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可愛い後輩の隣人さん  作者: 堺川天馬
22/30

21話 伝わらない願い

お待たせ致しました!!遅れてしまい申し訳ございません!!

いや、あのサボってたわけではないんですよ。ホント。言い訳をさせて頂きますと、実は一月中には投稿する予定だったんです。ですが間の悪いことにインフルエンザに掛かってしまいまして………しかも二回。どう思います?嘘だと思いますよね?一ヶ月でインフル二回ですよ?こんな確率ありえます?正直死ぬんじゃないかってわりとマジで焦るほど辛かったです………。

この投稿できない期間、この小説から離れて行かれてしまった方々には本当に申し訳なく思います………。

兎も角、今はピンピンしておりまして、会社にも行けるし小説も書ける状態に復活しましたので、待っていて下さった皆様にまた続きをお贈りしたいと思います!!

長くはなりましたが、前書きはこの辺りで終わりに致しましょう。

改めまして、遅れてしまい申し訳ございませんでした。これからも、不定期ではございますが宜しくお願い致します。

それでは、本編をどうぞ!!

 時間。それはこの世に生を受け継いだ者達が味わう逃げられない世界のシステム。

 時間というのはとても不確定だ。その場の感情次第で進むスピードが変わる。楽しいと思える時は時間はあっという間に過ぎ、楽しくないと思う時は時間は長く過ぎていく。その違いはその時が充実しているかしていないかで一般的には分けられる。

 では、長く苦しい俺の中学校生活は充実していなかったといえよう。ならば、今こんなにも時間がすぐに過ぎ去る高校生生活は充実していると言えるのだろうか。

 答えは否である。

 今の俺は充実した時間を過ごしているのではない。ただ意味も無く、無駄に時間を平凡と過ごしているだけなのだ。

 充実していると思った時間なんて一度もない。充実したという思いは、とっくの昔に忘れた…………。




 定期テストを難なく終え、制服も冬服から夏服に完全に切り替わった一学期の後半。

 残す一学期のイベントは期末考査ともう一つ。体育祭であった。

 俺が通う天ノ川学園は少し変わっていて、普通二学期に行う体育祭は一学期に行われるのだ。これがツラいのなんの。二学期にしてくれれば季節も夏から秋の変わりどころで気温も少し涼しくなってくるのに、一学期にされてしまえばほぼ夏に行うことになる。地球温暖化が進んできているこのご時世、熱中症に掛かりやすくなっていたりするから危険性は意外と高い。なのにこの学校では熱中症に掛かった生徒は一人も出たことがない。そこはまぁエリート校故、体調面のサポートも完璧ということだろう。


「体育祭楽しみだね~」


 噴水広場のベンチに座っている俺の隣でジュースを飲む天莉さんも体育祭を楽しみにしているようだ。今の台詞もそうだが、全校練習の時も彼女が一生懸命に練習に取り組んでいる姿を何度か目にしている。やはり高校生活初めての体育祭だから興奮が冷めないのだろう。

 だが俺はその逆だ。正直体育祭は乗り気じゃない。暑いし疲れるだけで価値があるとは思えない。そもそも人間不振の俺に団体行動が向く筈がないのだ。

 中でも一番嫌なのは最後の種目のフォークダンス。あれやる必要あるの?体育祭関係ないじゃん。言っとくけどな、フォークダンスって女子からスゲェ嫌な目で見られるんだからな。顔真っ赤にして目すら合わせてくれないんだぞ。なのに手だけはしっかり握ってくる。そんなに嫌なら添えるだけでもいいと思うんですよボクァ。


「真澄くんは楽しみじゃないの?」

「残念ながらね」

「何で?」

「男子には色々あるのよ」

「分かった。フォークダンスが嫌なんだ」


 鋭い。本当にこの時の女子のこの妙な勘の良さは何なのさ。ちょっと怖くなるわ。


「真澄くん女の子に弱いもんね~」

「そういう君だって、汗かいた後の男子と一緒に踊るの嫌だろ」

「真澄くんなら一緒に踊りたいかも」

「嘘つけ」


 俺は知っている。女子がどれだけ汗をかいた男子が嫌いなのか俺は知ってるぞ。そういう女子は沢山見てきたし陰口なんて何度も聞いた。


「真澄くんは嫌がられたことあるの?」

「あぁあるね。去年なんか一緒に踊ることになった女子に凄い拒絶されたよ。手が触れたら驚かれるし目も合わせてくれないし顔を真っ赤にして俯かれるし。そんなに嫌なら言えば良いのにさ。黙って無理される方がこっちはツラいっての」


 更には終了した途端に全力疾走で逃げられたし。あれは結構凹んだ。


「…………それ多分拒絶じゃない」

「はぁ?」

「真澄くん、乙女心分かってない」


 分かってたら苦労してないんですがそれは………。


「あ~あ、不安だな~」

「本番の事か?あれだけ練習してるんだ。上手くいくさ」

「ち~~が~~う~~!!」

「いでででででで!」


 耳を摘ままれて引っ張られる。理不尽だ。


「真澄くんは隙がありすぎです」

「酷い!俺が何したって言うんだ!」

「自分が人気者だってもっと自覚してよ!」

「何で怒ってんのさ!」


 耳痛いから離してよ。ちぎれちゃうよ。

「まったくもう……」と天莉さんは溜め息をついて手を離し、俺の太股を枕代わりにして寝転んだ。


「もう少しガード固くしてよ………」

「ガード強化する程攻撃を受ける予定無いんでね」

「そう思ってるのは真澄くんだけだよ」

「さっきからどうした?君少し変だよ?何か焦ってる?」


 天莉さんは何処かソワソワして落ち着きがない。声や瞳にも不安の色が見える。まるで誰かと賞品を奪い合っているような。そんな感じだ。


「…………取られたくないの」


 ポツリとそう一言呟いた。


「何を取られたくないんだ?」

「…………真澄くんを」

「俺?俺は物じゃないんだが………それに君の物になった覚えもないぞ」


 しかしまぁ、彼女の言いたい事は分からなくもない。

 仲の良い友達を他の何処の馬の骨か分からない奴に急に取られたら不愉快になる。そういうケースで関係が壊れたグループをいくつも見てきた。勿論俺は入ってないよ。一人故にそうなることが無かったからね。言ってて悲しくなるなこれ…………。


「そうじゃないの」


 どうやら俺の考えは違うらしい。


「真澄くんって一年の中で人気なんだよ?」

「人気になるような事をした覚えもない」

「嘘だ。いろんな子に優しくしてるらしいじゃん。提出物を持ってあげたり、転けそうなところを支えてあげたりと。色々聞くよ?」


 確かにそういうこともあったと言えばあった。けどおかしい。彼女が今言ったことは全て女子関連の出来事だ。俺、男子にも手を貸してる筈なんだけど。これじゃあ俺が女子だけに優しくしてるみたいに聞こえちゃうじゃんか。


「そんなの優しい内に入らないだろ。ただ困ってたから助けただけだ。そこに他意はない。俺がそうしたかったからした。それだけ」

「それが優しいって言ってるの」


 オーケー。もし仮に、彼女の言う通り俺の行いが『優しい』としよう。だったら今のように責められるのはおかしくないか?褒められるべきだろう。


「そうじゃないの。別に責めてるわけじゃないの。優しくするのは良いんだよ。それが真澄くんの魅力だから」

「そりゃあどうも。じゃあ何が不満なのさ?」

「それは……………」


 また黙りか。時々天莉さんって黙るよな。乙女ってのは肝心な所で濁してしまうから困る。どうしたものか。

 だがまぁ、恐らく俺が彼女を不安にさせているのだろう。それは何となく分かる。ならば、その不安を取り除くのも俺の役目なのかな。


「なぁ天莉さん」


 暗い顔の彼女の頭に手を置く。


「天莉さんはさ、さっき俺を取られるのが嫌って言ったよな?」

「言った」

「不安なのはそこかい?」

「…………うん」

「じゃあ問題ない。俺は君の前から消えるつもりなんて無いからね」

「……………」

「だいたい、君以外の人と話すのだって苦労してるんだよ?どうも警戒してしまうんだ。何か裏があるんじゃないかって疑ってしまう。俺を騙すつもりなんじゃないかって。こんな状態だと相手にも失礼だ。俺は極力そんなことはしたくない。辛うじて君以外に気軽に話せる女子なんて瑞希さんか華京さんくらいだよ」

「……………(華京先輩は入ってるんだね………)」

「それでもこの三人の中で一番話しやすいのは君だ。信頼も一番置いているつもりだ。つまり俺が君の前から消える確率は極めて低いわけさ。だから取られるとかそんなよく分からん不安は捨てろ。君はいつも通り君らしく俺の横でお転婆に振る舞って笑っていればいいさ。そっちの方が俺も気が楽だしな」


 俺が物扱いされるのは解せんが、彼女の為というのなら悪くない。

 しかし、これは果たしてそこら辺の奴等がするような会話かな?どうも少しずれてる気がする。もっとこう、親密な関係を持った者同士がするようなそれに近い気もする。俺の思い過ごしだろうけど。


「…………真澄くんって酷い人だよね」

「まあな」

「否定しないんだ?」

「逆に今更って感じだな。俺なんて人に好かれるような人間じゃないからな。嫌われている方が俺にとっては丁度いい」

「またそんな事を言う…………でも、その願いは叶わないかな」

「何でさ?」

「何でだと思う?」


 肝心なところで笑って濁された。

 問いただそうとしたが予鈴がなってしまい、それは出来なくなった。


「もう時間だね。戻ろっか」

「そうだな」


 天莉さんは立ち上がって大きく背伸びをする。その際に浮き彫りになる胸部装甲に目が行ったのは許してほしい。

 俺も立ち上がって空き缶をゴミ箱に投げ捨ててから彼女と校舎の中へと戻る。

 階段を登り、二年のフロアに着いた。


「じゃっ、俺はここで」

「うん。楽しかったよ」

「俺も悪くない時間だった」

「そこは素直に楽しかったって言って欲しいなぁ~」


 そう言うな。今の俺ではこれくらいが素直の限界なのだ。

 軽く手を上げてから教室に向かおうとすると裾を捕まれた。

 振り返ると天莉さんが何か言いたそうに俺を見ていた。


「どうかしたかい?」

「あ、あの………体育祭の事なんだけど………」

「うん」

「わ、私と、一緒に━━━」

「おっ、いたいた」

「ん?」


 天莉さんの背後から一人の女子生徒が手を振ってこちらに向かってきていた。

 その女子生徒とは━━━


「やっ、真澄」

「どうも、華京さん」


 華京陽香さんだった。


「どうかしたのかな?」

「いや、君に少し用があってね。放課後なんだが、体育祭の準備の手伝いを頼みたいんだが頼めるかな?」


 彼女は確か今年の体育祭の実行委員を務めていたな。故に当日までの放課後は毎日体育祭の準備で大変だそうだ。メールで何度も愚痴を聞かされている。

 そんな彼女に対し、俺は大した用事もなく、実質暇人状態。ここで断ってしまえば人格を疑うな。

 だったら答えは決まってるな。勿論イエスだ。


「俺で良ければ手伝うよ」

「本当か?良かった、助かるよ。最近本当に大変でさ、もう死ぬかと思っていた」

「そんな大袈裟な」

「まっ、兎に角、真澄が引き受けてくれるのは私にとって実に好都合だ。よろしく頼むよ」

「じゃっ、場所とかはメールでよろしく」

「あぁ。それじゃあな。いそがないと授業に遅れるのでな。では!」


 華京さんは陸上部顔負けのパーフェクトフォームで廊下を駆け抜けて自身の教室へと帰っていった。

 華京さんを見送ったところで、視線を天莉さんに戻すが━━━


「ご、ごめん!やっぱり何でもない!真澄くんも授業遅れちゃ駄目だよ!じゃあね!!」


 と、慌てたように彼女も階段を登っていった。姿が見えなくなる瞬間、彼女の横顔が少し悲しそうに見えたのは俺の気のせいだと思いたい。



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