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可愛い後輩の隣人さん  作者: 堺川天馬
28/30

27話 次のステップへ

またもや随分と遅れてしまいました。申し訳ございません。二月の頭には完成間近だったのですがなんとスマホが壊れてしまいまして、スマホの中にあった小説のデータが全て吹き飛んでしまってモチベーションが急降下してました。モチベーションが上がらないまま以前のデータの内容を思い出しながら頑張ってパソコンでこうやって打ち込んだ所存です。正直現在の内容より以前書いていた内容の方が面白かったのですが...如何せん現在のモチベーションではこれが限界です...しかし!次回は今回よりも面白く書く!そう決めました!スマホが戻ってきたらもう絶対に壊さない!私事でこの小説を読んでくださっている皆様を退屈にさせるわけにはいきませんからね!

長くなりましたがお待たせしました。27話「次のステップへ」をどうぞ!


皆様もスマホは大事にしてくださいね...トホホ......。

「真澄」


 午後の部の半分が終わり、トイレ休憩から戻ってくると華京さんに呼び止められた。彼女の様子から察するに次の種目は彼女の参加種目か。


「どうしたんだい?」

「次のリレー、応援してほしい」

「これはまた唐突だね」

「私は自分の為に頑張るなんて動機ではやる気が出なくてね。かといってクラスの為にというのもモチベーションがどうもね」

「だからって何故俺なんだ?」

「君の為に頑張ると思えばやる気が出る」

「他じゃ駄目?」

「君がいい」


 随分と素直に言われたものだ。まぁそれでやる気が出てくれるなら俺は全く構わない。彼女の性格上、これが一番いい方法なのだろう。


「オーケー。応援するよ。頑張って」

「一位になったら褒美を貰うよ」


 おっと~、それは聞いてないな~。別に良いですけどね。ただあまり無茶な要求はやめていただきたい。


「お手柔らかにお願いします」

「膝枕がいいな」

「因みに、どっち?」

「君が寝るんだよ」


 それ、貴女へのご褒美になってるんですか?普通に考えると俺がご褒美貰っていることになってません?


「君の寝顔を見下ろすのも楽しそうだろう?」

「理由が酷い」


 もっとこう、甘い感じのを予想していたんですが…貴女がそれでいいならいいですけど…。


「了解」

「では一位を取ってくるとしようか」


 意気込みを露にするように小さくガッツポーズをした華京さんからはいつものクールさは感じられず、可愛さを感じて何だか新鮮だった。

 随分と嬉しそうだったな。そんなに喜ぶことかと思ったが彼女にとってはそれほどのことだったようだ。

 種目が始まった。華京さんを含めた参加者一同が入場してくる。華京さんはどうやら後半の選手のようだ。彼女がコースに入ってくるまでに時間が掛かった。

 そして次の走者一同が待機に入る。中には当然彼女もいた。腰を落としてクラウチング。発砲音と共に一斉にスタートした。


「始まった!」


 スタートダッシュは良好。華京さんは綺麗なフォームで上位を取る。このリレーは二百メートル走。まだ一位を取るチャンスは十分にある。


「抜いた!」


 残り半分を過ぎた瞬間に二位に上った。一位との差もほぼ無い。


「華京さん!もう少しだ頑張れ!」


 一瞬、彼女と目が合った。その時だった。

 華京さんの背後から迫ってきていた選手に彼女は気づかなかった。その選手が彼女を抜こうと横に出た時に二人の足が絡まった。カーブが掛かったコースだった故に両者距離感を誤ったようだ。

 二人は派手に転倒。グラウンド全体がざわついた。俺も唖然とした。倒れたままの二人。暫くすると華京さんではない選手が立ち上がり、フラフラになりながらもゴールに向かって走っていった。一方華京さんは倒れたまま。先生達が集まり様子を確認していた。そして担架が用意され、華京さんは担架に乗せられて保健室へと運ばれていった。


「なぁ結城、あれまずくないか?」

「……柊、俺少し外す」

「あっ、えっ、おい!」


 俺はテントを抜け出して保健室へと駆け出した。


「……くそっ」


 たかが体育祭。大事にならないとは思うが彼女は女の子。男よりも体が脆い。万が一ということもあった。

 ますます不安が募る。俺は足を更に早め、彼女の無事を祈った。






「失礼します」


 保健室に着いた。扉をスライドさせて中に入る。すると白衣を着た先生が迎えてくれた。


「あら結城くん。どうしたの?」

「先生、先程運ばれてきた生徒は……」

「私のことかい?」


 ベッドを囲むカーテンが開けられ、華京さんがベッドに腰掛けていた。彼女の右足には包帯が巻かれていた。


「やぁ真澄。もうお見舞いとは光栄だな」

「無事、とはあまり言えそうにないね…」

「ただの捻挫さ」

「捻挫も重傷だろ」

「大袈裟さ」

「…私は転倒したもう一人の子を見てくるわね。まぁ保健室に来ないから大丈夫なんだろうけど念の為にね。結城くんも早めにテントに戻るように。華京ちゃんは安静にね」

「「分かりました」」

「じゃぁね~」


 先生は軽く手を振って保健室を出て行った。扉が閉まる瞬間に先生が俺に向かってウィンクをしてきた。変な気を遣われてしまったようだ。

 保健室には俺と華京さんの二人だけになった。何を話せばいいのか分からない。すると華京さんが先に切り出した。


「すまないな。一位を取れなかった」

「何故君が謝るんだよ。あれは事故だったんだから君に一切の非はない。もちろんもう一人の子にもだ。それよりも君の足だ。どうだい?」

「正直、捻挫って割には痛みがあまり無くてね」

「まさか神経が…!」

「それこそここにいる暇などないだろう。落ち着き給えよ。まぁ私が言えたことではないがな」

「どういう意味…」

「痛みなど気にならないくらいに私は存外動揺しているようだ」

「動揺?」

「君に応援して貰ったのに成果が出せなかったことにショックを受けているようだ。我ながら脆い精神だ。ハッハッハ」

「気にすることない。仕方のないことだよ」

「私が良くない」

「…ごめん。失言だった」


 そうだ、今回の約束は彼女にとって大事な物だった。人の大事な物をそう簡単に済ませていい道理はない。言葉にもっと気を付けるべきだった。


「真澄、隣に来い」


 華京さんがポンポンとベッドを叩く。俺は少し躊躇したが彼女の眼光が「断ったら許さない」と訴えていたので素直に彼女の隣に腰かけた。暫くの無言。そして華京さんの体が傾き、俺の太ももの上にゆっくりと降りた。


「……私の我儘だ。許してほしい」


 傷心の彼女の頼みなんて断れる筈もない。俺は無言の肯定で受け止めた。


「悪くない眺めだ」

「ローアングルで見た人の顔って不細工に見えるらしいけど?」

「けど悪くない」

「否定はしないのか……」


 クスクスと柔らかな笑みを浮かべた彼女を見て少しの安堵を得た。


「なぁ真澄、やはり君は読めない男だ。そして嫌な男だ」

「嫌な男、ねぇ」

「私の想いを断っておいて、こうも優しくされてはこっちの胸が痛むばかりだ」


 ズキリと心臓に痛みが走った。罪悪感に苛まれる。俺は誰かを傷つけてばかりだ。傷つけられて、今度は俺が傷つける側に回ってる。しかしどうしろと言うんだ。俺は逃げることしかしてこなかった。誰かを幸せにする方法なんて分からない。そんな俺がまた逃げることを選択すれば今度は誰かを傷つけることにも繋がった。

 もう逃げることはやめにした。逃げる選択肢がなくなった今、俺は何を選択したらいい…いや、その選択肢すら見えてこない。何もない。ただただ積み重なっていく問題を眺めているしかなかった。




 俺はやはり変われないのか...。




「君は今も人の心が分からないのだろう?」

「…人の心なんて分かる筈ないだろう」

「そうだな。全くもってその通りだよ。だから信じるんだろう?人の言葉を」

「………」

「言葉は刃だ。君は誰よりもそれを理解しているだろう」

「あぁ…」

「だがそこしか理解していない」

「一体君は何が言いたいんだ」

「言葉が刃になることが出来るなら、盾になることも出来る筈ではないか?と私は思う」


 華京さんは優しい声色でそう告げた。


「真澄、君は刃と化した言葉しか向けられて来なかったから今のように疑心暗鬼になっている。そして問おう。その刃は誰から向けられた?」


 俺を疎んだ者達から……。


「君に敵意を持つ者達なのだから刃を向けるのは当然といえよう。ならば君に敵意を持たない者達は君に何を向ける?刃もない。君に向ける物なんて何もない。出来るのは君に与えてやることだけだよ。君が持っていない物を」

「俺が持っていない物………」

「敵意を持つ者達から向けられた刃から君の身を守る盾だよ。私達、私が君の盾になろう。君を苦しめる者から君を守ろう。まぁ、そんなことで君の疑心暗鬼がすぐにどうにかなるなんて思ってないさ。なら疑心暗鬼が消えるまで守ればいい。いや、これから先ずっと守ってやる。君が誰かを本当の意味で信用できるようにね。私だけじゃない。弥生くんも柊も霞ヶ丘もいる。これだけいれば無敵の盾だとは思わんかね?」


 そう彼女は微笑んだ。その笑みが眩しくて、少し照れ臭くて思わず目をそらしてしまう。同時にこう思った。


「どうして、そこまで俺を受け入れられる…?」


 何度も思ったことだ。何度も疑問に思い、何度も問いかけた。天莉さんも華京さんも皆、どうしてここまで…。


「私からしてみれば何度言わせれば気が済むんだ、と言いたいところだがね」


 はぁ、と呆れたようにため息を吐く華京さん。


「…確かにね。何度も言われたね」

「だろう?弥生くんからも迫られているというのに全く学習しないな君という男は」

「返す言葉もございません…」

「猛省したまえ」


 お互いにプッと噴き出して笑い合う。

 変だな。彼女と話す時はいつも変に緊張したものだが何故か今は緊張していない。そのことを華京さんに伝えるとまた一つため息を吐いた。


「それを本人に直接言うのか…」

「ご、ごめん」

「まぁそんなことは関係ない。真澄、君は今一つ成長したということだよ」

「せ、成長?」

「君のその緊張は恐らく疑心暗鬼から来ていたものだろう。だがそれが消えたということは疑心暗鬼を緩和できたということではないか?たとえ一時的なものだとしても君にとっては大きな進歩だろう」


 じゃあ、俺は今華京さんを心から信頼出来ているのか。俺は少しずつ変われているのか。だったら嬉しいな。このまま普通に戻れたら……。


()()()()()も考えられるが……今の君にそれは期待しない方が身の為かな」

「別のケース?な、何それ?」

「自分で考えたまえ」

「ちょ、それは酷いよ!教えてくれ華京さん!」

「嫌だね。自分の頭で考え、答えを自力で導き出したまえ。私は手伝わん」

「そ、そんな~……」

「さ、真澄、君はここに長居し過ぎた。君の膝枕は大いに心地良かったがそろそろ戻りたまえ。それとも何だ?私とここで、更にベッドの上でもっと一緒に居たいか?君も随分と不良になったことだ。ん~悪くない提案だが学校は人目の危険が高すぎる。君がどうしてもと言うのなら放課後私の家に招待しよう。そこなら遠慮なく…」

「戻ります!!」

「そうしたまえ」


 もう!君といい天莉さんといいどうしてそう恥ずかしいことをズカズカと口に出来るかな!しかも異性相手に!君達はそういうところをもっとどうにかするべきだよ!俺の更生と同時に君達の貞操観念の更生も必要なんじゃないかな!

 華京さんが退いたのを確認してから俺は服を正して彼女に挨拶をした。


「じゃあ戻るよ。華京さんも安静にね」

「真澄に言われたら仕方ないな」

「先生に言われてもそうしてよ」

「来てくれて嬉しかったよ。ありがとう」


 彼女に手を振りながら俺は保健室を出て行った。彼女を一人にするのは少し心配だったが廊下の向こうから先生が戻ってきているのが見えたのでそんな心配はすぐに消えた。

 そして次の種目のアナウンスがなった。


「おっと、急ごう」

「こらっ結城くん、廊下は走っちゃいけませんよ」

「ありゃりゃ…」


 なんて少し怒られたりもしたが今の俺の心は軽くなっていてそんなことは気にも留めなかった。テントに戻り、柊に華京さんのことを聞かれ、何故俺が彼女の元に行っていたのが分かったのかは知らないが、大事ないことを伝えて俺は体育祭の続きを始めた。







「はぁ…」

「あら華京ちゃん、大きなため息ね。どうかした?」

「少し悩み事でしてね」

「おっ、それは恋煩いかな?」

「そんなところです。アプローチしているんですが中々振り向いてもらえなくて」

「それは大変ねぇ」

「まったくです」

「恋は忍耐よ。頑張って」

「そうします」


 真澄、人を信頼することが出来たのなら、次は人を愛することを始めてみようか。


「まぁ、君にはまだ少し難しいかな?クスクスッ」




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