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可愛い後輩の隣人さん  作者: 堺川天馬
9/30

9話 昼休みの戯れ

「じー」

「じー」

「……あのさ、見るのは構わないが口に出すのは止めてくれないかな…」

 昼休み。

 昼食を食べ終えた俺は自席で最近はまったホラー小説を読んでいた。

 読み始めのページを終え、次ページに移ろうとした時、天莉さんと瑞木さんがやって来て急に俺の観察を始めたのだ。

 静かにしてくれるのなら問題ないな、と気にしなかったのだが、飽きてきたのだろう。五分後、「じー」などと意味不明な言葉を二人で発しだした。

「だって暇なんだもん」

「瑞木さんと他の教室に遊びに行けば良いじゃないか」

「私は真澄くんと遊びたいの。構って」

「構ってと言われても、俺今小説読んでるんだけど…」

「えっちぃの?」

「違います」

 誰が教室で官能小説なんか読むか。生憎俺にはそんな勇気は無い。

 しかし困った。別に構ってやっては良いのだがネタがない。かと言って俺が直接彼女に何かをするのもアウトだ。クラスの奴等からセクハラ扱いされかねん。

 俺は本を閉じて、二人に問いかける。

「しかしまぁ、君達良くこの教室に来れるよね」

「だ、ダメだった?」

「そうじゃなくてここ、一応二年生のフロアだぞ。一年の君達が先輩だらけの階によく来れるな~って少し驚いてるだけ」

「別に普通ですよ」

 瑞木さんが淡々と言う。

「それに、私は兎も角、天莉はそんな事全く気にしてませんでしたよ。それよりも『真澄くんに会いたい!』ってうるさかったです。先輩、天莉に気に入られ過ぎですよ。ちょっと妬けました」

「ちょっ、夏蓮!」

 瑞木さんの胸ぐらを掴みながら「余計なこと言わないで!」と顔を赤くする天莉さん。

 そんなに俺をからかいに来たかったのかこの子は。やだ、俺ってば玩具にされてる?ナニソレツライ。

「で、結局どうして欲しいわけ?」

 このままあーだこーだ言ってても時間を無駄にするだけなので早いところ目的を聞き出す。

「遊んでよ」

 ストレート過ぎる……。

「遊べと言われてもネタなんてないぞ」

「じゃあそのポッキー頂戴」

「はいよ」

 これくらいなら━━と彼女にポッキーを差し出す。だが天莉さんはムッと膨れて首を横に振った。

「いらないの?」

「いる」

 どっちやねん。

「あ~んして」

「やだよ。自分で食べろ」

 何が悲しくて教室であ~んをしなきゃならんのだ。どう考えたって公開処刑だろ。

「やって!」

 机に身を乗り出して駄々をこね始める天莉さんに俺は頭を抱える。助けを求めて瑞木さんに視線を送るが彼女は小さく笑って「してあげてください」と口パクで言った。

 その時の彼女は娘を見守る母親の様だった。って何言ってんだ俺は。

 助けは無いと心が折れた俺は渋々ポッキーを一本掴んで天莉さんの口に近づける。

「はぁ…一回だけだよ」

「やった!」

 小さくガッツポーズをして喜びを表現をしたところで艶かしい唇を開いてポッキーをくわえてサクサクと食べていく。

 …なんだか餌付けをしている気分だ。まぁ彼女も一回すれば気が済むだろうし、これくらいは別に大したことではない。

「あむっ」

「おいこら」

 と思っていた矢先、予想もしなかった出来事が起きた。

 天莉さんがポッキーだけでなく、俺の指までくわえてきた。

「おい、誰が俺の指まで食えと言った」

「ん~」

「止めろ舐めるな」

 指先をヌメッとした物が舐めた。その感覚に俺は背中辺りがゾクゾクとした。

 俺は指を抜こうとするが腕を掴まれてそれを阻まれる。

「おい、本当に止めろ。人目もあること考えろ」

「問題ありません。私が壁になっているので」

 隣で瑞木さんが胸を張って言う。

 たしかに彼女が立っている位置だと今俺達がしている行為は周りには見えない。だが重要なのはそこじゃない。人目を気にしろというのはただの口実だ。俺は天莉さんに指を離して欲しいのだ。彼女の舌が俺の指を舐める度に背中がゾクゾクして気持ちが悪い。だがそれ以上に、この行為をほんの、ほんの少しのだけ楽しんでいる自分が何よりも気持ちが悪かった。

「天莉さん、頼むから離してくれ」

やら(やだ)ましゅみくんのゆび(真澄くんの指)おいひいから(美味しいから)

「犬か!」

「もう、しょうがないですね~」

 瑞木さんはため息を吐いて、天莉さんの顔に手を近づけていく。そして彼女の顎の下、喉元をスッと触った。

「ひゃっ!?」

 すると天莉さんが可愛らしい悲鳴を上げて跳び跳ねた。その拍子に俺の指は彼女の口内から解放された。

 指の処理に困っている中、天莉さんは喉元を手でガードしながら瑞木さんを睨む。

「瑞木!何するのよ!?」

 だが瑞木さんは天莉さんをスルーして俺ににこやかに言ってくる。

「結城先輩。天莉は首全体が弱いです。特に喉とうなじは触られるだけで力が抜けちゃいますので、もしもの時はこれをお使い下さい」

「余計なこと言うな~!」

 貴重な情報提供感謝する。だが、折角教えてくれたところ悪いのだが、それって異性の俺がすると完璧にセクハラになっちゃうんだよね……。

 あと、ついでと言ってはなんだが、天莉さんに舐められまくって唾液だらけとなった俺の指の処理についても教えてくれると先輩助かっちゃう。

「舐めれば良いじゃないですか?」

「君、実は腹黒かったりする?」

 ここで舐めちゃったら俺明らかに変態じゃないですかヤダー。

 仕方なく、ポケットからハンカチを出して指を拭く。その合間に天莉さんも「舐めて良いよ」と言ってきたので無言でデコピンを食らわせておいた。

 結局、この昼休みは二人の遊び相手をして終了した。


 五限が終わった休みに、昼休みに委員会で居なかった柊に愚痴ると「惚気んな阿呆が」とチョップされた。

 惚気たつもりなんて微塵も無かったのに…世の中理不尽である……。

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