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(水)魔法使いなんですけど  作者: ふーさん
5章 願い歩む者たち
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迫りよる危機

パソコン壊れて4か月、やっと新しいパソコン買えました。


遅れてしまい申し訳ありません

 リフィンとアストレアたちがアルモニカの上空を飛び宿屋の看板娘カレンを助けるべく向かっていた時、神域にある記録室で光の女神ヒカルが「むむむ…」となにやら唸り声をあげていた。


「おかしいのじゃ…何度見返してもおかしいのじゃ…」

“だから何度も言ったであろう…リフィン・グラシエルがどこから大賢者の本を持ち出したのか我ですらわからなかったのだからな”


 ミスティエルデのほぼ全域を記録している映像を何度見返してもリフィンがどこから大賢者の本を仕入れたのか…この世界を見守る光の女神ヒカル達でさえも分からなかったのである。


「バッグの購入から大賢者の本を取り出すまで期間は短いのじゃが、いつどこで本が中に混じったのかのぉ…」

「我が思うに動物たちを使役してからが怪しいと思うのだが…まさかカラグが関与しているのではないか?」

「ふむ、しかしカラグはあの忌々しい事件以降どこに隠れているのか我々にも分からないのじゃぞ? 表立って彼女と接触していれば我らが感知出来る筈じゃ」

(ゆい)の神であれば結界を張ることくらい造作もないと思ったんだが…」

「なるほどの、であればどこか特定の場所の映像に(ほころ)びが発生するはずじゃな…大賢者の本を使用した日をとりあえず重点的に検索するとするか」


 光の女神ヒカルと風の神ソヨグが会話しながら大賢者の本をどこで入手したのか検索していく、結の神カラグというのが関与しているのであれば映像のどこかに綻びがある筈だ。

 そうして検索していくヒカルだが「なんで本の入手場所を聞かんかったのじゃ?」と愚痴をソヨグに呟く、ソヨグは「久しぶりの来客で大賢者(変態)の本にはあまり興味がなかっただけだ…察しろ」と返した。


 リフィンが神域にやってきたとき、シズルに用があるとのことでソヨグはすぐさま案内したのと同時にシズルにまとわりつくモエルを引き剥がすために離れてしまったので、あまり一緒にいる時間がなかったのもあるので仕方のないことといえばそれまでであろう。


「さてと、そろそろシズルと交代の時間じゃな…」

「もうそんな時間…む、少し早いのではないか?」

「今シズルには無理させる訳にはいかんからの、かといってゲート封鎖には尽力してもらわねばならんが…少しでも負担を軽減させてやるのが最善だと思うのじゃ」

「なるほどな」


 転移ゲートを封鎖するために働いている水の女神シズルの代わりに光の女神ヒカルが交代に入る時間だった。

 ミスティエルデの世界で生きる生物たちの水への信仰心が低下し弱体化しているシズルを、あまり無理させないようにヒカルは心掛けていたのである。


「ちょっと後でシズルを寄越しておく、何かあったら回線で呼ぶんじゃぞ」

「あぁ…行ってくるがいい、ママ」

「おっ、お前もそれを言うんかっ!?」

「何を今さら、モエルもユラグもそう言っているのだが知らなかったのか?」

「おのれ…次その言葉を口にしてみろ、二度と飯食わしてやらんのじゃ!」

「ほぅ…しかしそういうところが」

「あ“ぁ“?」

「い、いや…なんでもない」


 手のひらをグッと握り怒りをあらわにするヒカルにソヨグはこれ以上は刺激しないようにした。 実体を持たない神であるソヨグは不老とはいえ不死ではない、怒り狂った神を鎮めるには相応の力が必要となるので先ほど放った失言を少しだけ後悔した。


「…とりあえず行ってくるのじゃ」

「あぁ…」


 そうしてヒカルは記録室から出ていきシズルと交代するために転移ゲートまで向かった。


「…」


 無言のままヒカルを見送った後、風の神ソヨグはそのままリフィンが映されているモニターを眺める。  モニターにはリフィン達が雑貨屋に入っていく姿が記録されているのだが、一瞬だけ映像にわずかなノイズが発生していたのをソヨグは見落とさなかったのであった。


「む…? 映像の処理が乱れたか…いや、もう一度確認してみるか…」


 モニターにノイズが走るところまで巻き戻し再生する。 雑貨屋に入っていった時にノイズが発生しているのは確かで、単なる装置の不調だったのではと思えてしまうソヨグだったが、もしカラグが関与しているのであればお店から出た時にも同じようなノイズが発生しているのではと考え、リフィンが店から出るところまで映像を早めていくと…


「あった、まさか本当にこんなところにカラグが? とりあえずこの雑貨屋を重点的に調べていけばほぼ確実と言ったところか…しかしあの事件からもう数百年経つがなんでまたこんな人が多いところに留まっているのか?」


 結の神カラグはヒカルやソヨグなど他の神と同等の存在であり元々は神域に住んでいた。

 しかしミスティエルデ全体を見守る神域では以前大きな事件が発生し、何柱かの神が消滅するなどというかなりの被害を受けてしまったのである。

 それからというのもあって神域はミスティエルデの監視と管理、運営するのが難しくなってしまい、また地球と繋がっているゲートの封鎖にもリソースを割かなければならない為、仕事内容は暇とはいえソヨグ達の日程はかなり埋め尽くされているのである。


「数百年も引きこもりおって…見つけたら神域に呼び戻してたっぷりと仕事をふっかけてくれる」


 何百年もほぼ働き続けている風の神ソヨグが恨めしいような声でモニターを操作し、人が通過するとノイズが発生する怪しげな雑貨屋を重点的に検索を続けていくと、神域でのみ繋がる回線から慌ただしい声が聞こえだした。


「ちょ、ちょっと皆聞いて! あ…あいつがアルモニカに居るなんて聞いてないんだけど!?」

“コポォ…”


 回線を繋げてきたのは火の神モエルと土の神ユラグだった。 ユラグは相変わらずだがモエルがあそこまで震えた声で回線を繋げてくるとは珍しく、何があったのかは分からなかったがモエルもユラグもミスティエルデ監視室の仕事についているのである程度は予想でき、非常に危険な状態であるとソヨグは認識した。


“どうした!?”

「なんじゃ騒々しいのぉ」

「…何があったの?」


 ソヨグと同時にヒカルとシズルも応答すると先ほどと同様に声を震わせながらモエルが言葉を発した。


「あ、あのクソ野郎がアルモニカにやってきてんの! リフちゃんとばったり遭遇なんてしたらっ…」


 それは、かなり危険な状態だった。

 名前を聞かなくてもクソ野郎という言葉でどこの誰なのかはっきり認識出来るくらいの人物だったからである。


「なんじゃと!?」

“別大陸にいる筈の奴がなぜアルモニカにいるのか詳細を教えろ!”

「…」

“デュフ、映像を解析中でござるが…おそらく彼女らがこの神域に転移した時の空間の揺らぎを感じたからではないか、と思うでござる”

「それにだけど、最近奴が何やら準備を開始し始めたのもリフちゃんがこっちに来てからだったと思う」

「ふむ、まさかあちらの世界でも空間の揺らぎを感じることが出来るとはの…盲点じゃった」

“狙いはやはり、リフィンとアストレアなのか?”

“おそらくそうでござろう、明確な目的までは分からないでござるがある程度は見当がつくでござる”

「…抹殺、あるいは」

“やめろモエル、それ以上は口にしなくても想像できる”

「…」

“…”

「…」


 通話越しなのにほとんどお通夜状態に似た空気を漂わせる神々であったが、まだほとんど言葉を発していなかったシズルがその静寂を打ち破るのであった。


「…大丈夫、万全とはいかないけど既に手は打ってあるの」

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