127話 報告を聞く。
「もう一回言ってくれる?」
夕飯を済ませ魔導機器の整備員として雇っているハーンから巨獣解体の際に動かした魔導従士の整備を行ったと報告を受けた。その際に判明した事を今聞いたのだが…………。
ハーンの説明だとあの重装型魔導従士は最新鋭の素体を用いているのだが問題はそこじゃなかった。
「こいつは最新鋭の魔導隠行騎なんすよ」
「魔導隠行騎?」
いま僕らは荷台の整備台の上で健司と共に操縦槽に座るハーンの報告を聞いている。
魔導隠行騎とは隠密行動用に特化した特別機だそうで、特にこいつは魔力収縮筋の最高級品を使われており見た目以上の軽快さで動けるそうだ。更に魔導隠行騎としての機能として駆動時に放出する魔力が極端に低く隠蔽性が高いという。この魔力隠蔽によってそんじょそこらの感応器には反応しないという。
更に二次装甲が神覇鉱製で硬度と強靭性が高く軽量化にも貢献しており単純な戦闘力ならそこらの普及している魔導騎士より上かもしれないとの評価だった。
だがそれだけならハーンも驚かなかったという。
「まずはこいつです」
そう言うと突然魔導隠行騎の姿が消えた。
「光学迷彩機能です」
直ぐ近くからハーンの声は聞こえる。整備台から手を伸ばすと何もない様に見えた場所に何か硬い物体があることが分かる。
「【擬態】…………違うな。【隠蔽】の魔術かな?」
「あの人はこんなもんを俺らに渡して何をしろって言うんだ?」
隣りで健司がそうこぼす。
「さっぱりだよ…………」
そう返すしかなかった。
更にハーンの説明は続く。
ボタン一つで操縦槽が完全密閉型になり水中や砂中に潜れるようにもなるし空調機も完備との事だ。
爪先と踵に短剣が仕込まれていたり、肘と膝の装甲裏に杭打機が仕込まれていたり、手首にワイヤーアンカーがあったり、胴体に発煙弾発射機があったり、とても巨獣相手の騎体とは思えないと言った。
そして極めつけが————。
「「自爆装置?」」
思わずハモッてしまった。
「マジであの人の考えが分からんわ」
「たぶんだけど、とりあえず強そうな騎体を渡しておこうってノリだと思うよ」
師匠の性格から察するにそんなところだろう。
「まてよ…………うっかり人前とかだと運用できないんじゃないのか?」
健司の意見ももっともだ。本来は間者とかが運用する騎体だろう。
「師匠は変なところで雑なんだよね」
そうぼやいて考え込む。僕の視線は寝そべる様に配置されているブツに目が行く。
「普段使いはそっちの素体に適当に艤装を施して運用するのがいいと思います。もっとも————」
そうハーンが意見してくれるが、その後の台詞が憂鬱にさせる。
「冒険者で魔導騎士乗りってスカウト合戦に巻き込まれて相当鬱陶しいですよ」
主募集中の自由騎士と思われてしまうのだ。魔導従士でも似たような感じだという。
「いっそのこと中古の古い魔導従士でも買います?」
そうハーンが提案してくれた。
それについて僕は考え始める。ハーンのアドバイスだと、どういった目的で運用するかで価格がピンキリらしい。
「重機代わりとして運用を考えている」というと、
「なら軽装型魔導従士がいいですね」
軽装型とは天面と背面に外装板がなく騎手がむき出しで映像盤すら装備されていない。
ガレアスと言われる騎種の中古品がかなり出回っているらしく老朽騎と言われる騎齢50歳以上の騎体なら金貨50枚くらいから見つかるらしい。
「戦闘に関しては期待しないでくださいね」
最後にハーンにそう言われた。
一通り報告を聞き終わり労いの言葉をかけて部屋に戻る。そろそろ情報収集が終わっている筈だ。
「————、発動。【幻影地図】」
魔術の完成と共に触媒の白い布の上に立体映像が浮かび上がる。
「「おぉー」」
同伴していた健司とシュヴァインさんが感嘆の声を上げる。
「中心部の箱が我々ですな。そうなると————」
シュヴァインさんが経路を検証してくれる。僕は指示通りに立体地図の尺度を変えたりしながら地図に記載していく。
四半刻して予定経路が決まった。少し急ぐのでおおよそ四日ほどの行程となりそうだ。
「当初の想定よりかなり早く到着できそうで助かります。やはり貴方に依頼してよかった」
別れ際にシュヴァインさんにそうお礼を言われたが、お礼は聖都ルーラに到着してからにして貰いたい。だってなんかのフラグっぽいじゃん。
今回は文字数少な目です。
やはり執筆環境が整ってない状態だと二千文字すらかなり厳しいです。
投稿優先か文字数優先かどちらがいいのでしょうね。




