9話 登録
仕事の合間に直してたら迷走しまくってました。
次話は近いうちに。
2018-10-13 誤字脱字、文言などを修正。
2018-10-22 誤字の修正。
2019-03-21 一部ルビの修正
2019-05-28 一部文言を修正
2023-09-09 一部文言の修正。誤字の修正。
アルム大陸東部の沿岸から上陸した。
そこで僕らは巨大で快適な居住空間の大型魔導艦から降ろされて魔導客車で町へ向けて移動している。大きすぎる大型魔導艦で市壁まで乗り付けるのは要らぬ混乱の元になるそうだ。
運転するヴァルザスさんの横に健司が座り、後部座席には僕と和花が座る。魔導客車の形状はタイヤのない四人乗りトラックのような形状をしている。
「もうすぐルートという町だ。町というか都市国家だな」
前方に見える石壁はファンタジーものでよく見る町をぐるりと囲むように円形をしており壁の高さも12メートルほどのようだ。あの規模の町だと人口は二千人も居ないのではないだろうか?
そんな事を考えていると師匠の話は続く。
「そこで身支度を整えて冒険者組合の登録を行うが覚悟はいいか?」
ヴァルザスさんは操縦しつつそう尋ねてきた。ここで言う覚悟とは暖かい食事や寝床とはお別れ…………お客扱いの終わりという意味だ。
「問題ないっす」
「大丈夫です」
「平気です」
健司、僕、和花と三人三様の返事を返す。
都市国家とは首都にして王都である都市と周辺の農村部で構成されていて、大国なら男爵か子爵程度の領地と人口しかない。今回立ち寄るルート王国の王都ルートも都市人口三千人程度の都市である。
そうこうしているうちに高さ三〇メートルはあろう巨大な石造りの市壁の前まで来た。現在は昼近くのはずなので高さ一〇メートルはあろう巨大な鉄扉は開きっぱなしになっている。その両隣に全高六メートル弱の寸胴な人型の何かが突っ立っていた。
「ヴァルザスさん!あれなんすか?」
助手席に座っていた健司がいち早く気が付いたようで興奮した口調で寸胴な人型の何かを指さして聞いている。
「あれは魔導従士といって騎士が搭乗する魔導騎士の簡易生産型だ。この世界じゃ騎士と呼ばれる所謂貴族はアレの乗り手でもある魔導操手の事を指すんだ」
いつかはあんなのを操ってみたいななどと思っているとヴァルザスさんは話は続く。
「あの簡易版はそこそこ量産されているし戦争でも結構見かける。市壁が巨大なのも巨獣や魔導騎士対策だな。――――」
説明には続きがあり簡易型は下級騎士や高級軍人や一部の冒険者や商人も使っているのがいるそうだ。
「ロボットって解釈でいいんですか?」
気になったので聞いてみたら、
「厳密には人造半生物…………だな。ほぼ人と同じ構成の金属製の骨格と生体部品である筋肉に相当する魔力収縮筋や神経に相当する神経節や血管のように全身に行き渡っているり魔力収縮筋を冷やす役目の冷却水管と心臓と肺に相当する心肺器に、動力を生み出す万能素子転換炉、胴体の大半は操縦槽だし頭部には脳核ユニットが内蔵されているし、生体パーツで眼球ユニットもあるな。人間同様に自己治癒もする。ただ生体パーツを多く使う関係で維持費がかなりかかる。操縦方法は半追従方式+思考制御方式の混合だな。俺的が知るロボットの定義とは違う気がするんだが…………」
そう説明されたが、巨大な人型兵器とか浪漫を感じる。
「いつか自分の機体を持ってみたいな」
健司の呟きに僕も頷いた。因みに機体ではなく騎体だそうだ。
「そんなに興味があるなら後で大型魔導艦の艦内格納庫に積んであるのを触らせてやるからちょっと大人しくしてろ」
ヴァルザスさんはそう言って興味津々の僕と健司を大人しくさせる。
「男子ってあーいうのホント好きだよね」
呆れたと言わんばかりの和花だったが僕は見た。明らかに興味津々だったことを。
市壁の前は入都手続き待ちの旅人やら商人と思われる荷馬車が行列となっていたが、ヴァルザスさんは列に並ばずに魔導客車を進める。
慌てて止めに入る兵隊に胸元から認識票なものを取り出し見せつけると兵隊の態度が突然変わった。そのまま魔導客車から降りずに手続きらしきものを済ませ、入都税として小銀貨を九枚手渡して町へと入った。
「あれ?四人で九枚って数合わない気がするんですが?」
九枚というのはどういう内訳なのだろう?
「一人あたり三ガルド。小銀貨三枚だ。俺は冒険者組合に所属しているから免除だが、お前ら三人はまだ加入してないからな。説明した気がするが取りあえず納得いったか?」
「納得しました」
そう言って頷く。そういえば言われた気がする。
そうこうしているうちに駐車場、こっちの世界だと駐騎場に魔導客車を止めると、係員らしき近づいてくるのでヴァルザスさんは代金を支払って割札のようなものを預かっている。そして降りるように言われたので素直に下りてヴァルザスさんの次の指示を待つ。
市壁の手続きで受け取ったモノを投げ寄越した。
「これを首からぶら下げておけ」
受け取ったモノをみると金属の板に鎖が付いており首から下げるものらしい。認識票のようなものだろうか?何やら刻印されているが文字など読めないので意味はさっぱり分からない。
「これは何ですか?」
首にかけながら和花が質問した。
「それが滞在許可証だ。失くすと罰金だから注意しろよ」
「そういえば列に並ばないで優先的に通過できた理由ってどうしてですか?」
気になったので聞いてみた。
ヴァルザスさんは自分の玉虫色に輝く認識票を取り出し、
「この認識票の階梯一〇になると色々と特権があるんだよ」
そう言って特権について話し出した。
「まずはあらゆる通行税が無料になる。貴族同様に手続きが簡略されるうえに優遇される」
階梯一〇の冒険者は全冒険者の中でも三〇名しか居らず権威的には小国の王より上に扱われるそうだ。ちなみに相棒の銀髪の美丈夫なフェリウスさんと地霊族のバルドさんも階梯一〇だ。最早向かうところ敵なしという最強一党なんだそうだ。
「小国の王って事はこの国の王様より権威的には上なんですか?」
「確かにその通りなんだが、流石に面と向かって国王より上の扱いは出来ないので非公式の場合に限るな」
やりたいことは山のようにあるが階梯一〇を目指してみるのも良いかもしれないなと思った。
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時間も勿体ないからと冒険者組合に連れていかれ、まだ会話どころか読み書きさえ出来ないので、ヴァルザスさんに通訳して貰いつつ受付のお姉さんに代筆してもらって登録手続きを済ませた。サインだけは直筆だ。今回の為に公用交易語で自分の名前だけは書けるように練習させられていた。
古代帝国時代の人民管理用の魔導機器を用いて生体データを取り書類に名前を記載し組合での規約をヴァルザスさんの通訳経由で説明を受けた後に待合室で半刻ほど待たされて白い認識票を貰った。
認識票に記載の登録番号と当人の生体データと紐付けを行ったとの事だ。これによって銀行の口座も同時に開設された。
この認識票は複製がきかず本人以外が触っても氏名と等級以外の情報は読み取れない。ただし組合にある専用の魔導機器でしか読み取り不可という。盗難された認識票で資産を引き出されるの防止する為でもある。職員による不正はありそうだけど、魔法の契約書に宣言させられているのでやりたいと思うだけで地獄の苦しみに襲われるそうだ。
あとは無くしたり破損したりすると高額の再発行手数料が取られると説明された。
「こういう場面だとこいつは逸材だとか言って組合長とかが出てくる場面じゃないのか?」
僕同様に古典ラノベ愛読者の健司らしい感想だ。
「それを言うなら先輩冒険者が絡んでくるところじゃないの?」
僕は思わずそう返したが僕らは神様から異能貰ったわけじゃないしすでにテンプレから外れていると思うのでそれに期待するのはどうだろう。
ヴァルザスさんから白い認識票について説明がされた。
認識票に刻印されている情報は、等級、登録番号、氏名、性別、種族、職能だそうだ。
「この職能ってRPGで言うところの職業ですか?」
聞こうかと思っていたことを和花に先を越されてしまった。悔しい。
「職業というより冒険者組合が定めた業務分類の事で基本的には自己申告制だな。そこは申告すれば書き換えられる。今回は俺の独断で登録した」
今回は先日の適性検査をを元に健司は重戦士、僕は軽戦士、和花は槍戦士と登録したそうだ。
掲示板の一党募集での自分の売り込みに得意分野を登録しておくのが普通らしい。
「ヴァルザスさんは職能は何で登録してるんですか?」
日本帝国に滞在中に万能型だと聞いている。
「斥候だ」
「「「えっ?」」」
身長一九〇超えで筋骨逞しい偉丈夫のヴァルザスさんが斥候?
「控えめに言って俺は神に祈る以外は超一流だが、うちの一党で斥候に分類される仕事が熟せるのが俺しかいないのでこういう申告をしている」
ただ最近になって四人目が加入してその人物が斥候なので近いうちに魔戦士に書き換える予定だとか。
因みに斥候って言うのはゲームで言うところの盗賊とか暗殺者とか野伏的な事ができる人を指し戦闘能力そのものは関係ないそうだ。
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