可能であれば凄いことになるかと…………」
そう言って更に我々を焦らすハーンが向かって右の区画を指し示す。そこにあるのは僕らの世界では日本帝国以外でなら見慣れたものだ。
「飛行船か…………」
僕はそう独り言ちる。
「飛行魔導輸送機と言います。普及しない理由が大空をうろつく魔物に対して弱いんですよねぇ。墜落の危険もあるし夜間飛行も危険だし————」
どうやらハーンには僕の声は聞こえなかったようだ。
飛行船や気球の存在は師匠から聞いていて知っていた。魔導機器にも回転羽根推進器があるのも知っている。
話の流れからすると…………まさかね。
「————空の安全が確保された地域限定で観光用として運用してるんっすよ」
思索から意識を戻すとハーンの説明が終わっていた。
「やっぱ空飛びたいよな。金を貯めて小型の飛行魔導輸送機買おうぜ」
相変わらず健司は何も考えずにその場のノリと勢いだけでモノを言う。
こちらの世界の気球は僕らの知る原理は全く同じだ。熱気球と浮遊ガス気球がある。展示場を見て回ると熱気球なら安いモノなら金貨10枚程から購入できる事が分かった。逆に浮揚ガスを用いた浮遊ガス気球は結構お高い。
興味はあるが素通りする。
そして健司が欲しがる魔導騎士輸送機の展示区画だ。
「小型の物でも高いな」
健司が見ているのは個人向けに販売されているものだ。飛行船っぽい外観だが浮遊原理は浮遊石という周囲の重量を軽減する魔法の物品や浮揚ガスだ。移動には回転羽根推進器を用いる。
僕らが飛行船と聞くとまず最初に思いつ浮かぶのが軟式飛行船だ。船体が気嚢によってできており浮揚ガスが充填されている。穴が開くと浮力を失って墜落する素晴らしい乗り物だ。
こちらの世界のは硬式飛行船に分類されると思う。軽い金属素材や軽い木材で船体骨格を組立て外殻を錬金繊維と呼ばれる錬金術の産物で覆う。直接浮揚ガスを充填せずに気嚢を分散配置させることで安全性を保っている。
目の前の展示物は全長3.75サートほどで双胴式と呼ばれる船体が二つあり中央に居住区と回転羽根推進器があるタイプだ。
「これにしよう!」
健司が買う気満々でそう宣言した。
「まって! ギリギリ魔導騎士輸送機の荷台に納まるとは思うけど宝の持ち腐れじゃない?」
僕は必死に止める。ちらりの見えた値札が頑張れば買えちゃう価格だったからだ。
「流石に100万ガルドはおいそれと買える価格じゃないと思うっすよ」
ハーンも興味津々ではあるが価格を見て諦めている。
「…………。素体を売り払って…………樹、金貸してくれ」
思いっきり僕の肩を掴み真顔でそんな戯言を抜かした、
「馬鹿を言わないでくれ。僕の貯蓄を全部下ろしても足りないよ」
そう。僕は【幻影地図】の魔術の為に必要という事で魔導機器を買ってしまい貯蓄は結構目減りしている。
「そういえばそうか…………なら小鳥遊に借りるか」
物騒な事を呟いている。
「すぐには売れないだろうし、まずは稼ごう! 未盗掘の遺跡が見つかれば買えるかもしれないじゃないか」
「…………それもそうだな」
僕の必死の説得で納得いったのか諦めてくれたようだ。取りあえずだろうけどね。再燃する前にお金を稼がねば!
色々見て周りやっと目的の区画に到着した。
「これ、5万とか安くね?」
健司が指差すそいつを見る。そしてハーンの方を見ると、目を輝かせていた。
「これ今じゃ稼動騎は希少と言われる騎体っすよ。やばい。欲しい」
希少?
その外観は装甲の至る所に錆が浮く軽装型魔導従士だった。
「これが希少?」
僕はそう呟かずにはいられなかった。




