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可愛い後輩の隣人さん  作者: 堺川天馬
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1話 彼女との出会い

 冬が明け、少しずつ春の気配がしてきた3月の下旬。

 両親が会社の都合で2年間海外出張でいなくなるため、実家から離れたマンションに一人暮らしをすることになった。因みに距離は県を3つほど跨ぐくらいだと思ってくれて良い。

 俺の通っている私立校、天ノ川学園は日本で一番有名な私立校だ。学力は偏差値65以上が当たり前、設備は完璧、外見も恐ろしく綺麗の誰もが羨む理想の高校だった。勿論俺も羨んだ生徒の一人だ。

 死ぬ程の受験勉強を乗り越え、見事ボーダー20点オーバーと中々余裕のある入学を果たしたのは良いものの、俺の実家からあまりにも遠すぎた。電車を使っても通学には2時間以上掛かる。そのせいもあってか、俺が一人暮らしをすると言ったら両親は快く承諾してくれた。

 俺の住む街は天ノ川都市という。この街のシンボルが天ノ川学園ということでこの名前になったそうだ。なんて安直。

 まぁ街自体は綺麗だし、店も至るところにあるので不便はない。


 プシューと音がなり、電車の扉が開き、俺は降りて駅を出る。

 両親から車で送ってやると言われたのだが、スピードも楽さも電車の方が良いため俺は丁重に断った。それに二人も出張の準備で忙しいだろうし、邪魔は出来るだけしたくなかった。

 因みに荷物は全て昨日届いているので今すぐマンションに向かわなくてもオッケー。

 ということで俺は昼飯を買いにコンビニへと歩を進める。

 その途中、ある現場に遭遇してしまった。

「ハッ!ハッ!ハッ!」

「誰か~、助けてぇ~」

 一人の美少女が欲情した大型犬に襲われていた。

 少女の歳は俺と同じくらい、もしくは一つ下。春らしく桜色のセーターを着ており、紺色のホットパンツを履いていた。そして上着として白いロングコートで身を包んでいる。長い髪は黒く、だが先端に行くにつれて明るい茶色のグラデーションがかかっていた。

 彼女は傍で棒立ちする俺に気づき、手を伸ばし、震えた声で俺を呼ぶ。

「そこのお兄さ~ん、助けて下さ~い」

 凛とした大きな瞳には涙が溜まっている。

 なんだろう。見た目は完璧美少女なのにこの残念感は……。

 俺は彼女の容姿と中身の違いに少し肩を落として犬を引き剥がして追っ払った。

 少女は「助かりました~」と立ち上がり、コートについている砂を丁寧に落とした。そして少女は俺に向き直り、先程とはうって変わったにこやかな顔で自己紹介を始めた。

「改めて助けて頂きありがとうございます。私は今日引っ越してきたばかりの弥生天莉(やよいてんり)と言います。宜しくお願いします」

結城真澄(ゆうきますみ)だ。俺も昨日引っ越してきた。けど、この街には何度も訪れていたから何かあれば聞いてくれ」

「真澄?可愛らしい名前ですね」

「女の子みたいだとは何度も言われたな」

 それはそうとピョンピョンと跳ねるの止めろ。君のその豊満な胸がたゆんたゆんって揺れてるから目が吸い寄せられちゃうんだよ。

「真澄さんはどの辺りにお住みなんですか?」

「さん付けは止めてくれ…ますます女の子みたいだ……あと敬語も」

「あっすいません!では真澄くんでいくね。真澄くんはどの辺りに住んでるの?」

「この近くに大きなマンションあるだろ?そこに住んでるんだ」

 すると弥生さんがまた跳ねる。だから止めろっての。

「凄い偶然!私もそのマンションに住むんだ!やったやった!さっそく知り合いが出来た!ねぇ、一緒に行こうよ!」

「別に良いよ。コンビニに寄ってからだけど」

「また偶然!私もお昼ご飯を買いに行く途中だったの!」

「その途中に犬に襲われたと」

「それは言わないで……」

 恥ずかしかったのか、赤くなって俯く弥生さん。しかし、人間なら兎も角、動物を魅了してしまうとは、この子の体からは何かフェロモンが出ているのではないかと思ってしまう。

「も、もう!そんな事より早くコンビニに行こっ!」

「あっ、おい!」

 弥生さんは俺の手をとって強引に引っ張って歩き出す。会ったばかりの男の手を握るなど警戒心が無さすぎるのではないのだろうか。そして無防備過ぎる。

 俺の前を歩く弥生さんは今まで見た女の子の中でもトップを貫く程の断トツの美しさを持っている。そして男が好みそうな大人らしい体つき。胸はとても大きくウエストもキュッと括れができていてホットパンツ越しからでも分かる形の良いお尻にスラッと伸びる白く手触りの良さそうなナマ足。

 女慣れしていない俺にとっては物凄く刺激が強すぎる。

「どうしたの?」

 俺の歩くスピードが遅くなっているのを感じた彼女は首を傾げて問いかけてくる。

 俺は少しバツが悪そうに答える。

「その…こんな事言うのは本当に申し訳ないんだけど……」

「うん。気にしないから言ってみて」

「あ、あの…き、君の姿が刺激的過ぎて…ちょっと目のやり場に困るなぁ~的な……」

 今更気づいた。俺、ただの変態じゃん。初対面の女の子に何言ってんだ。

 弥生さんはクスクスと笑って、

「真澄くんって意外にむっつり?」

 と言ってきた。

「勘弁してくれ……」

「あははっ。これでおあいこだね」

「おあいこ?」

「うん。さっき、私も恥ずかしいとこ見られたからね。そのお返し♪」

 果たしてこれはおあいこというのだろうか。少なくとも被害的な量では彼女の方が多い気がするが…。それに俺の事を気持ちが悪く思わないのだろうか。

「別に気持ち悪くないよ。健全な男の子って証拠だし、それにそう見られる姿をしている私にも否があるしね」

 違う。どんな格好をしようがその人の自由だ。俺が彼女の格好にとやかく言う権利はない。

「そんな事よりもさ、真澄くんは何号室に住んでるの?」

 急に話題を変えられて少し焦ったが、すぐに落ち着き、自分の部屋の番号を言った。

「俺はたしか……201号室だ」

「ホント!?」

「な、なに?」

 弥生さんがズイッと顔を近づけてくる。その勢いで揺れた艶のある髪の毛からとても良い香りが漂い、俺の鼻孔をくすぐる。

「やった!私、その隣の202号室なんだ。お隣さんだね」

 彼女はブイサインをして笑う。

 だが俺はあまり乗り気はしなかった。

 こんな美少女が隣の部屋に住んでいると思うとなんだか落ち着かない。別にやましい気持ちは一切無いのだが、それでもやはり気は進まなかった。

 今から不動産屋に部屋を変えて貰うように頼んでみようか。

 そう思った矢先、弥生さんに今にも泣きそうな顔で、

「もしかして、嫌だった……?」

と言われた。

 予想外の反応だったので俺はすぐさま訂正をした。

「そ、そんな事無いよ。これから宜しく」

「うんっ!」

 そんな顔で言われたら断れないじゃないですか……。女の子ってズルい……。

 なんて思いつつ、若干喜んでいる自分がいた。やはり俺も男ということか。この変態さんめ!

 それからはあっという間に時が過ぎた。

 コンビニで適当に飯を買ってマンションに向かい昼食を済ませた。その後は、弥生さんの部屋が整理できてなかったようなので手伝い、夕飯をご馳走になってからその日は終了した。


 こうして、俺の人生の分岐点となるであろう高校生活2年目が幕を開けたのだった。

 正直、どうなるかは全く予想できないが、悪い方向へは向かわないことを祈ろう。

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