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可愛い後輩の隣人さん  作者: 堺川天馬
12/30

12話 看病イベント発生

 頭が痛い。目覚め一番がそれだった。

 天莉さんに慰めて貰った日の翌日。俺は普段よりも早く目が覚めた。原因はこの頭痛と吐き気。

「……うおっと」

 体を起こすが視界が歪みチカチカと何度も暗転して、再びベッドに倒れた。

 ほう。目眩に立ち眩みか。ますますヤバい状態だな。こんなこと初めてだ。

 壁に手をつきながらなんとかベッドから降りる。

 あ~こりゃあ駄目だ。足腰に力が入らない。てか体全体に力が入らん。

「……風邪?」

 この症状は俗にいう風邪というやつでは無かろうか。そうに違いない。

 ここ数年間かかったこと無かったから、風邪という感覚を忘れていた。まぁ時期も時期だしインフルエンザというわけでもないだろう。というわけでだ、ひとまず体温を測ろう。体温計は確か救急箱の中にあった筈だ。

「……いだっ」

 右足の小指を壁にぶつけてしまった。これがまぁ痛いのなんの。でも今の俺は風邪の影響で感覚も狂っているのかは知らんが、ぶっちゃけあまり痛くない。いつもなら30秒くらい痛みに悶えるのだが、風邪グッジョブ。……駄目だ。テンションまでおかしくなっている。

「……吐きそう」

 まったく。なんだって俺は風邪なんか引いてしまったんだか。しかもタイミングが悪いことに、一人暮らしを始めてから引くとわな。

「……取り敢えず何か飲もう。喉も痛い」

 あと薬もな。頭痛薬くらいなら探せばあるだろう。

 呑気に考えながら冷蔵庫を開けた時、

「……畜生…」

 足が滑り、豪快に冷蔵庫の中に頭を突っ込んでしまった。幸いにも、中の物にダメージはなかったようだ。

 しっかしまぁ……気持ちいいな。このひんやりとした冷気が顔全体を覆う感じがなんともたまらん。

「……もう、このまま居ようかな」

 体も怠くてやる気も湧かないし、顔冷たくて気持ちいいし。





「何してるの!?」




 ◆◆◆


『ピピピッ、ピピピッ、ピピ…』

 目覚めの音を鳴らすスマホの目覚ましアプリを止めて、隣の部屋で寝ている真澄くんを起こしに行くために制服に着替える。

 いつも楽しみで仕方がないモーニングコール。今日はどんな起こし方をしてあげようか。いつもみたくベッドダイブにしようか。それともベッドに潜り込んで頬でも突っついてあげようか。う~ん、迷うな~。

「……あっ、天莉閃き!」

 おでこにチューで行こうそうしよう!最近起こし方もマンネリ化してきたからな~。すこ~しだけ刺激が強くても良いよネ!やった後、絶対に真澄くんからお説教されると思うけどまぁ大丈夫でしょう!

 そんなわけで私は彼におでこチュー目覚ましをしに彼の部屋に訪れたのだが、ドアを開けた瞬間目を疑った。

「何してるの!?」

 あの彼が、いつもクールで格好良い彼が……冷蔵庫の中に頭を突っ込んでいるではありませんか!流石の私も大混乱です!

 っとテンパっている場合ではない。兎に角今の彼をどうにかしなくては。

 急いで靴を脱いで彼の元へ駆け付け、頭を冷蔵庫から引き抜く。

「真澄くん!何やってるの!?何で冷蔵庫の中に頭を突っ込んでたの!?」

「んおっ…?……あぁ、てんりさんかぁ。おはよう~……」

「うん!おはよう!…って違う!」

 挨拶をしてくる彼の様子は少しばかりおかしい気がする。なんというか…気が抜けてるというか…。それに顔も赤い。いつもキリッとして凛々しかった彼の目は据わっておらず、汗の量も多くて寝巻きのYシャツがびしゃびしゃに濡れていた。

 もしかして━━、

「真澄くん、風邪引いてる?」

「あたりぃ~あはははっ……」

 うわっ、憧れの彼のキャラ崩壊が酷い。いつもの、キリッ!ビシッ!キラッ!っと感は一体何処に行ったのやら。まぁ今の彼も子供っぽくて可愛いんですけど。……お持ち帰りしちゃ駄目かな?

「取り敢えずベッドに行こうか?」

「うぃ~~っす…」

 駄目だこりゃ。完全に参っちゃってる。うぃ~~っす、なんて酔っ払った返答は彼のキャラじゃないよ~。

 真澄くんをベッドに座らせて、本棚の上にあった救急箱から体温計を取り出す。

「体温測れる?」

「まっかせろい!」

と言いながら体温計を受け取ろうとするが、伸びてきた手は体温計ではなく何もない空気を掴んだ。

「…あれっ?」

「駄目か~。目の焦点があってないね。真澄くん、これ何本に見える?」

 彼の目の前に右手を出して指を2本立てる。

「あっはっは~。てんりさんったら、ばかにしすぎだよ~」

「良いから答えて」

「よんほん!」

「2本です」

 これは私が看てあげないといけませんね。完全にお馬鹿キャラになっちゃってるもん。

「真澄くん、服を脱いで体温計を脇に挟んで」

「あれれ~?てんりさんがっこうは~?」

「大雨警報が出て休みになったよ」

「まじで~?」

 嘘です。外は清々しいほどの快晴です。

 だが今の彼ならバレることはないだろう。勿論私はサボりになってしまうわけだが、普段授業は真面目に受けているし小テストも毎回満点を取っているから、1日くらい休んだところで先生も怒らないでしょう。

 それに━━、

「ふく、ぬげねぇ……まえ、みえねぇ……」

 こんな状態の彼を放っておくなんて出来ない。

「真澄くん落ち着いて。今脱がせてあげるから」

 襟が首に引っ掛かってエリマキトカゲ状態の彼から服を剥ぎ取る。すると彼の上半身が全て露になった。

「……うわぁ」

 思わず声が出てしまった。

 ちょっと待って。彼って帰宅部だよね?運動部じゃないよね?その筈なのに、何であんなに筋肉あるの!?座っていても分かるほどのシックスパックに引き締まった大きな胸筋。腕も太くて逞しい!見てはいけないと分かっているのにどうしても目が吸い寄せられてしまう…。

「……何やってるんだろ、私…」

 彼を看病する為にここにいるのに、何故彼の上半身に見とれて興奮してるんだろ…私って筋肉フェチなんて趣味あったっけ?違うよね違うと信じたい。

「くちっ!」

 ん、誰ですか今くしゃみをした人は。真澄くん?真澄くんですか?何ですかそのくしゃみは。見かけによらず可愛らしいくしゃみじゃないですか。少しときめいちゃいましたよ。これがギャップ萌えというやつですか。中々やりますね。

「……さむい…」

「ごめんね。すぐに着替え持ってくるから。あと汗を拭く為のタオルも。あっ、体温どうだった?」

 彼から体温計を受け取る。

 38,6度。うわぉ、予想以上の高熱だ。早く寝かせてあげよう。

「じゃあ体拭こっか。汗かいたままだと気持ち悪いでしょ?」

「……ねとねと、きらいだ」

「だよね。じゃあタオルと水を用意するから、その間毛布で体を覆って暖めておいてね」

 洗面所へ向かおうとした時、スカートを引っ張られた。引っ張ったのは勿論真澄くんだ。

「どうしたの?」

 屈んで目線を合わせて問い掛けると、真澄くんは毛布の中からひょっこりと顔を出して言った。

「……はやく、もどってきて」



 ……急いで準備してきます。

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