表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/678

110話 昇格、そしてお別れと……

「おめでとうございます。第五階梯(ランク)への昇格の手続きが終わりました」

 受付さんから返してもらった認識票(アーケナングスマーク)は赤銅色に輝いている。ただし僕ら全員が昇格となったわけではない。シュトルムとセシリーはまだ貢献度が足りずに見送られたのだ。もっともこの国の貴族であるシュトルムには必要のないモノだ。セシリーも今後はシュトルム率いる一党(パーティ)に加わるとの事なのでそう遠くないうちには昇格できるだろう。


「短い間だったがありがとう。明日は見送りできないから今のうちに礼を言っておくよ」

 そう言ってシュトルムが右手を差し出す。その手を握り一言。

「こちらこそありがとう。次に会うまで壮健で」

「ああ、名残惜しいけど行くよ」

 握手を解きシュトルムは去っていく。僕は彼が人ごみに紛れて見えなくなるまで見送った。



「私も短い間でしたがお世話になりました。御恩は一生忘れません」

 和花(のどか)瑞穂(みずほ)とは挨拶が済んだのだろう。セシリーが声をかけてきた。

「僕も助かったよ。ありがとう」

 最初は寄生されたかなと疑ったこともあったが、彼女の癒しの奇跡が適宜飛んできたことで命永らえた事もあった。意外と周囲を見ていたのである。彼女は今回の報酬を貯蓄に回すとの事だ。毎月一定額だけを孤児院に入れる事にしたらしい。実は孤児院の運営の経理がお金をチョロまかしていたのだ。一度に多くの大金が納められて少しくらいクスねても問題ないだろうと魔が差したらしい。

 それを知ったセシリーが方針転換したらしい。

「そういえば、ありがとうございます」

 唐突にお礼を言われたが何の事だろうと思案していたら、板状型集合住宅(マンション)の事だった。結局解約せず名義をセシリーに変更し、家具や魔導機器(マギテック)をすべてセシリーに譲渡したのだ。

「いいよ。家具とかは使わないしね。明日からは勝手も変わるだろうけど頑張ってね」

 そう語って右手を差し出す。

「はい」

 笑顔で返事をし差し出した僕の右手を両手で握りしめる。

 手を解き深々と頭を下げセシリーも去っていった。


 名残惜し気に何度も振り返るセシリーに手を振り彼女が人ごみに紛れるまで眺めていた。

「行っちゃったね」

「うん。もっと積極的に交流していれば違う未来もあったのかな?」

「そうかも知れないけど、人生に”if”ないからね。次に生かそうよ」

 会話の相手は、いつの間にか僕の左隣に来ていた和花(のどか)だった。そう言えば和花(のどか)の定位置は何故か左側だな。そうなると右側は————。


 振り向くとやはり瑞穂(みずほ)が居た。目が合うとはにかみつつこちらを見つめている。なんか無性に頭を撫でてやりたい。


 そろそろ帰ろうという感じになった時だ。

「タカヤさん。実は面会希望者がいるのですが……」

 声をかけてきたのは組合(ギルド)の職員だ。

 面会希望?

 返答に窮していると、「一党(パーティ)募集の告知の件ですよ」と言ってきた。

 そーいや取り下げるの忘れてたな……。

 取りあえず面接だけしようという事で応接室を借りる事となった。募集依頼は取り下げをお願いしておくのも忘れない。


 ▲△▲△▲△▲△▲△▲


「貴方は…………」

「挨拶は初めてかのぉ。わしは戦の神(ゲラン)神官戦士(モンク・ウォーリア)でゲオルグと言う。君らを勇者と見込んで旅に同行する事を許可してもらえんかね?」

 その人物は(ドラゴン)と戦って辛うじて生き残った地霊族(ドワーフ)神官戦士(モンク・ウォーリア)だった。

 何の話だと思ったのだが、勇者と呼ぶに相応しい人物に仕え、英雄(チャンピオン)へと導く事こそが彼らの信仰なのだそうだ。

 よーするに彼の信仰心を満たすために同行させてもらいたいという話だ。


 ところで神官戦士(モンク・ウォーリア)聖騎士(パラディン)聖戦士(クルセイダー)の違いはというと国教を法の神(レグリア)とする宗教国家ナザロス法国の貴族にして司祭(プリースト)位を者を聖騎士(パラディン)と呼ぶ。聖戦士(クルセイダー)は各宗派で戦闘能力に長けた者を指す。彼らが奇跡を使えるか否かは問わない。神官戦士(モンク・ウォーリア)は戦闘訓練を受けた神官(モンク)ないし司祭(プリースト)を指す。稀に高司祭(ハイプリースト)位とか司教(ビショップ)位並の奇跡を使えるものも存在するのだが…………。


 ありがたい事に彼は【重傷治療(キュア・インジャリー)】の奇跡が使える銅等級の冒険者(エーベンターリア)でもあった。

 四人になってしまったし癒し手(ヒーラー)は多いに越したことはない。戦闘技術に関しては追々見せてもらうとしよう。

「分かりました。我々があなたの信仰の対象とはならないと思ったらいつでも言ってください」

 まー要するにお互い利害関係が一致してる間は仲良くしましょうと言う事だ。


 話は纏まったので神官戦士(モンク・ウォーリア)のゲオルグは赤竜(ファイアドラゴン)戦で装備などを失ったので補充に行くそうだ。明日の四の刻(八時)に市壁前で集合と伝えておく。


「それじゃ、私たちは富裕層区画(エリア)で必需品を買ってから帰るね」

 そう宣言すると瑞穂(みずほ)の手を掴んで足早に去っていく。引き留める間もなかった。

 荷物持ちくらいとか思ったけど、僕らは魔法の鞄(ホールディングバッグ)を持っているから必要ないんだよなぁ。

 富裕層区画(エリア)で必需品か…………下着かな?

 こっちの区画(エリア)だと下着類は男女共用のT字帯みたいなのだからな…………。女性だと胸は布を巻くだけだし。


「俺らはどうするよ?」

 とくにやる事のない男性陣のみが組合(ギルド)に取り残されてしまった。

「そうだ。暇なら掘り出し物を探しに行こうぜ。(いつき)の幸運にあやかって」

 幸運にって以前に瑞穂(みずほ)小剣(ショートソード)を買ったときの話か?

「そうだね。ところで何か欲しいモノがあるの?」

赤竜(ファイアドラゴン)戦で思ったんだけどよ、大剣(グレートソード)が欲しくなった」

「でも、同時に装備は出来ないだろうに…………」

「まーいいから行こうぜ!」

 そう叫ぶと僕の背中をグイグイと背中を押して組合(ギルド)の出入り口へと押し進む。



 ▲△▲△▲△▲△▲△▲


「やっぱ(いつき)は持ってるな」

 ブラブラと男二人並んで露店を見て歩き、適当に買い食いして半刻(1時間)ほど歩き回った結果、目当てのものも見つからずそろそろ帰ろうかと思った矢先に目についたのが、いま健司(けんじ)が持っている大剣(グレートソード)だ。

「確信は持てないよ。文献で見たのとそっくりな外観だったってだけなんだし。外れたら大損だよ」

 取りあえず【魔力探知(ディテクト・マーナ)】を唱えてみたところ魔法の武器であることは間違いない。


 再び冒険者組合エーベンターリアギルドへ戻ってきて鑑定依頼を出した。

 程なくして鑑定結果が出たとの事で呼び出され受付へと出向くと…………。


「こちらの大剣(グレートソード)ですが、銘を[炎の纏うものフレイム・オン・コマンド]と言います。買取であれば金貨150枚で買い取ります」

 露店で金貨50枚で買ったことを考えるとこれは大当たりだ。

「一品物なんですか?」

「いえ、量産品マセンプロダクションですね」

 それにしては随分高額だな……。

「等級とか性能はどんな感じです?」

「等級は中級品(アンコモン)級ですね。効果は命令(コマンド)で刀身に炎を纏います。後は別の命令(コマンド)で【炎の矢(フレイムボルト)】が飛ばせます」

 賢者の学院(スカラー・アカデミア)から派遣されてきた鑑定士役の魔術師(メイジ)さんの回答に健司(けんじ)が食いついた。

「それって制限とかあるんすか?」

「毎回命令(コマンド)が必要なだけで好きなだけ使えますね」

 この使用制限がないところが予想以上のお値段の理由らしい。

「買取はなしで」

 健司(けんじ)はそう言うと鑑定料として金貨3枚渡す。


「さて、帰ろうぜ」

 大いに満足した健司(けんじ)に引っ張られる形で組合(ギルド)を出たのだった。

次の投稿は少し遅れそうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ